その時は、穴が空いていることに気がつかなかったのです『そのバケツでは水がくめない』


 アパレルメーカー「ビータイド」に勤める佐和理世。念願のファッション関係の仕事に転職できた上、販売員を経て本社勤務のMDに抜擢された。さらに自らが提案した企画が採用、新ブランド「スウ・サ・フォン」の立ち上げメンバーに選ばれた。そんな時、決定していたデザイナーが辞退、新たなデザイナーを探している時、偶然に入ったカフェで運命の出会いをする。

 そこではハンドメイド作家の作品が展示、販売されており、ある作品が自分の中にある新ブランドのコンセプトそのもののだったのだ。衝撃を受けた理世は作家であるkotoriこと、小鳥遊美名(たかなしみな)をメインデザイナーにスカウト。色白で華奢、独特の雰囲気をまとう美しくはかない雰囲気の美名の魅力とその才能にひかれ、どんどん親密になる2人。

 しかし、仕事も軌道に乗り始めたころから、理世は美名の言動に違和感を覚えるようになる。それは本当に些細なことで、自分の勘違いかも知れない、自分が大げさに考えすぎているのかもしれないと、その違和感から目をそらそうとする理世だったが…。

 本性を現した美名の容赦ない攻撃、それに振り回される理世。美名の目的は一体何なのか? これまで理世が、多くの時間をともに過ごし、一緒に作品を作り上げてきた、美貌のデザイナーは一体誰だったのか。頑張る女性のお仕事物語から一転してのイヤミスに、心がザワザワして仕方がない。


『そのバケツでは水がくめない』
【著者】飛鳥井千砂
【定価】本体1700円(税別)
【発行】祥伝社