【江戸瓦版的落語案内】ぞろぞろ(ぞろぞろ)

Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE【ネタあらすじ編】

 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 浅草寺の田んぼの中にある太郎稲荷。昔は繁盛していたが、今は参詣人もまばらで、すっかりさびれてしまった。その門前にある一軒の茶店。老夫婦が営むその茶店も客がなく、荒物や菓子などを売って、細々と店を続けている状況だ。しかしこの老夫婦、とても信心深くお稲荷さんに行ってはきれいに掃き清め、日々の感謝に手を合わせ、茶店の繁盛を懸命に祈っていた。

 そんなある日、店主が稲荷詣でを終え店に帰ると、間もなくしてにわかの夕立。周囲には軒も大木もないため、茶店は雨宿りの通行人でいっぱいに。なかなかやまない雨に、茶ばかりか売れ残りの菓子まで売れた。しばらくし、やっと小雨になったのを見計らい出ていこうとする客が、道がぬかるんでいるのを見て、草鞋を一足買っていった。その後も帰る客、帰る客、全員が草鞋を買い、とうとう売り切れに。最後の客に「売り切れてしまいました。申し訳ございません」というと「何言ってんだ。そこに一足ぶら下がってるじゃなかいか」と怪訝そうな顔。

 見ると、なるほど、先ほどまでなかった草鞋が天井から紐で吊るされている。不思議に思い草鞋を取ると、あとから草鞋がぞろぞろっと現れた。これには店主もびっくり仰天。よく見ると、1足取ると、もう1足と草鞋があとからあとからぞろぞろと出てくるではないか。「これはお稲荷様のご利益に違いない」。ますます、信心深くお稲荷様にお礼を言う店主。そんな無限草履はたちまち江戸中の噂に。一目見ようと客が茶店に押し寄せ、草鞋は飛ぶように売れていく。それを聞いた浅草田町のこれまたさびれた床屋の主人。自分も太郎稲荷のご利益にあやかろうと、早速、稲荷に参詣に行くと、掃除もそっちのけでとにかく自分の店も茶店のように人であふれかえるほどの大繁盛をと願をかけた。必死で祈り、ドキドキしながら店に戻ると、店の前が人だかりになっている。「早々にご利益があった!」と喜んで店に戻ると、客たちが「どこに行ってやがった! さっさとひげをあたっておくれ」と待ちかねた様子。「まま、ご順番にやらせてもらいますから、ここに並んで…。そうそう、ちゃんと1列にね。

 では、先頭のお客さん、こちらにどうぞ」そう言って客の顔にカミソリを当てて、スーっとひげを剃ると、剃ったあとからひげがぞろぞろ。