ヤフー ジャパン元幹部の起業論! 時代を先駆けるビジネスに必須の“タイムマシン経営”とは?

「起業特論Aトップリーダーマネジメント」第4回講師:喜多埜裕明氏『ビジネスを生み出し、成長させる』(2018年4月27日実施)
 文部科学省が推進する「グローバルアントレプレナー育成促進事業」に選定されている「WASEDA-EDGE人材育成プログラム」の一環として、早稲田大学では注目のトップリーダーを講師に招く特別講義「起業特論Aトップリーダーマネジメント」を開講(6月1日まで全8回)。第4回目の講師はヤフー株式会社COOを務めた後、多数の企業の顧問・アドバイザーを務めている喜多埜裕明氏だ。

流れに逆らわず、流れに乗る

「私がインターネットと初めて出会ったのは、NYで生活していた時です。当時、日本ではインターネットに触れたことがある人はまだ、あまりいませんでした。そんな時代にインターネットに触れる機会を得たことは大変貴重な体験であり、この体験から大変重要な教訓を得ました。それは、流れに逆らわず流れに乗る、ということです。他の人に先駆けて次の時代のものの流れを知り、その流れにいち早く乗る。これが大事なことです。今述べたように、私は日本の人々より早くインターネットに触れることができました。そして、その時にインターネットは人々の生活を大きく変えると確信しました。なので、私は孫正義社長らとともに、ヤフージャパンを作ったのです。

 ヤフーは、Jerry Yangがスタンフォード在学中に作った会社です。インターネットを利用するとき、昔はURLを直接打ち込まないとHPに行けませんでした。彼はそれを、検索エンジンという形に落とし込んだのです。これに目を付けたのが孫正義氏でした。ヤフーのサービスを日本に持ってきてヤフージャパンを設立し、カテゴリ検索・キーワード検索の2サービスを始めました」

優位性を作り、継続する

「なぜヤフージャパンは成功することができたのでしょうか。それは、優位性を作り、継続することができたからです。他より何か優位なこと、これが成功するための条件だと思います。優位性を作り、継続するために重要な要素を軽く紹介したいと思います。重要な要素とは、市場・タイミング(タイムマシン経営)・スピード・お客様ファースト・親会社・パートナー・IPOです。

 まず、どのようなビジネスをするのであれ、市場について考えなければなりません。市場がなければビジネスは成り立ちません。どのような市場があるかを認識し、その市場の中でどのようにして売り上げをあげるかを考えておかねばなりません。

 次にタイミングについてですが、これはヤフージャパンが行った“タイムマシン経営”のことです。タイムマシン経営とは、海外で成功した事例を輸入するやり方です。知ってのとおり“流行り”海外から国内に物事が伝わるには、ある程度時差があります。これを利用することが大きなポイントです。さらに、その成功事例を日本市場に合わせてカスタマイズをすることで、さらに盤石になります。スピードについては、とにかく短期決戦を心がけることです。他の人が追いつけないくらい次々にサービスを作り出し続けることで、優位性を作るとともに優位性を保ち続けることができるのです。

 どのようなサービスを作り出そうかという段階で重要になるのが、お客様ファーストで考えることです。ヤフージャパンのビジネスモデルは、ものすごく簡単に言うと広告主の企業から広告料を得る、というものです。なので、なにで食べているのかと問われると、直接的には広告主ということになるのですが、その収入を得るためには、とにかくユーザーが使いやすいサービスを提供することが大事になります。ユーザーの望んでいるサービスを常時提供できる体制を整えることが重要です。どの業界にも言えることですが、お客様(ユーザー)が多くいるからこそ、ビジネスは育つのです。そのため、ヤフージャパンでは、年に2回のユーザーアンケートを実施し、絶えずユーザーの需要を把握できる体制を整えていました。

 どのようなサービスをするかを決めたら、実際にサービスを提供しなければなりません。そのために、親会社やパートナーが重要になってきます。次々にサービスを提供するためには人もモノも多数必要になります。まず、親会社の話ですが、ソフトバンクからは人材・人脈・物品など、米国のヤフーからは事業ノウハウ・システムでの支援を受けました。集中して業界での優位性を確保しようとした時期に、親会社からのリソースを利用できたことは、ヤフージャパン成功の大きな要因だと思います。また、ヤフージャパンは電通、MS、毎日新聞、ロイター、ウェザーニュース、東証、JTB、リクルートなど多数の企業をパートナーに得ていました。なぜこれほど多くのパートナーを得ていたのかというと、スピード感を持ってサービスを提供するためです。当時、ヤフージャパンは小さい会社でした。親会社の援護があるとはいえ、多数のサービスを単独で提供することは難しい。そこで上記のパートナーを集い、ニュースや天気、旅行など、さまざまなサービスを提供する体制を迅速に整えたのです。ここで考えなければならないのが、どこまで自前でサービスを提供するか、です。肝心なのは、その見極めです。

 最後の要素はIPOです。IPOとは、新規公開株のことです。ヤフージャパンは1996年の設立から1年半ほどで店頭公開をしました。2000年には1株1億円になり、2003年には東証1部に上場しました。IPOのメリットには、資金調達の手段が増えること、上場には審査があるので社会的信頼が増すこと、知名度の向上などがあります」

パイを大きくせよ

「次に、売り上げを増やすために、サービスの提供以外でやったことをお話ししたいと思います。先ほども述べましたが、売り上げを増やす方法としては、市場というパイの自分の分の割合を多くすることがまず挙げられます。業界の覇権を握るということです。

 このことと同様に大事なことが、パイを大きくするということです。パイを大きくするためにヤフージャパンにとって大事だったことが、インターネットを日本に広めることでした。そのために、まず雑誌を作り、インターネットの良さを広めました。インターネットに触れる人を増やすことでIT業界のパイを大きくしました。IT企業であっても、インターネットを知らない人に自分のサービスをリアルでどのように広めるかも考えてやっていました。他に皆さんがしているところだと、ヤフードーム(現ヤフオクドーム)の命名権を持ったことなどがあげられます。業界を知ってもらうこと、自社を知ってもらうこと、業界のお客様を増やすことがパイを大きくするのに重要なのです。
 
 最後に、先輩として、皆さんのキャリアについてアドバイスをしたいと思います。進路には大企業、中小企業、起業とあると思いますが、それぞれにメリット・デメリットがあります。選択をするときに重要なことは、楽しいと思って働けることだと思います。そのために、企業や社会に貢献できる仕事か否か、という目線が出てくると思います。また、起業や社会に貢献するためにはその仕事が自分の特性に合っていることが重要だと思います。自分で事業をすることになった場合は、実に多くのことを考えていかなければなりません。ビジョン、戦略、戦術提携、出資、組織、マネジメント、マーケティング、人材、ビジネスモデル、広告、セキュリティ、法律などです。これ以外にも無数の要素を把握して組み立てなければなりません。しかし、すべてをこなすことは不可能です。なので、どの方向を自分は向いてやろうかを考えてスキルを磨き、仲間を増やして成功をつかむとよいかと思います。日本の将来を担うのは皆さんです。頑張ってください!」
喜多埜裕明(きたの ひろあき)
Kカンパニー株式会社 代表取締役社長
1962年生まれ。早稲田大学教育学部卒。桧林社入社後、NYへ。同社NY法人の副社長に就任。平成9年にインターネット業界に転身し、ヤフー、ソフトバンクモバイル、ソフトバンクホークスマーケティングの取締役を歴任し、ヤフー株式会社のCOOに就く。現在では、Kカンパニー株式会社代表取締役他、多数の企業の顧問・役員を務めている。
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