独立系VCを立ち上げた女性起業家が伝授!「VCが起業家を見る5つのポイント」

「起業特論Aトップリーダーマネジメント」第7回講師:佐藤真希子氏『VCはどのような視点で投資するのか』(2018年5月25日実施)
文部科学省が推進する「グローバルアントレプレナー育成促進事業」に選定されている「WASEDA-EDGE人材育成プログラム」の一環として、早稲田大学では毎回、注目のトップリーダーを講師に招く特別講義「起業特論Aトップリーダーマネジメント」を開講(全8回)。第7回目の講師は、サイバーエージェントにて会社の急成長を支え、現在では起業家を応援するため株式会社iSGSインベストメントワークスの取締役及び代表パートナーを務める、佐藤真希子氏だ。


VC(ベンチャーキャピタル)とはなにか

「私は2000年にサイバーエージェントという会社に新卒一期生として入社しました。サイバーエージェントといえば、今や3千700億円くらいの売り上げ、5000人の社員を抱えるとても有名な会社ですよね。社長の藤田晋さんは21世紀を代表する会社を作るべくサイバーエージェントを立ち上げたのですが、私はそのサイバーエージェントで、まさに会社が急成長する時期に仕事をしていました。この時に、会社が急成長する、ということにハマってしまいました。そのせいで、どうしても会社の成長に立ち会いたいなと思うようになりました。そこで、サイバーエージェントでベンチャーキャピタル事業をやるということで、子会社のサイバーエージェントベンチャーズという会社に移り、投資事業に携わることになりました。この講義の第3回目にメディアフラッグの福井康夫社長が登壇されたそうですが、そのメディアフラッグは、私が初めて投資した企業です。福井社長は、こういう起業家に投資をしたいなと思った初めての起業家でした。この投資の後、順調に会社が大きくなり東証マザーズにも上場しているということで、私としても思い入れのある仕事となっています。

 このようにして、3人の子供を育てながら、かれこれ9年ほど国内投資をしてきたのですが次の10年目から、どうしていこうかなと思い、2016年に五嶋一人さん菅原敬さんとともに独立系のVCである株式会社iSGSインベストメントワークスを立ち上げました。私の夫は起業家(第6回講義に登壇した重松大輔氏)なのですが、そういう意味では、私は投資家であるとともにVCを立ち上げた起業家でもあります。

 先ほどからVCVCと言っていましたが、VCとはいったい何なのか、ということをお話しします。まず、世の中には様々な問題があります。その問題は食糧問題であったり、業界の構造によって生じる問題だったりします。それをテクノロジーなどを使って解決しようとする人々がいますが、そういう人たちを起業家だと思っています。その起業家をサポートする存在、起業家の黒子としてお金以外にもサポートをする存在がVCです。実は世界的に有名なベンチャー企業の裏にも、VCというものは存在していまして、グーグルやアマゾン、フェイスブックも実は最初はVCがサポートして会社を興していたのです。国内ベンチャーだと、最近東証マザーズに上場承認が下りたメルカリのバックもVCがいます。

 では、VCはどのようなビジネスモデルでやっているのかという話をします。構造を簡単にいうと、個人投資家や機関投資家、事業会社、金融機関などの出資者からお金を預かって我々がファンドを形成し、そこから優良なベンチャー企業探してきて投資をしています。投資したベンチャー企業が成長したら、株式を売却や譲渡をすることで現金化し、個人投資家等にお返しをします。私はそのVCの中でファンドマネージャーという、どの企業に投資をするかという仕事をしています。VCにも実はさまざまな種類がありまして、金融系VCや事業会社系VCなどがあります。金融系や事業会社系VCは、金融機関や事業会社が出資者となっているVCなのですが、我々は独立系VCを名乗っています。独立系とは、ファンドを組成するときに自分たちでお金を集めている、つまり、自分たちの足で出資者から出資を集めているVCになります。

 VCの仕事内容としては、企業への出資をはじめ、事業内容のブラッシュアップ、採用、営業先の経営者の紹介まであり、企業を成長するためにできることはなんでもサポートしています。これができるのは、私を含め、代表パートナーの3人ともがそれぞれメガベンチャーが成長する過程で実務を経験していたからだと思います」


VCにとって魅力的なビジネスとは? 5つのポイント

「そもそもVCは返済義務のある借入ではなく、返済義務のない投資をします。我々はお金を渡す代わりに株式を得ます。つまり、株式の価格が上がることで利潤を上げるのです。VCの好みにもよりますが、基本的には安定的に長期的な成長をする事業よりも短期的に爆発的に成長する事業の方が投資をする魅力を感じます。どちらかというと、正関数的に伸びる事業よりも指数関数的にグンと伸びていく事業の方がVC向きだと思います。

 では、VCは事業のどのようなところをポイントとしてみているかということなんですが、ビジョン、プロダクト・サービス、成長戦略・事業計画、マーケット、チームと、大きく5つあります。

 まず、ビジョンでは何を見ているかというと、起業家の実現したい世界は何か、というところです。その起業家がどんな世界を作りたいと考えているのか、どうよって実現しようとするのかということです。なぜそういうところを見るのかというと、トップである起業家がどこを目指すかで戦略の取り方が変わってくるからです。21世紀を代表する会社を作りたいのか、300年続く会社を作りたいのか、1000億企業を作りたいのか、50兆円企業を作りたいのかといったところです。世界の食糧問題を解決したい起業家もいるでしょう。とにかく、どのような世界を作りたいか、ということが重要になってきます。そして、事業を大きくして、やりたいことを実現するためには、あらゆるものを犠牲にしなければなりません。よって、起業家のビジョンと会社のビジョンがあっているかも大事です。自分のビジョンに合った事業じゃないと続かないからです。

 プロダクト・サービスについて何を見ているかですが、他人がシンプルに理解できるか、何を解決するのか、といったところを見ています。シンプルに理解できるかというところですと“事業を一言でいうと何ですか?”といった質問をよくします。これが結構、明確に説明できない人が多いのですが、実は重要だったりします。少なくとも1分、できれば名刺交換の時に“私は、こういうビジネスをやっています”と言えるところまで落とし込めると最高です。うちの投資先の例としては“倉庫版のAirbnb”と言ってきた人もいます。“○○版の□□”といったふうに言うことがよく数年前から流行っていたそうですが、このような言い方でもいいので、どんなビジネスをするのかを端的に表現できるようにしましょう。

 成長戦略・事業計画ですが、実は事業の初期段階では事業計画書はほとんど見ません。初期に作った事業計画書は、絵に描いた餅に過ぎないからです。もちろんステージが進んだ段階で投資する場合には必要になって来ます。成長戦略についてですが、初期の段階では成長という視点よりは、どうやって市場・ユーザを獲得するのかといった、マーケットフィットの視点から見ます。具体的には、市場・ユーザの獲得をどうやって、ビジネスモデルをどう確立し、そのビジネスモデルをどうマネタイズするか、資金調達方法はどうするか、キャッシュフロー計画はどうなっているかを見ます。

 マーケットについてですが、そもそもやろうとしている事業が世の中の流れに沿った事業なのか、市場規模はどのくらいあるのか、競合はどのようなところと当たるのかについてみます。

 チームについては、その事業をやって勝てるチームなのかを見ます。事業を始めるにあたっては、最初のメンバーが大事になってきます。最初のうちはメンバーがメンバーを呼ぶのが常だからです。類は友を呼ぶということわざがありますが、往々にして優秀なエンジニアは優秀なエンジニアを呼び込むなどといったことが多いので、自分のビジョンを実現するために必要なメンバーを集めましょう。ポイントはビジョンをきちんと共有できてるか、コミットメントをきちんとしてくれているかなどです」


インパクトを与える事業をどのように作り出すか

「よく“起業はいつか、したい”“起業したいけど、やりたいビジネスがない”という声をよく聞きます。そのような人に、どのような視点でビジネスを考えた方がよいのかをお話ししたいと思います。

 起業にあたっては、課題の発見やトレンドからビジネスを生み出すということがよくあります。まず、課題の発見というところでは、産業・マーケット・社会課題(身近な)を解決する、海外でのサービスを日本で展開する、新しい時代の流れ(既得権益・法律)の改正、テクノロジーによる新しい産業の登場、既存産業のテクノロジーによる破棄、既存産業のビジネスモデルによる破壊、などを意識するといいと思います。今後のトレンドに乗るというところでは、国連が発表している『持続化のな社会のための2030アジェンダSDGs』というものがありまして、これからの世界に必要な“平和と公正をすべての人に”などといった目標が17個列挙されています。あとは経産省等の省庁が掲げている目標に乗るというのもいいと思います。

 参考までに、最近の新規事業トレンドをご紹介したいと思います。最近私がハマっているのが、b-monsterという暗闇フィットネスで、暗いところでクラブやディスコみたいな雰囲気を作ってレッスンを受けるところです。面白いのが、インスラクターが、自分たちはパフォーマーという意識でレッスンをしているところです。先生と生徒の様な上下関係の崩壊が起こっているというところが面白いです。他にも、すし職人がエンターテイナーとしてライブクッキングするすし銚子丸だとか、先生が授業をせず生徒のサポーターに徹する武田塾という塾もありますね。このようにリアルなビジネスでも主従、上下、男女の垣根がなくなってきていて、グラデーションのようになってきています。こういったところも意識していくとよいと思います。

 いろいろと今日はお話してきましたが、一番大事なものは、起業家が何をやりたいかという熱量です。熱狂といってもいいかもしれません。起業家の実現したい世界は、誰の頭の中にもなくて、起業家の頭の中にしかありません。もしかしたら起業家の頭の中にすらないかもしれません。それを情熱という武器で優秀な人たちを魅了して、実現していくのが起業家です。もちろん失敗することや、くじけそうになることもいっぱいありますが、それでも進んでいくのが起業家のすごいところです。

 皆さんの中から日本を変えていけるような起業家が出てくることを祈ってます」
佐藤真希子(さとう まきこ)
株式会社iSGSインベストメントワークス取締役代表パートナー。2000年に株式会社サイバーエージェントへ新卒1期生として入社。インターネット広告事業本部にてプレイヤーとマネジメントを経験。その後、子会社での事業経験を経て、2006年より株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズにて国内のベンチャー企業への投資に従事。2016年2月、独立系のベンチャーキャピタルである株式会社iSGSインベストメントワークスを2名のパートナーと共に立ち上げ、取締役 代表パートナーに就任。現在は国内外問わず有望なベンチャー企業への投資援を行う。夫は株式会社スペースマーケット代表取締役の重松大輔。3児の母。
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