キラースマイル MIO【ジョシカク美女図鑑 第3回】

“RENA超え”へ向け、人生をかけたトーナメントに出場

 女子格闘家の素顔に迫るインタビュー企画「ジョシカク美女図鑑」。第3回目はシュートボクシング(SB)の初代SB日本女子ミニマム級王者MIOにインタビュー。

(撮影・蔦野裕)

格闘技を始めるきっかけは「ドラマの女の子の胴着姿がかっこよかったから」
 MIOはシュートボクシング(SB)が開催する年に一度の女子の祭典「SHOOT BOXING Girls S-cup ~48㎏世界トーナメント2018~」(7月6日、東京・東京ドームシティホール)で大会の軸となる「48㎏世界トーナメント2018」に出場する。6月12日、ついにトーナメントの出場選手8人が出そろった。組み合わせはインタビューの時点ではまだ発表されていないのだが、6月の後楽園大会の試合後の会見でシーザー武志会長は1回戦でMIOとイム・ソヒとの対戦をにおわせた。

「イム・ソヒ選手には4月の後楽園大会で負けてしまったので、リベンジしたいとは思っています。トーナメントでは当たらない可能性もあるので、やるなら1回戦ということもあるのかと思っています」

 前回はソヒに体重超過があったうえでの敗戦と、後味が悪かった。

「体重に関しては最近、ボクシングなんかでも計量をオーバーするケースがたくさんあって、 “ありえるかな?”とは思っていたんです。でもそんなことより、この負けは私の実力不足。3月に出演した舞台の稽古などがあって、満足に練習ができていなかったという部分はあるので…。でも今回は万全で、用意はしっかりできているので、本当の私の姿を見せたいですね」

 3月の舞台は初舞台で、なおかつ主役級での出演とあり、稽古などで見えない疲れがあったのでは?

「2月の試合が終わって、1週間くらい遅れて稽古に参加する予定だったんですが、そこでインフルエンザにかかってしまって稽古への参加が1週間遅れてしまったんです。ただでさえ試合で他の人より稽古日数が少ない中での出演に加えて、セリフもめっちゃ多くて、“これはやばいぞ”というなかでの稽古でした」

 では今回は体調も万全で、ソヒもちゃんと体重を落としてくれば、負けないという手ごたえはある?

「そうですね。ソヒ選手に負けたことによって見つかった弱点を強化するような練習もできていますので」

 女優業については、今後どういうふうに進んでいきたいといった目標は?

「私は格闘技以外、これというものがなくて、将来について不安に思うことも多かったんです。“自分の特技を生かした仕事に就かないと”と考えるうちに、アクションとか小さいころにやっていた芸能系の仕事をやれるようになればいいな、と思うようになりました。今後はアクションなどもやりたいです」

 それまで20連勝と約5年間負けなしだった。久しぶりの敗戦から、この間はどういうふうに過ごしていた?
 
「負けること自体が久しぶりで、“落ち込んでいる場合じゃない”とは思っていたんですが、どこかぼーっとしちゃうところがありました。“どうしようかな”って。自分では気づいていなかったんですけど、結構来るものがあって落ち込んでいたみたい。練習も、負けてすぐの時は身が入らなかったし、全部がぐちゃぐちゃになっていました」

 練習に身が入ってないということは周囲からも指摘された?

「言われちゃいました。練習を休んじゃったりしたこともあるんですが、やはり分かる人には分かるんだなって思いました。RENAちゃんくらいになってくると、私の考えていることなんかはすぐにばれてしまうので(笑)」

 格闘技、なおかつシュートボクシングをやろうと思ったきっかけは?

「小学校2年生くらいの時だと思うんですが、NHKの子供向けの番組で柔道のドラマがあったんです。そこに出演していた女の子の胴着姿がかっこいいなと思って、それにあこがれて私も胴着を着たいと思ったんです。でも柔道という言葉を知らなくて、お母さんに“空手がしたい” と言ったら、お母さんも空手に詳しいわけではないので、たまたま家の近くにあったグローブ空手の教室に行くことになりました(笑)。いろいろな間違いが重なって今ここにいるんですが(笑)、本当は柔道がしたかった(笑)」

 自身が柔道という単語を知っていたか、お母さんが「あのドラマって柔道じゃない?」って分かっていたら、空手じゃなくて柔道に進んでいた可能性も?

「ありますね。私とお母さんがもっとしっかりしていれば、柔道をしていましたね」

 その時点で運動神経は良かった?

「全然です。本当になんにもしていなかった。ピアノを習っていたくらい。ただ“胴着が着たい”という思いだけでした(笑)。パンフレットを見て、“う~ん、何色の帯にしようかな?”とか言ってましたから。“白、めっちゃかわいい”とか言ったら、お母さんが“最初はみんな白や”って(笑)」

5月29日に行われた会見での一コマ。シーザー武志会長を真ん中にMIO(左)とRENA

強豪ぞろいのトーナメント「みんな私は優勝できないと思っているんじゃないですか(笑)」
 そこからSBへはどうつながる?

「お父さんと“強くなるにはどうしよう”と相談していたんですが、そのときに注目を浴びていたのがRENAちゃんがいた大阪のジムでした。RENAちゃん以外の女子も強くて、試合の会場ではライバルとして見ていたんです。でも違うジムなのにアドバイスをいただいたりしていたので、お父さんも“あそこに行ったら強くなれるんとちゃうか”ということでそのジムに移籍することになったんです」

 そして16歳でデビュー。現在23歳にして、もう34戦のキャリアを誇る。

「びっくりです。女子はトーナメントも多いので、自然と試合数は増えますよね。私も16歳からトーナメントをやっていますから。ここまで無心でやってきたんですが、やっぱり何戦もしてくると同じ相手と対戦することが多くなってきて、モチベーション的には昔よりはちょっと落ちる時もあったんです。でも今回のトーナメントはこれまでで一番モチベーションが上がっています」

 日本では無名でも実力は折り紙付きという、やっかいな選手ばかりです。

「今回は特に半端じゃないメンバーが揃いましたね。みんな私は優勝できないと思っているんじゃないですかね(笑)。そんな空気を感じます」

 では今回のトーナメントに向けては不安がいっぱい?

「そうですね。不安しかないし、時間はないのにやらなければいけないことはたくさんある。でも今までと違う、ワクワク感があります。いつもだと、“絶対に勝てるでしょ”というように見られることが多かったんですが、“今回はやばいんじゃないの?”という声があって、それが刺激になっています。“いやいや大丈夫よ。勝つよ”っていう気持ちで練習に取り組めています」

 シュートボクサーとして、そして格闘家としての目標は?

「今はもう本当に目の前のトーナメントのみですね(笑)。それしか見えてないです」

 そこをひねり出して、次の目標は?

「なんやろ? 世界のベルトを取って、日本のベルトも持っていて、その先に見えるもの…。やっぱりRENAちゃん超えじゃないでしょうか」

 直接対決も含めて?

「そうなってきますよね。私は視野には入れています。体重的にもお互いに合わせようと思えば戦える範囲ですし、ファンの方々にも見たいと言われますので。でも今の私が言っても説得力がないので、優勝してベルトを巻いて、誰もが認めてくれる状態で、そういうことを言っていきたいと思っています」

 RIZINといった他のビッグイベントへの参戦は?

「RIZINさんが今、すごく盛り上がっていて、女子もすごいじゃないですか。でもやっぱり、シュートボクシングでまだしっかり結果を出せていないので、寄り道をせず、今は本当にトーナメントに集中して、結果を出してから、と思っています」

 取りあえず今は足場をしっかり固めて、ということ?

「そうですね。本当に過程が大事だと思っています。しっかりやることをやって、求められるようになって、出たいですね」

 今、日々の生活パターンって?

「今はシーザージムでインストラクターをしています。ここでは自分の格闘家としての経験を生かすことができるので、向いてると思うし、お客さんと喋ったり、自分の持っている技術を教えたりすることがとても楽しいんです。でも格闘家の方で全く別のことをしている人もいるじゃないですか、そう思うと、それは本当にすごいと思います」

 女子格闘技が盛り上がっている最近の状況についてはどう思う?

「まだ大阪にいた時にRIZINが始まって女子格闘技の人気に火が付いたじゃないですか。それを見ていて、なんかもやもやした気持ちになって、2年半前に上京したんです。ずっとうらやましいなという目で見ていました。でも、これはずっと近くで見てきた私だから分かることだと思うんですが、RENAちゃんが私が小さいころから本当にジョシカクを引っ張ってくれていて、だからこそ今がある。なので私もそれを受け継いでいかないといけないと思っています」

 RENA選手が引退する前に“RENA超え”を果たさなければいけない。となるとやはり今回のトーナメントがかなり重要。ここで優勝しないと、また1年その機会が延びてしまう…。

「今いいプレッシャーをかけていただきました(笑)。でも本当にそう思います。人生をかけて頑張らないといけないですね」

 今大会ではRENAが昨年大晦日以来の復帰戦を行うが、それをセミファイナルに追いやり、メーンはトーナメントの決勝となる。決勝に進出し、そこで優勝すればまた一歩RENAに近づくことができる。果たしてMIOは決勝に進出して一気に主役の座を奪い取ることができるのか!?