【インタビュー】古谷経衡 初の長編小説と新書を同時刊行 

 インターネットとネット保守、若者論、社会、政治、サブカルチャーなど幅広いテーマで執筆評論活動を行っている古谷経衡。最近ではテレビやラジオのコメンテーターとしても活躍中だ。そんな古谷氏が6月、新書と小説を2冊同時に刊行。『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『ネット右翼の終わり』『ヒトラーはなぜ猫が嫌いだったか』など、これまでの話題となった著書とはまた違ったアプローチとなった同書について話を聞いた。


奇人変人が多すぎる女性政治家を採点

――小池百合子を始め、29人の女政治家について論じた『女政治家の通信簿』(小学館新書)。なぜ今女性政治家を取り上げたのか。

「日本においては、女性政治家って圧倒的に少なくて、その比率は大体男性政治家の1割ぐらいなんですよ。だから女性の政治家は目立つし、全員をじっくり見る事ができる。そうやって見ていると、ぶっちゃけ変な人ばかりだなって(笑)。この人、本当に議員になっていいの?という単純な疑問と、そういう人たちがほぼすべて問題を起こしているという事実もある。稲田朋美を筆頭に、事実上の更迭でいうと、高市早苗もそうだし、山谷えり子もそう。ほかにも、いろいろと話題を振りまく片山さつきに丸川珠代、単なるネット右翼としか思えない杉田水脈。あと野党でいうと山尾志桜里なんかは、申し訳ないですけど、議員の器ではないと思うんですね。また、入閣はしていないけど、タレント議員の今井絵理子も単なる沖縄対策で、やった事といえば不倫と稚拙な愛国歌謡の擁護だし(笑)。豊田真由子は “このハゲ~”で悪目立ちし過ぎただけ。もちろん、男性でも変な人は多いですけど、それにしても女性政治家は変人奇人が多すぎると思ったのが、この本を書こうと思ったきっかけです。衆参両院でも100人いないのに、これだけひどい人が多いのは日本だけじゃないかと。でも男性が優位な社会だからしょうがないとは、僕は言いたくない。そういう人を公認する側にも問題はあるし、勉強しない本人にも問題があると思っています。その辺りも含め。通信簿という形で、書かせていただきました」

――「通信簿」なので、各政治家を、選挙力、政策力、保守層支持、政治経験、ルックスで評価。ルックスは関係ある(笑)?

「マスコミが美人過ぎる市議だとか、美人過ぎる県議といった取り上げ方をするのはどうかと思いますが、一般の対人関係において、ルックスってその人を見る上で、ほとんどの人が考慮に入れていると思うんです。もっと言うと、ルックスで判断して、もっと話してみたいという間口でもある。僕なんかこういうなりをしていますから、よく職質を受けますし(笑)。実はこの本にルックスの採点を入れた時に、主に、フェミニズムの人たちから、差別を助長しているとすごく批判を受けたんです。なるほど確かにそうかもしれません。が、日常の社会でもルックスで判断している場面があることを考えると、それを入れないのは逆に嘘になるなと。本当にルックスを100%除外して「人間の本質」なるものを見定めることの出来る人ってどのくらい居るでしょうか。もちろん、それはなくなった方がいいんですけど、現実にある以上書かなきゃいけないと思いました。もちろん、その採点は僕の主観で、個人的な好みによるものですから、全然わかってないなと思っていただいても結構です(笑)」

――巻末には舛添要一さん、野田聖子さんとの対談も。野田さんに関してはかなりの高評価ですね。

「この本では最高評価です。25点満点で、20.5点なので。なぜ、僕が野田さんのことを評価しているかというと、ほかの女性政治家のように、男性の党執行部にまったく媚びていないんです。もちろん、一部例外もありますが、片山さつきも稲田も、杉田の姿勢も僕には媚びに映る。しかし、野田さんにはそれが一切ない。媚びないどころか小泉政権の時(郵政選挙)には離党しているし、直近でも放送法4条削除について最初に反対を表明したし、#MeToo問題でも一番初めに声を上げた。他の女性議員は、地盤も看板もお金もある人でも、先回りして男性をよいしょする。男が何も言わないのにお酌をするタイプなんです。でも野田さんは自立していて、よく言えば反骨心がある。閣僚級クラスの女性議員では、彼女しかいないんじゃないでしょうか」

――似顔絵と添えられている一言コメントもユニーク。

「字だけだと硬くなっちゃうので、通信簿とイラストでかなり柔らかい印象で読みやすくなっています。自分の好きな政治家から読んでもらってもいいし、もちろん嫌いな政治家からでも(笑)。読み飛ばして対談を先に読むとか、自分の気になったところから読むことができます。今年はおそらく国政選挙がないので、この本に出ている人は、スキャンダルなどを起こして辞任しない限り、最低あと1年ぐらいはこのままの肩書でいると思いますので、少なくとも1~2年は女性政治家についての参考図書として使えるかなと(笑)。ポケットに1冊持って、女性政治家が何かした時に読み返していただければと思います」
嫉妬による足の引っ張り合い。クズでゲスだけどおもしろい


――『愛国奴』(駒草出版)は自身初の長編小説とか。

「もともと高校、大学と創作文芸をやっていて、短編や中編の小説は書いていたんです。新人賞などにも応募したことがあったんですけど、鳴かず飛ばずで(笑)。しかし、こういう形で小説を出版する事が出来て、逆に近道だったかなと思いましたね。最初この本はノンフィクションで書こうと思い、中編ぐらいの段階で編集者に見せてみたんですけど、 “面白いけど訴えられるよ”って言われて。自分でも確かにそうだなって思ったので、だったらフィクションにしてしまおうと。内容は、愛国を笠に着て、金儲けしたり、自分の欲望をかなえたり、人の足を引っ張ったりしている人々の話です。とにかく一人としてまともな人間がいない。それを総称して愛国奴として描いています。全員クズでゲスな人間ですが、僕はそれも人間の本性だと思っている。それをすごく露悪的に誇張して書いた小説ですね。基本的には全部フィクションですが、訴えられない程度に実体験も混ぜ込み、いろんな人物にくっつけて料理してます(笑)」

—―普段書かれている評論とは勝手が違った?

「僕の著作を読んで下さっている方からは、喜ぶべきなのかどうなのか分かりませんが、一番おもしろいと言っていただきました。基本的に僕は文体を変えないんですけど、僕の文体は小説で読むとしっくりくると言って下さる方もいて、そういう評価はお世辞かも知れませんが素直にうれしいですね。長編小説ですから構成が単調でもいけませんし、いろいろなテクニックも使っていますが、普通に読んで面白かったと言ってもらえたので、安心しています。右翼とか保守ムラとかほとんどの方が知識がないと思いますし、とても狭い世界なので関係性が難しいんじゃないかと思うかも知れませんが、まった知らなくても大丈夫です。単純にクソみたいな人間が、男の嫉妬で足を引っ張り合って、最終的に全員が破滅していく話ですから。それって普遍的に面白いんですよね。実際、そういう世界にまったく興味のない人でも、面白かったと言ってくれましたし、エンタメ小説になっているので、これまで僕の本を読んだことのない人にも手に取ってもらえているようです。予備知識がなくても、誰でも楽しめる小説になっているので、気軽に娯楽作品として読んでいただけたらと思います」

――今後の出版予定は?

「取材の進捗状況にもよりますので、時期や内容ははっきり決まっていませんが、戦争ものをひとつやりたいと思っています。海外の戦場を回って歩くが僕のフィールドワークなので、そこを体系的にまとめたものを書きたいなと。この本の売れ行きにかかっていますが(笑)、小説も引き続き書いていきたいですね。」

(TOKYO HEADLINE・水野陽子)