暗闇の中、揺れる船の上で怪談を聞く「はとバス 講釈師と行く夜の怪談クルーズツアー」(2018年)

 記録的な猛暑となった今年、じわじわと涼しくなれる場所といえばずばり“お化け屋敷”。「そんなもの所詮は子どもだまし、作り物」とあなどるなかれ。昨今のお化け屋敷は、明確なコンセプトと細部に至るまでのこだわりで、リアル感が半端ない。一度そこに足を踏み入れれば、恐怖の鳥肌地獄に引き込まれること間違いなし!
 趣向を凝らした怪談ツアーといえば、毎年大好評のはとバス「怪談バスツアー」。講釈師をガイド役に怪談ゆかりのスポットをまわり、怪談噺を楽しむもので、1973年から始まった人気企画。中でも2013年からスタートした「講釈師と行く夜の怪談クルーズツアー」は、完売必至の大人気ツアー。

 四谷のお岩稲荷を出発し、幽霊画で有名な谷中全生庵、将門の首塚などを回り、最後は日本橋からゆらゆらと船に揺られ、隅田川へ。夕暮れ迫るころ橋の下で講釈師が怪談を語り出すというコース。川面をすべる風はねっとりとした熱気と湿気を含み、首筋に絡みついてくる。暑いはずなのに、何故か足元から深々とした寒気が広がり、不安定な船の揺れがさらに心をざわめかす。刻一刻と時が経つごとに、講釈師の顔がボーっと浮かび上がり、水面に反射したビルの灯りや自動車のヘッドライトと重なり合い、異空間へ誘われる。

 毎年「怪談バスツアー」の実施前には、はとバスの企画担当者や乗務員の代表者、講釈師らが、ツアーの安全と無事を祈念し、「四谷お岩稲荷」でお祓いを受けるのが恒例とか。約1時間かけて、しっかりとお祓いをしてもらい、今年もツアーが無事開催した。


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