暗闇の中、揺れる船の上で怪談を聞く「はとバス 講釈師と行く夜の怪談クルーズツアー」

 記録的な猛暑となった今年、じわじわと涼しくなれる場所といえばずばり“お化け屋敷”。「そんなもの所詮は子どもだまし、作り物」とあなどるなかれ。昨今のお化け屋敷は、明確なコンセプトと細部に至るまでのこだわりで、リアル感が半端ない。一度そこに足を踏み入れれば、恐怖の鳥肌地獄に引き込まれること間違いなし!
 趣向を凝らした怪談ツアーといえば、毎年大好評のはとバス「怪談バスツアー」。講釈師をガイド役に怪談ゆかりのスポットをまわり、怪談噺を楽しむもので、1973年から始まった人気企画。中でも2013年からスタートした「講釈師と行く夜の怪談クルーズツアー」は、完売必至の大人気ツアー。

 四谷のお岩稲荷を出発し、幽霊画で有名な谷中全生庵、将門の首塚などを回り、最後は日本橋からゆらゆらと船に揺られ、隅田川へ。夕暮れ迫るころ橋の下で講釈師が怪談を語り出すというコース。川面をすべる風はねっとりとした熱気と湿気を含み、首筋に絡みついてくる。暑いはずなのに、何故か足元から深々とした寒気が広がり、不安定な船の揺れがさらに心をざわめかす。刻一刻と時が経つごとに、講釈師の顔がボーっと浮かび上がり、水面に反射したビルの灯りや自動車のヘッドライトと重なり合い、異空間へ誘われる。

 毎年「怪談バスツアー」の実施前には、はとバスの企画担当者や乗務員の代表者、講釈師らが、ツアーの安全と無事を祈念し、「四谷お岩稲荷」でお祓いを受けるのが恒例とか。約1時間かけて、しっかりとお祓いをしてもらい、今年もツアーが無事開催した。


 ツアーの目玉「怪談クルーズ」は、日本橋からスタート。40人乗りの小さな船に乗り、高速道路の下をゆっくりと船が進む。両側には見慣れたはずのビルが立ち並ぶが、川から見た景色は、これまで見た事がない東京の姿をしている。船に乗るとよく分かるのだが、意外にも都内は橋が多く、川に沿って街が作られている風景に、時代劇で見た江戸の町の面影を発見。ガイドさんが、それぞれの橋の特長や、設計者の話、また作られた経緯などを解説。それだけで、十分楽しいクルーズツアーだ。

 そしていつの間にか正面にスカイツリーが。橋越しに見るスカイツリーは、なんだか現実のものとは思えず、自分が過去から未来にタイムスリップしてきた気分にさせられる。スカイツリーの手前でぐるりと回ると、船は行きに通った「霊岸橋」の下へスーッと滑り込み、ストップ。そこでいよいよ怪談話がスタート。
 この日、講釈師の神田春陽が語ったのは、三遊亭圓朝作の「五勺酒」という何とも後味の悪い不気味な話。落語では「もう一杯」という演目でおなじみの噺だ。最初は周りも薄紅のぼんやりとした明るさだったのだが、クライマックスの一番ゾクゾクするところに差し掛かる時には、闇が周りを支配。下から照らされた講釈師の顔だけが浮かび上がり、ゾワゾワ度はMAX! どこにも逃げられないという状況がまたスリリングだ。まとわりつくような川からの湿った空気はよどみ、その不快な感じが怖さを倍増する。
 噺が終わると乗船した日本橋のたもとに向かい静かに動き出す。行きとは違う、夜の都会も船から見るとまた別世界。日本橋がこんなに美しい橋だったとは!

 大人になって怪談噺ぐらいでは恐怖を感じないと思うかも知れないが、このシチュエーション・演出で聞くと、結構怖い。まさに、日本の夏といった風情が体験できる。
怪談噺もさることながら、川から見る東京の街並みも新鮮で、それだけでも一見の価値あり! この夏は怪談とリバークルーズで、粋に過ごしてみない?
「講釈師と行く夜の怪談クルーズツアー」

【運行行程】
東京駅丸の内南口 (14:20発) 四谷お岩稲荷 (四谷怪談のモデル・お岩さんを祀る神社/20分) 谷中全生庵 (幽霊画鑑賞/20分) 根岸「笹乃雪」 (豆富料理の夕食/50分) 将門の首塚 (日本三大怨霊のひとつ/10分) 日本橋「夜の怪談クルーズ」 (夜の運河探検クルーズ&船上で怪談噺/90分) 東京駅丸の内南口 (21:00着予定) 銀座キャピタルホテル (21:10着予定)
【料金】
大人9980円、子ども8980円(6歳以上12歳未満)
【予約・問い合わせ】
はとバス 予約センター TEL:03-3761-1100(8~20時、無休)