【インタビュー】プロテニスプレーヤーの笹原龍「海外での活動は人生の財産」

 テニスと言えば、錦織圭。それ以外のテニスプレーヤーを誰か知っているだろうか? 日本では、マスコミで取り上げられるスポーツ選手というのはほんのに一握り。「プロ」と一口にいっても、さまざまなスポーツのたくさんの選手がいるはずなのに、その他大勢になかなか目を向けられることはない。海外を拠点に、海外の大会でも戦績を残す、プロテニスプレーヤーの笹原龍に、「テニス選手として生きることは?」というテーマでインタビューした。


選手として、コーチとして

ーー笹原さんは、今選手としてどういう状況にあるんですか?

テニスには世界ランキングというものがあり、選手はこのランキングを上り詰めていくことになります。世界ランキングを上げるための大会に出場し、戦績を積んでいっているところです。一番大きい大会であるグランドスラムという大会に出るためには、世界ランク100位くらいに入っている必要があります。世界ランキングの順位によって、出場できる大会のレベルが変わってきます。ATPチャンピオンシップ、マスターズ、チャレンジャー、と階層が別れていて、僕は現在主にその下のフューチャーズというランクの大会に出場しています。グランドスラムでは本戦1回戦負けでも約350万円の賞金がでます。グランドスラムで開催される4大大会を、すべて1回戦で負けたとしても約1400万円の賞金は得られます。プロ選手は皆、グランドスラムを目指して世界ランキングを上げる活動をしていくんです。

ーー選手活動だけでも大変そうですね。コーチ活動は、自分の中でマストなんですか?

そうですね。自分の海外での経験を、ジュニアにも伝えてあげたいので。プロとして生きていくためには、実際問題、海外も視野に入れていかないと難しいところもあります。僕自身の経験から海外への遠征に対して必要な事や、世界で戦う選手の打つボール、どんな練習をしているかを主にプロ志望のジュニアに対してコーチングをしています。基本的には海外活動まで見据えたジュニア育成を行っています。選手とコーチをしていると、365日ほぼすべて、テニスのことしか考えていないと言っても過言ではありません。選手として大会に出ている期間は、ジュニアを指導できないので、基本的に海外にいる間は選手として活動し、国内に戻って来たときはコーチ活動を優先し、自分の練習とで、ほぼ休みはありません。今は自由な働き方の人が多いので分かりやすいかと思いますが、基本的にはフリーランスで行動していると、休もうと思えばいつでも休むことはできるのですが、本当にテニスが好きなので、ツライとは思いませんね。しかし将来的にはいずれコーチングに専念する事になるでしょう。プロスポーツ選手のほとんどは、選手を終えた後は指導者に回る方が多いと思います。選手として活動できなくなっても、コーチとしてラケットを握り続けて行くと思います。


プロを目指すならジュニアの段階からの鍛錬と親の努力が必須

ーー笹原さんの持っている生徒は、みなプロ志望の子たちが多いんですよね。

そうですね。テニスでプロを目指す子たちは小学生ぐらいから親元を離れ国外などに遠征にいきます。子供といえども精神年齢は大人の考えを持たなくてはなりません。練習、トレーニングをこなすことに加え、自分自身のマネジメントもこなさなければいけません。そういう子たちを見ていると自分も負けていられないな、と勇気をもらいます。

ーージュニアからプロを目指すのは、家族全体での応援が必要そうですよね。

やはり、お金がかかってくることですからね。特にかかるのは遠征費で、一人で行けない分、引率の大人の分までと考えると、費用も倍かかってくるんです。なのでジュニアからプロを目指すなら、親の理解と援助も必須です。プロとして生きていくなら、ジュニアから海外遠征ももちろん視野に入ってきます。有名選手たちがジュニア時代から在籍する海外アカデミーなどは、月に60~100万円近い費用がかかります。しかし、選手としての実績、人間性などを評価してもらえれば、海外アカデミーや学校などから費用などをほぼ全額負担するようなスポーツ推薦精度も整っています。そういう意味では、ジュニアから海外留学することは大きなリターンも有り得るのです。しっかりと将来を見通し、家族全体で総意を決めるべきですね。


テニスがなかったら、海外に行くこともきっとなかった。

ーー海外での活動の中で、何か心に残った出来事はありますか?

選手は世界ランキングを上げるために、1年のほとんどを海外で過ごしています。僕もさまざまな国に行きました。発展途上国に遠征した際のことです。練習時ボロボロになってしまったテニスボールを「もう使えないな」と思い、捨てようとしたとき、現地の子どもたちが集まってきて、皆ボールを欲しそうに僕を見つめていました。僕が一人の子どもにボールをあげると、その子は泣いて喜んで、数分後にはその子の家族や親戚が集まってきて、たくさんのフルーツなどと共に現地の感謝の歌など踊りを披露してくれました。そして後日、試合の時にはコートサイドで応援してくれました。スポーツができる当たり前の環境にいる僕たちは、とても恵まれている事に気づかされました。海外遠征では世界各国での観光ではいけないような所にも行くことがあります。そこで感じ、学んだことは僕にとって、「テニスがあったから」知ることができたこと。海外での経験は、僕の人生の財産です。

ーー海外では英語会話が常ですか?

そうですね。語学ができないと、語学のできるガイドやコーチに引率してもらわなければならなくなるので、経費もかさみます。数年前に海外のアカデミーを拠点に活動を始めた時、語学がまったくできなかったんです。しかしそれだと、ミーティングでも発言できないですし、ジュニアともコミュニケーションもできません。国内で勉強しているのとは違い生きた会話を勉強することになるので、わからなくても恥ずかしがらず会話しながら勉強してました。比較的楽しく英語の習得に取り組めたと思います。


ーー笹原選手は、これからの人生設計をどう考えていますか?

苦しい事もたくさんありますが、日常では味わえないたくさんの経験、遠征を通して出会えたたくさんの人たち、これすべてが今後の将来の道標になってくれると思います。まだまだ自分を磨き、より沢山の経験を積み、自分が納得するまで走り続けたいと思います!

 プロとして生きていくということは簡単なことではない。しかし、笹原選手の表情に迷いはない。それは「テニスが好きだから」。自分の得意なことで稼ぎ、その経験を糧に生きていく彼の背中は、強く広い。

(取材と文・ミクニシオリ)