日本人初の世界王者 浜崎朱加【ジョシカク美女図鑑 第9回】

「本当に強いのはどっちだ?」9・30「RIZIN.13」で黒部三奈と対戦
 女子格闘家の素顔に迫るインタビュー企画「ジョシカク美女図鑑」。第9回は「RIZIN.13」(9月30日、埼玉・さいたまスーパーアリーナ)に出場する浜崎朱加。

 浜崎は元Invicta FC世界アトム級王者。日本の女子選手で唯一世界を知る女だ。今年5月にRIZINに初参戦を果たし、今大会ではDEEP JEWELS アトム級王者の黒部三奈と対戦。元世界王者と現在、日本で一番強いと言っても過言ではない2人のシビアな対決となる。
(撮影・蔦野裕)
5月の試合は「“早く決めよう”と思いすぎてちょっと空回り。それも含めて勉強になった」

 5月の福岡大会ではアリーシャ・ガルシアと対戦。Invictaでの最後の試合から、1年2カ月ぶりの試合で勝利を収めたものの判定に持ち込まれ浜崎自身、納得のいかない結果となった。

「私の中では試合間隔が空いたことは全く気にはならなかったんですが、久しぶりの日本であの大勢の観客の前での試合ということで、緊張したというかあがってしまったところがありました。まあ、それは言い訳になっちゃうんですけど(笑)。体が“早く決めよう早く決めよう”と思いすぎてちょっと空回りしたところもあった。それも含めて勉強になった試合でした」

 Invictaで試合をしていた中で一番大きな会場はどれくらいの規模?

「万単位ではなかったですね。ベガスでも何千人規模でした」

 では前回のRIZINがプロ生活の中で一番大きい会場での試合。圧迫感のようなものはあった?

「それもそうなんですが、最近はずっと知り合いのいないところで試合をしてきたので、友達が見に来てくれたり、前回は母親も見に来てくれていて、そういった違う緊張がありました」

 そして結果は判定勝ち。この間、どういう心持ちで過ごしていた?

「悔しい気持ちもありましたが、かなりいい経験になりました。それを踏まえて、この数カ月でまた強くなれたのではないかと思うので、そこはプラスに考えています」

 あまりくよくよしない?

「しないです。良くないことなんですが、すぐ忘れちゃう(笑)。ポジティブなタイプだと思います」

 それは格闘技を始める前から? 持って生まれたもの?

「多分もともとの性格です(笑)。忘れるのは良くないかなとは思うんですけど、すごく悔しいことは忘れないです。だからこの間の試合もそうですが、今までもそういう経験は忘れてはいないです」

 今回、黒部戦が決まった時はどう思った?

「今、日本で一番強い選手だと思っているのでテンションが上がったというか、うれしい気持ちになりました。強い選手とやらせてもらえるということは私自身も評価されていることだと思うので」

 黒部選手の印象は?

「気持ちがすごく強い選手。あとは、しつこいというか粘り強い、正直やりにくいと思います」

 Invictaを離れ、日本に戻った理由は?

「アメリカにもまだまだ強い選手がいるので“やり切った”というわけではないんですが、世界チャンピオンになってから2回防衛をして、“役割は果たした”という気持ちや集大成として日本で試合をしていろいろな人に見てもらいたいという気持ちもありました。なので、契約もしっかり終えたうえで、やっと帰って来ました(笑)」

 集大成というと、現在36歳だが現役生活をいつまで続けるといったことを考え始めている?

「いつまでやろうということは全然考えていません。日本でまた格闘技が盛り上がってきた中で、女子も盛り上がっている。その中で、世界チャンピオンになったのは私だけなので、世界の頂点を経験した者の試合を見せられるのは私しかいないんじゃないかという気持ちもあって、RIZINの舞台に出させてもらうことにしました」
5月の福岡大会ではアリーシャ・ガルシアを仕留め切れず
女子にも総合格闘技があることを東京に来て初めて知る

 柔道出身。そもそもなぜ柔道を?

「ちゃんと始めたのは高校からなんですけど…。“柔道をやるなら推薦で高校に入れてくれる”と言われたんです(笑)」

 中学での実績は?

「全然なかったです。週に1~2回といった感じでちょっとしかやっていなかった。その柔道の少年団の先生と高校の柔道部の先生が知り合いで、私、結構、素行が悪いじゃないですけど(笑)、悪かったというか、やんちゃだったんです(笑)。それで先生同士で“やんちゃな奴がいるからちょっと面倒見てやってくれないか” “柔道やるなら推薦で入れてやる”みたいな感じになったらしく(笑)、高校で柔道をやることになりました」

 それで高校でグンと伸びた?

「そうですね。寮生活をしながら、柔道の練習に打ち込むという環境になってからは、真面目にやるようになりましたし」

 やんちゃって、どれくらい?

「不良ではないですよ、タバコも吸ったことはないし(笑)。柔道をさぼって体育館の屋上でお菓子を食べていたりとか、そういう可愛い感じです(笑)。そんなに悪くはないです。田舎の子供って感じです」

 そして柔道から総合格闘技へ。

「東京には就職で来たんですが、就職していたスポーツジムに、富田里奈という選手が通ってきていて、彼女に“総合格闘技をやっている”と言われて“女子にも総合格闘技をやっている人がいる”ということを知ったんです。そこで“1回体験に来なよ”って言われて、今所属しているAACCに来たのがきっかけですね」

 それまで女子格闘技の存在を知らなかった?

「はい。そんなことも知らないで、東京に来ました。知っていたらすぐにやっていたと思います。ブランクが2~3年あって、今から考えるとちょっともったいなかったなって思います」

 現在、女子格闘技が盛り上がっている。この状況についてはどう思う?

「うれしいです。うれしいというか、こういう時代が来るとは誰も思っていなかった。藤井惠さんなんかの現役時代は日本では女子格闘技はそんなに盛り上がっていなかった。こんなに盛り上がる時代が来たのは本当にうれしいことだしありがたいです。UFCもそうですし、世界中で盛り上がっているじゃないですか。日本の女子格闘技の盛り上がりについては、RIZINが始まってからずっと出ているRENA選手、彼女が作ってきたものだと思うんです。だから本当に感謝しています」

 RIZINではそのRENAに2連勝した浅倉カンナがアトム級のトップに立つ。今回の黒部戦で勝ったら大晦日に浅倉との対戦という可能性も出てくる。

「そうですね。今回しっかり勝って、同じ階級で次の相手といえばその選手かなとは思っています。やるとなったらやはり大晦日かなとも思っているので、もう準備はできています」

 普段はクリニックに務めているとか。

「Invictaに参戦中の時から『さいとうクリニック』というところにお世話になっています。いろいろ配慮していただいていて、週4回の勤務で主にリハビリのお手伝いなどをしています」
8月24日に行われた会見での2人
「1回しかない人生なので、しっかりやり遂げたい」

 今後の目標はやはりRIZINでトップに立つこと?

「浅倉選手でなくても、準備された相手、誰とでも戦います。その過程でRIZINのベルトがついて来るとか、トップと言われるようになればうれしいですね」

 長いスパンでの目標は?

「昔からなんですが、先の目標は立てたことがないんです。Invictaでもベルトを獲ることを目標にしていたわけではなくて、準備された相手と戦ってしっかり勝っていったら、ベルトが獲れたという感じ。今もその意識は変わっていなくて、目の前の試合を一生懸命やるだけです」

 これからの人生設計なんかは考えていますか?

「いや~考えてないんですよね(笑)。どうしよう。本当に考えてないんですよ。でも格闘技は納得するところまではやりたいと思っています。そうすると、納得する日が来るのか、という不安もあるんですけど(笑)」

 他の選手なら“ここで頑張って海外進出”といった目標もあるが、そこは達成してしまっている。

「そうなんです。なので、まずは日本を盛り上げたいという思いがあって。“いや十分盛り上がっているよ”って言われたら困っちゃうんですけど(笑)。でも私にしかできない盛り上げ方もあると思うんです。男女関係なく一人の選手として“あの選手すごいな”って思われたいし、私を見て格闘技を始める子が出てきてくれればうれしいですよね」

 師匠である藤井惠さんは結婚して引退して自分の地元に近い広島で旦那さんである佐々木信治選手とジムをやっています。ああいう生き方は参考になるのでは?

「藤井さんは現役最後の試合は納得する終わり方ではなかったもしれませんが、今すごく幸せそうじゃないですか。私はそういう藤井さんを見ているのが幸せです(笑)。私も結婚はもちろんしたいですし、子供も欲しいですけど、それはまだ先のことだと思っています」

 まだまだ戦っていく。

「今はまだ自分が一番になっちゃっているので(笑)。やはり1回しかない人生なので、しっかりやり遂げたいなって思います。いつか自分が一番じゃなくなる時が来たら、その時がそういう時なんだと思います」

 その藤井さんはRIZINで女子格闘技が盛り上がってきたときも「本当に一番強い選手は出てきていない」と言っていた。それは多分、浜崎選手や黒部選手を念頭に置いてのこと。RIZIN初戦の前も「世界王者の試合を見せられるのは朱加だけ」といったことも言っていた。今回の対戦は王者同士の「責任」のある試合でもある。

「そういう自覚はあります。世界一になった選手と日本で今、現役で一番強い選手が戦って、どっちが強いのだろうっていうことを楽しみに来てくれるお客さんも多いと思うんです。なので、そういうレベルの試合を見せる義務があると思っていますし、黒部さんとならそういう試合ができると思っています。ただ、今回は藤井さんが会場に来られないみたいなんです。ちょっとショックではありますすけど、いい報告ができるように頑張りたいなと思っています」

 藤井さんとは今でも深い絆で結ばれている?

「本当はセコンドについてほしいくらいなんですけど、チームが違うので。アメリカでもずっとセコンドについていただいたんですが、落ち着くし、心強いんです」

 黒部戦については黒部選手の彼氏ネタが盛り上がっている。浜崎選手も会見では「今回は私が勝つので、自分で見つけてください」と乗っかって、より一層盛り上がった。

「面白いかなと思って乗っかっちゃっていますけど、正直どうでもいいんですよ(笑)。黒部さんも多分同じように思っていると思うんですよ。あれ、完全にネタにしていますよね(笑)。会見なんかでも私が真面目に喋っても黒部さんが面白く返してくる。そこで私が真面目に返すと、“あれ?”ってなっちゃうんですよ。こっちが滑ったみたいになるじゃないですか(笑)。それだけは嫌なんで、そうなると乗っかるしかないんですよ、ホントに。黒部さんのあの面白さで返すやつはずるいですよね」

 黒部選手もインタビューで「盛り上がったから、あれはあれでおいしい」って言っています。

「やっぱりそうですよね(笑)。ずるいわ、黒部さん」

 浜崎選手については同じジョシカクの選手が口をそろえて「イケメン」と言っています。

「髪を伸ばしていた時は間違えられなかったのに、切ったその日に男に間違えられましたから(笑)。やっぱり髪型の印象って大きいんだなって思います。今もすごく間違えられるんです。会見の時の写真とか見ても、これ男ですよね(笑)」

 前回大会はコーンロウ。

「今回はできないんでこのままです。面倒くさいんで。基本的に面倒くさがり屋なんです(笑)。減量なんかで疲れているのに編み込みに行くのってすごいストレスだし、暑くてうざかったんで切っちゃいました」



 現在、家では猫を3匹飼っているという浜崎。「触るだけで癒される」と猫にぞっこん? 猫といえばRIZIN参戦中のストラッサー起一が試合後のマイクアピールで捨て猫について語る場面はもうおなじみなのだが、浜崎はそのストラッサーのブログを電車の中で読み、「うちの猫と重ねてしまって泣きそうになった」と言う。試合のことを語る時は鋭い眼差しを見せ、黒部の彼氏ネタの時は頬を緩ませ大笑いした浜崎。でもそのブログの話になった時はうっすらと目が潤んでいたように見えたのは気のせいか…。

 今回の「RIZIN.13」はメーンで行われる那須川天心vs堀口恭司戦が大きな話題を呼び、チケットが入手困難な状況になっている。多くのファンはメーンを目的に会場に足を運ぶのかもしれないが、この浜崎vs黒部戦は帰り道のファンに「浜崎vs黒部戦も良かった」と言わせる試合になるに違いない。(本紙・本吉英人)