【徳井健太の菩薩目線】第4回 好きな人の本性を暴きたいなら、雨の日のディズニーランドに行けばいい

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第4回目は、行列から学ぶ人間の本能について梵鐘をつき鳴らす――。

 行列が苦手な人っていると思うんだけど、俺は行列から学ぶことがたくさんあると思うの。「並んでまで食べたいものなんてない」って人の気持ちも分かるんだけど、“並んでまで食べたいものを食べる”からこそ、人間の本質が見えてくる。

 眠たくなったからすぐ寝る、腹が減ったから何でも食べる、ヤリたくなったからどんな女でもいいって発想は動物と一緒。綾部(ピース)なんかは、「腹が減ったらコンビニのパンでいい」なんて話していたけど、欲望のままに、本能丸出し。あいつらしいと言えば、あいつらしいけどさ。

 たしかに、その場しのぎの発想って効率的ではあるよ。でも、見方を変えたら、“何でもいい”“こだわりがない”わけでちょっと下品じゃない? 俺は腹が減ったら、「自分は何を食べたいのか」を考え、「周辺で一二を争う美味しいもの」を探す。結果、並ぶことになっても、自分の頭で考えた“答え”なんだから待つしかない。この一連の行動って人間でしかできないことでしょ。並んでまで自分が食べたいものを食べることは、叢林(そうりん)に入るような学びがあると思うけどね。

 だって、みんな腹が減っている中で並んでいるんだよ? だいたいイライラしている。すげぇピリピリしてんだよね。それが分かっているのに、並び続けるって食の修行僧だよ。そこまでして食べたいものがあるんだから、純粋にすげぇなって思うの。 もちろんそんなことを考えずに「話題だから」って理由だけで並ぶ、何も考えていないバカもたくさんいる。その一方で、行列に並んでいる人の中には、考えを持って並んで、耐えがたきを耐え、忍び難きを忍びながらじっと待っている人もいるってことを、忘れないでほしいなぁ。

 美術館や博物館などを除いて、欧米ではほとんど行列文化がないのは、そもそも「並んでまで食べたい美味しいものが少ない」ってこともあると思うの。あと、彼らは欲に忠実だろうから、“綾部スタイル”でいいんだろうね。そういう意味では、綾部がNYに行ったのは間違っていないと思う。綾部に、仏教の国は全然似合わないよね。



夢の国だからこそ現実が浮き彫りになるんだよね

 行列って面白くて、人間性が暴かれるんだよね。例えば、ディズニーランド。彼氏や彼女ができて、「本当にこの人は信頼できるのかな」「この人と幸せになれるのかな」って悩んでいるとしたら、雨の日のディズニーランドに行くのが、一番手っ取り早い“踏み絵”になる。

 雨の日のディズニーランドに行って楽しめたら、その人とは生涯のパートナーになれる可能性が高い。雨の中、人気アトラクションの前で不愉快になったり、会話ゼロのような状況にならずに60分も待つことができたら、人気アトラクションにたどり着くどころか、墓場に行くまで上手くやっていけると思う。

 マイケル富岡さんは、「カップルで登山をするとつらくて大変だから、お互いの人間性も分かるし、どれくらい配慮や助け合いの気持ちがあるか分かる」って話をしていたんだけど、二人で登山に行くこと自体、ハードルが高い。興味もないのに、自分たちの相性を知るためだけに、登山なんか行きたくないじゃない。でも、雨の日のディズニーランドだったら比較的誰でもできるでしょ? 約7000円の一日パスポートが、生涯の伴侶か否かのリトマス試験紙になるんだからリーズナブルだと思うよ。

 夢も希望もない? バカ言ってんじゃないよ。人間性を知るときに、夢や希望はいらないんだよ。その人が信頼できて、きちんと金を稼いでこれるのかっていう、超現実的な話なんだから、夢の国だからこそ浮き彫りになる現実を見定めてほしいよね。どうせ夢から覚めるんだったら、早い方がいいじゃん。

 俺は手前味噌だけど、遊園地にカミさんと子どもと並んでいるときは、基本的にスマホはいじらないで子どもと話すようにしているの。そんなときまで携帯をいじり始めたら、もう人間じゃなくて機械だからね。「今日は混んでるね」「この後は何に乗りたい?」なんて他愛もない会話しかしてないけど、無駄な時間でも人間らしい振る舞いをしていたいよね。子どもがぐずり出したら、「みんな並んでいるんだから文句を言っちゃだめだよ」とか教えてあげてさ。結果として、親と子という関係性を考えれば無駄な時間が無駄じゃなくなるもんだよ。

 そういった一見無駄な時間を経て、ごちそうやゴールが眼前に迫る。そのワクワク感っていったらないよねぇ。喜びもひとしおだよ。傍から見たら、「なんて無駄の多い作業してるんだ」って見えるかもしれないけど、俺はこの行動は人間だけに許された特権だと思っているの。世の中には、並ばないと分からないことが、たくさんあるんだよねぇ。

◆プロフィール徳井健太(とくい・けんた)…1980年北海道生まれ。2000年、東京NSC5期生同期・吉村崇と平成ノブシコブシを結成。感情の起伏が少なく、理解不能な言動が多いことから“サイコ”の異名を持つが、既婚者で2児の父でもある。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。



※「徳井健太の菩薩目線」は毎月10、20、30日に更新予定です!