海外の映画祭で、作品賞・主演男優賞を受賞 ワイン造りに賭けた青春。渡辺大『ウスケボーイズ』

 日本でワイン造りに挑戦する青年たちの姿を描いた『ウスケボーイズ』が公開中。主演の渡辺大は、日本の地では困難とされたぶどう栽培に挑戦し、世界に通用する日本ワインを造ろうとする実直な青年・岡村を演じた。揺るぎない信念と情熱を持ちながらも、寡黙にただひたすらワイン造りに没頭する岡村を好演。
撮影・荒木理臣
 実話を元に描かれている同作、渡辺は実在の人物を演じた。

「歴史上の人物ではなく実在されている方なので、あまり逸脱しないようになぞらえようとは思っていました。原作は河合香織さんの『ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち』という本なのですが、その中の岡村像というのも、ご本人に近いと感じましたので、そのイメージも参考にさせていただきながら、なぞっていこうと。実際、撮影に入る前にご本人とお話をさせていただきましたし、その時の印象も合わせて役作りをしました。ご本人は非常に寡黙な方なんですが、内に秘めた闘志がある方だなと。分かりすく外に出るエネルギーではなく、見えにくいのですが、粘り強く熱意をもって仕事に打ち込む。それはぶどうの栽培やワインを造る上で、非常に大切なもので、その粘りと腰をすえて自然と向き合う姿などは大切にしたいなと。変にドラマチックにするのではなく、淡々と取り組む姿勢を表現したいと思い演じていました」


「ウスケボーイズ」というのは?

「日本ワイン界の巨匠で、『桔梗ヶ原メルロー』を生んだ“麻井宇介”に感銘を受け、世界に通用するワイン造りを始めた青年たちの事です。もともとは、イタリアの有名なワインの産地バローロで採れるぶどうに感銘を受けた『バローロボーイズ』という人たちがいて、日本では宇介先生に感銘を受けたから『ウスケボーイズ』。ワイン造りって、ぶどうの栽培から始めると何年単位の仕事です。それが結果的にうまくできるか分からないですし、その間の運転資金もどんどん減っていく。岡村はほかの仲間たちに比べ、実家が農家とか、醸造所とかバックグラウンドがあるわけではないので、本当に一から情熱だけでやってきたんです。そんな岡村やウスケボーイズたちが、宇介先生の造ったワインを飲んで受けたショックが分からなかったので、撮影前に監督と飲ませていただいたんですよ。僕自身は、そんなにワインに詳しいわけではないのですが、そのワインを飲んだ瞬間にすごく衝撃を受けました。これまで、これを知らなかったのはもったいなかったなと素直に思ったので、ぜひこの作品を通して、日本のワインの素晴らしさを表現したいと、その時強く感じましたね」


 岡村にとって憧れであり師である宇介先生と、それを演じる橋爪功に共通すること。

「橋爪さんは、役者としても大先輩ですし、岡村にとって宇介先生はワイン業界の大先輩なので、関係性は非常に似ているなと思っていました。ワイナリーをやっている醸造家の方々はワインを使って、僕ら役者は自分の体を使って表現していくという作業がすごく似ています。ですからセリフで宇介先生が岡村にいっている事というのは、橋爪さんが僕に言っている事のように感じていました。みんな悩みながら、そして自問自答しながら生きている。それは人に話してもいいんだけど、答えを出すのは自分自身なので、結局は自問自答の世界に入っていくと思うんです。ワイン造りでも自然が答えてくれるわけでもないし、芝居でも自分の体が答えてくれるわけでもない。それは孤独な戦いなんですけど、そこで宇介先生や橋爪さんの何気ない一言が、ずしっと重く、ある時は何かを開かせるヒントになるというのが、非常に似通っている部分なのかなと思いました。例えば宇介先生が岡村に“教科書を破り捨てなさい”と言うんですけど、それもワイン造りと芝居に共通して言える事だと思います。自分が思っていることって必ずしも正解じゃないんです。自分がいいと思ったぶどうより、悪いと思ったぶどうのほうが、できのいいワインになる事もあるし、必ずしも自分がいいと思った事が、いい結果になるとは限らない。だから、常に“本当にこれでいいのか”と思いながら、自分のパーフェクトを探していかなければならない。多分、何年、何百年経っても、モノ作りにパーフェクト、100点満点はないでしょう。でもそれを追い求めて挑戦することの意義がそこにはあるんだと教えてもらったような気がします」

撮影・荒木理臣
 同作は『マドリード国際映画祭2018』で外国語映画部門最優秀作品賞と最優秀主演男優賞を、そして『アムステルダム国際フィルムメーカー映画祭2018』も外国語映画部門最優秀監督賞、最優秀主演男優賞を受賞するなど海外での評価も高い。

「僕自身は淡々と演じていて、“賞を獲るぞ!”と意気込んでいたわけではないのですが、まずは多くの人に、日本のワインの世界を見ていただけるのがすごく良かったなと。その中で今回のような賞がいただけたのは、何かごほうびをいただいたみたいで、うれしかったですね。役者の評価って難しいと思うのですが、それをちょっと分かりやすい形で、いただけたという感じです。しかし、自分がそんなに劇的に変わるかと言われればまったく変わらず、むしろ次の作品の役にどう向き合おうかと考えていたくらいです。ただ、自分が日本を代表できる作品を作れたということはうれしいですし、この機会に海外の人が日本のワインに興味を持っていただけたら、こんなにうれしい事はありません」


 今後役者として目指すものは。

「今回、日本のワインを海外に伝え、それを文化として定着できるような発信ができたと思います。そのように、作品を作り表現していく上で、人々に影響を与えるものを作り、発信していく楽しさも感じました。また、海外の映画祭に行って、いろいろなものを見てきて、今後は海外にも挑戦できればと。日本人として海外に行って、日本人とはどういうものかということを、何かしら見ている人に伝えられるような役者になりたいですね。もちろん海外だけではなく、日本でもさまざまな現場に呼んでいただけるように、これからも一つ一つの作品を丁寧に演じていきたいと思います」


『ウスケボーイズ』全国ロードショー中