元SKE48矢方美紀、乳がんセミナーで「1日1日を大切に生きる」

 がん検診の受診率向上等を目指す「がん対策推進企業アクション」主催の『乳がん検診最前線―乳がんは唯一、自分で見つけられるがんです―』が24日、東大病院で開催された。
 同セミナーには、東京大学医学部附属病院の放射線科准教授・中川恵一先生ほか、元SKE48メンバーで乳がんを経験した矢方美紀が登壇。乳がんの最新情報やセルフチェックの重要性を紹介した。
東京大学医学部附属病院の放射線科准教授・中川恵一先生
中川恵一先生(東京大学医学部附属病院の放射線科准教授)


 今は男性の3人に2人、女性の2人に1人ががんになる時代です。特に乳がんは、女性の11人に1人が罹患すると言われています。
 乳がんの原因の一つは女性ホルモン。現代は少子化のため、女性ホルモンが分泌する期間が長く、そのため乳がんが増えています。都道府県の中で一番乳がんの罹患率が高いのは東京ですが、それは出生率が低いためです。
 
 乳がんを予防するには、がんにならない生活習慣が大切です。煙草、お酒、肥満は乳がんのリスクを高めますが、特に中高年になってからの肥満には気を付けていただきたいと思います。もちろん、ヘビースモーカーで大酒飲みなのにがんにならない人もいます。しかし逆もまたしかりで、煙草もお酒もやらないのにがんになる人も大勢いる。ある意味、がんになるかならないかは“運”です。しかし、できる事があるならやった方がいいのではないでしょうか。
 
 乳がんで死なないためには、閉経後の肥満を避けるなどの予防ほか、自己触診とマンモグラフィーによる検診が有効です。実は乳がんが発見される経緯の約56%が自己検診。乳がんは比較的進行が遅い病気ですが、たまにものすごく進行のスピードが速いものもある。そういうタイプの乳がんになると、1年に1度、2年に1度のマンモグラフィー検診では追いつかない事もあります。しかし、毎日自己検診で自分の胸を触っていたら、感覚で小さな変化にも気づくことができる。自己検診をすることは、海外では常識ですが、日本では驚くほど浸透していません。

 乳がんは唯一自分で見つけることができるがんです。肺や胃、大腸は自分で触れないけど、胸なら簡単に触れます。がん細胞は1日に数千、数万できているのですが、それを免疫細胞が殺しているため、進行がんにはなりません。しかし、その免疫の攻撃をかいくぐったがん細胞が15~20年かけて、診断が可能な1㎝のものに成長します。乳がんは1㎝~2㎝が早期がんですが、1㎝から2㎝になるまではたった1~2年しかかからない。ですから、その間に発見してあげる事が重要なんです。

 早期がんは何の症状もありませんが、自己触診で早期に見つける事ができたら、5年生存率は90%以上という統計が出ています。がんと診断されると1年以内の自殺率は20倍に跳ね上がるとも言われるほど、がん=死のイメージは強い。しかし、早期発見が可能で、早期発見できれば命が助かるのですから、合理的な範囲でやるべき事は全部やるべきだと私は思います。

 がん治療は「敗者復活戦のない一発勝負」。最初の治療がうまくいかなかったら再発や転移を防ぐのは非常に難しい。数年で命を落としてしまう可能性もあります。そのためには早期発見。そして早期発見のためには、自己触診と40歳以上の方はマンモグラフィーによる検診を必ず行っていただきたいと思います。




矢方美紀
矢方美紀(タレント、元SKE48)

 私は17歳から24歳までSKE48というグループでアイドルをしていました。48グループはアイドルですが、グラビアのお仕事も多く、私もバストアップのためにバストマッサージはしていました。ある時、テレビで乳がんの事をやっていて、セルフチェックができるという事を知りました。すぐにインターネットでやり方を調べて、初めてやってみた時に、左胸の上にしこりがあったんです。硬いしこりでしたが痛くもなく、そのままにしておこうと思ったのですが、40代の女性の方に相談してみたところ、次の日にでも病院に行くように言われました。その言葉に従いすぐに病院に行ったところ、乳がんと宣告されました。

 病名はもちろん知っていましたが、手術や治療の事を何も知らないという事に、その時初めて気づきました。担当のお医者さんからは全摘を勧められましたが、25歳と若かったですし、部分摘出で乳房を温存しようと考えていました。しかし、いろいろな方の意見を聞き、命がある方が大事だと思い、全摘する決意をしました。全摘しても再建する事もできますし、何より自分の人生はこれからの方が長い。人生をもっともっと楽しんで生きたい。やりたい事だっていっぱいあります。とにかく私はこの病気を早く治したいという思いしかありませんでした。今は手術と抗がん剤が終わり、放射線治療とホルモン治療に入りました。今の心境は胸がなくなったというショックより、再発の不安の方が大きいというのが本音です。ホルモン治療はあと10年続きますが、とにかく再発しない事を願っています。
 
 人生は教科書通り進むわけではない。今後何が起こるのか分からない事を不安がるのではなく、今を生きる方がいい。髪の毛や眉毛、まつ毛の脱毛も、指毛くらい生えてきましたし(笑)。病気になった当初は、自分は死ぬのかなと思いましたが、早期発見、早期治療で治る事を知りました。私は常に病気をメインに考えて毎日生活しているわけではありません。髪形をどうしようとか、今日はどの洋服を着ようとか、明日朝早いのに睡眠時間が足りないなとか、普通の悩みの方が大きいです。病気だから毎日悲しいとか、不安を抱えているという事はありません。楽しい事もたくさんありますし、同じ病気で前向きに生きている人もたくさんいる。人生には予期せぬ出来事が起きるかも知れない。でも毎日を楽しく過ごせれば。そしてそういう事を伝えていけたらと思っています。

 乳がんは早期に発見して治療したら仕事もできるし、恋愛もできます。若い人がそういう事を知ってくれたらと思いますし、私自身1年1年、1日1日を大切に過ごしていきたいと思って治療を頑張っています。