【徳井健太の菩薩目線】第9回 奢られるのを前提にしているコンパって、八百長みたいなもんだと思いません!?

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第9回目は、コンパと酒の席について梵鐘をつき鳴らす――。

 俺は“赤ちょうちん”みたいな居酒屋で飲むことが好きなんだけど、最近はいろいろなタイプの酒の席あるよね。例えば、「相席居酒屋」のような出会いを前提とした飲み屋。知らない女の子にタダで飯をおごるって発想がスゴい。俺からしたら、「知らない人が道に落としたものを食べるんだ?」って感じ。何というか、“お恵み”や“施し”の進化系。お恵み2.0だよね。

 あと、「ギャラ飲み」も香ばしい。参加した女性に対して、男性から謝礼が支払われる飲み会を一般的にギャラ飲みって言うわけだけど、わざわざ命名する必要なんかないじゃない? 今まで不透明だったものを、あえて公然化することで透明性を演出するんだから、人間ってのは“考える葦”だよなぁ。

 援助交際をパパ活と称することで、セーフ感を演出する構造に似てると思うんだけど、新しい言葉で上書きされちゃうと、もう何が何だか分からない。「彼女がやっているのは、ブラックなパパ活。私がやっているのは、クリーンな援交!」とか言われたら禅問答じゃん。

 酒の席もどんどん多様化しているってことなんだろうけど、よほどのナンパ師や、とにかく男に奢ってほしいお恵み女子じゃない限り、酒の席が多様化していることについていくだけでも大変だよ。

 そもそもコンパのイメージって、男がお金を払う、または多めに負担するってのが一般的だと思うけど、本当にそうなの? って思うの。というのも、俺が20代の若手芸人だった頃、何回かコンパに行ったけど、「女の子もお金を支払う」ことが前提だった。まぁ、若手芸人だからお金を持っていないってことも大きな要因だったことに違いはないけどさ。

 それでも毎日のようにコンパを開催している若手芸人もいて、「お金の問題じゃないんだな」って思うところがあった。男は、女性に奢ればいいと思っている節があるけど、そうとは限らない。そんな経験もあって、俺は女性に奢り続けるって発想がないんだよなぁ。そもそも奢られ続けることを良しとしている女性だよ。よくそんな土俵に、男も上がろうとするよね。絶対にこっちが奢られるように仕組まれてるんだから、八百長ありきなわけじゃん。「立ち合いは強く当たって、あとは流れで(会計を)お願いします」ってことだよ。八百長だったら、逆にハードルが高くなると思うんだけどなぁ。


俺は奢るのが当たり前とは思わないんだよなぁ

 そんなこともあって、お金を手に入れてそこそこ成功者になった男が、安直に金で女性を誘う……というか、解決するみたい言動は見たくないんだよね。気に入らなかったら、「はいはい、タクシー代払うから帰ってよ」って言えば、たしかに最短距離で問題は解決する。でも、それで帰るような女性って、結局、そういう土俵に上がっちゃうような人じゃん。同時に、男もいつの間にかそういう土俵に慣れてしまっているってことになりかねない。そこそこの権力者や金持ちだからこそ、「お前もお金を払え」って言ってほしいんだよね。

 まぁ、そんな飲み会だったら、女性は来たがらないんだろうけどさ。俺としては、割り勘前提、その代り言いたいことを言い合う“ガチ飲みコンパ”の新団体があってもいいと思うんだけど。飲みの場も多様化しているんだから、そういうコンパが台頭したっていいじゃんね。

 セックスフレンドを作るのだって、SNSで募集して、ダイレクトメッセージが届くって時代だよ。なんでもアリって感じだよね。知らない人同士でも、SNSで知り合って、コンタクトを取りやすい時代だから、すべてが“合理的”かつ“お気軽化”するんだろうなぁ。
 俺としては、便利な部分と人間的な部分は切り離して考えるべきだと思っているけど、便利な部分に浸食されている人が多いように感じる。例えば、SNSで「今日誰か飲みに行きませんか?」って声掛けするよりも、気になった飲み屋やバーに一人で飛び込んだほうが、いろいろと発見があると思うんだけど。 

 SNSで一声かけて仲間? よく分からないけど、そんなような人を誘ってからアタックするって、先進的なように見えて、超保守的じゃん。酒の席って、人間的な部分が浮き彫りになる場なんだから、便利な部分に頼ったところで意味なんかないと思うよ、最終的には。

 人それぞれだし、時代の流れもあるからね、強制はしません。12月は、いたるところで宴席が開かれる季節ですから、皆さんが楽しいお酒を飲んでくれれば、俺はハッピーですよ。

◆プロフィール

とくい・けんた 1980年北海道生まれ。2000年、東京NSC5期生同期・吉村崇と平成ノブシコブシを結成。感情の起伏が少なく、理解不能な言動が多いことから“サイコ”の異名を持つが、既婚者で2児の父でもある。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。

※【徳井健太の菩薩目線】は毎月10・20・30日更新です。