「セックスはコミュニケーション」! 伝説のAV女優・長谷川瞳が伝えるセックスの正しいこと、正しくないこと

 長谷川瞳。その名を聞くだけで、「お世話になりました」と回想する男子諸君も多いことだろう。2001年にAV女優としてデビューするや、6作連続TSUTAYAレンタルランキング1位を獲得。「レンタルの女王」として一時代を築いた後、ソープ嬢へと転身――これまでの体験人数は6000を超える。その彼女が、KADOKAWAから『ヒアリングセックス』を上梓した。

「AV女優として、ソープ嬢としてさまざまなセックスを経験してきた立場から、本当に気持ちいいセックスをするため必要なことを伝えたかった」

“セックスのプロフェッショナル”と呼ぶに相応しい長谷川さんだからこそ、アダルトビデオの幻想や奉仕する上で大切なことが分かる。「セックスはコミュニケーションです」。その真意を伺った。

撮影・上岸卓史



――これまで男性視点で「AVは幻想である」、「セックスの最中に女性に対して行うべきケア」などを目にする機会はありましたが、『ヒアリングセックス』では女性視点で丁寧に説明してあります。加えて、女性である長谷川さんが同性に対して、アドバイスや鋭い指摘をしている。それがとても新鮮でした。

どうしてもセックスって、男性が努力するものというイメージが強いですよね。 でも、セックスって二人でする行為。女性も一緒になってコミュニケーションを交わしながらセックスをしなければ、良いセックスはできません。私は、今現在もソープ嬢として男性に奉仕をしているので、些細なことを含めて、セックスをする上で大切なことを女性にも伝えたかったんですね。

――仰るように世の男性は、「セックスは男性がリードして頑張るもの」という認識が強い。長谷川さんの本を読んで、 勇気がわく男性は多いと思います。

アハハハハ。執筆している最中に、されるがままの女性や、マグロの女性が少なくないというお話を聞いて、それは違うよなぁって。女性も男性が喜ぶことをしてあげたほうが、よりお互いを信頼し合えるセックスにつながる。同性の方から本の感想として、好意的な意見をいただくことが多いのですが、とてもうれしいし、励みになります。もっと伝えていいんだ! って。

――執筆の背景には、「贖罪を果たすため」という気持ちもあったとか?

いまだに多くの男性が、アダルトビデオの世界を盲信している節がありますよね。「女性は潮を吹いたほうが気持ちいい」「体位をたくさん変えた方がいい」などなど。はっきり言いますが、それは幻想です(苦笑)。私もAV女優として、幻想に加担した一人。ですから、本当にセックスに必要なことや気持ちの良いことを伝えなければいけないって、昔から思っていたんですね。

――本を読むと目からうろこの“気づき”がたくさんありますが、例えば「挿入時間は5分でもいい」などは衝撃的でした。女性である長谷川さんが言うからこそ胸に刺さる。

好きな人であれば時間なんて関係ないんです。「長く挿入してピストン運動をしなければいけない」というのも、AVが作り出したイメージ。AVってプロの男優さんとプロの女優が作り出しているもの。そのプロの世界を、普通の人ができるわけがない(笑)。それに、風俗の世界では10分持つ人は遅漏として認識されています。ですから5分でイってしまっても、ぜんぜん男性は悪くないんですよ。

撮影・上岸卓史



――ホント、勉強になります(笑)。「オーガズムをセックスのゴールにしない」などもそうですが、言われないと分からないことがたくさんあるんですよね。

結果としてオーガズムがあるわけで、オーガズムを得るためにパートナーとセックスをするのは、ちょっと違うと思うんです。そもそもオーガズムを目的にすると、イケなかったことに対して男女ともに負い目を感じてしまう。すると、不信感や自己嫌悪につながり、負の連鎖が始まる。イケなくてもお互いに安心感や安らぎが得られればいいんです。きちんとコミュニケーションがあれば険悪な事態には陥らない。

――日常のコミュニケーションが地続きでセックスにつながっている、と。パートナーとの信頼関係の醸成をはかるために、書籍の中にはオリジナルの「ヒアリングセックスシート」もあります。

私は、“セックスとはコミュニケーションそのもの”だと思うんです。きちんと気持ちを伝え合わなければ、モヤモヤしたセックスを繰り返すだけ。イヤなことはイヤと言う。気持ち良くないことは気持ち良くないと言う。そのためにも、それを伝えることができる関係性を築いていかなければいけませんよね。まずはパートナーと一緒に、ヒアリングセックスシートをチェックしてくれたら。私の本が、コミュニケーション作りのお役に立てたらうれしいです。

――何事もそうですが、コミュニケーションがおろそかな人って、テクニックに走りがちというか。何よりも気持ちが大事である、と。

その通り! 同時に、女性の中には、「自分の体に自信がない」という理由からセックスに憶病になる人もいます。パートナーがきちんと気持ちをもって接することが大事。体の相性って、どんどん馴染んでいくものなんですよ。ですから、好きな相手とずっとセックスをしている人こそが、私は一番セックスの上手な人だと思います。逆に、“〇〇人斬り”のように人数=床上手だと思っている方は危険。だって、本当に上手だったら、「また会いたい」って連絡が来るはずじゃないですか!?(笑) 馴染んでいけないセックスばかりしていると、本当に好きな人が現れたときに、気持ちの伝わるセックスができなくなりますよ。

撮影・上岸卓史


――折を見て、声に出して伝えたい日本語です(笑)。セックスに自信が持てない人や億劫になっている人にアドバイスを送るとしたら、どんなことでしょうか?

パートナーをギュッと抱きしめる機会を持つこと。相手をギュッとするだけで、コミュニケーションは全然変わってきます。肌の温もりや温度を感じる……そういう機会を大切にしてほしいですね。 たしかに、テクニカルなことや、雰囲気を変えてみるといったことも大事です。でも、中身がないと口パクと一緒で、パフォーマンスとしては成立しても、本質的な部分で揺らいでしまう。最初っからお互いがめちゃくちゃ気持ちの良いセックスなんてできません。セックスは、二人で完成させていくもの。そのためにもコミュニケーションが欠かせません。『ヒアリングセックス』がきっかけで、パートナーとのコミュニケーションやセックスがポジティブなものへと変化してくれたら最高ですね。

(取材・文 我妻弘崇)

『ヒアリングセックス』(KADOKAWA) 長谷川 瞳

パートナーと読む、まったく新しいセックスハウツー本。元AV女優にして現役ソープ嬢、経験人数6000人超の著者が語る、本当に「間違いのない」やり方―。セックスは、コミュニケーションがすべてです。

■刊行記念イベント『本当に気持ちの良いセックスとAVの幻想』開催
12月16日(日)に、大阪・Loft PlusOne Westでイベント開催。
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/west/102809