小池百合子東京都知事「都市ボランティアの皆さんには“東京の顔”として活躍してほしい」

SPECIAL INTERVIEW 東京から日本を元気に【JAPAN MOVE UP! TEAM2020】
 2019年を迎え「2020年東京オリンピック・パラリンピック」まであと1年。いよいよ目前に迫る東京大会に向けた準備の手ごたえと、スポーツだけではない文化の祭典としての成功を期し東京都が行う取り組みについて、小池百合子東京都知事に語ってもらった(聞き手・一木広治)。

小池百合子東京都知事(撮影・蔦野裕)

都市ボランティアの皆さんには“東京の顔”として活躍してほしい

——残り1年となった東京オリンピック・パラリンピック開催に向けての、準備の手ごたえや今後の課題についてお聞かせください。

「2月11日の時点であと529日ということになりますが、大会の準備のほうは、IOCの準備調査でも大変順調だという評価を頂いています。会場の準備というハードの面も順調に進んでいますが、これからはますます機運醸成が必須となっていくと思います。今年はラグビーワールドカップ2019のような大きな国際大会も行われますし、この盛り上がりを東京2020大会につなげていけるよう、さらに工夫を重ねていきたいと思っています。」

——都市ボランティアには目標を上回る応募がありましたね。

「都市ボランティアの皆さんには、大会ボランティアとは別に、基本的に駅や観光名所といった競技会場の外で、東京の顔になっていただくという役割を担っていただきます。参加者のほとんどが東京在住の方ですが、東京の顔となるべく、さまざまなオリエンテーションを受けていただくことになっています。海外から来た方を最初に案内することも多いと思いますので、そこで東京の魅力を強く印象付けられるくらい、すばらしいおもてなしを期待したいですね」

——3月3日には東京マラソン2019が開催されます。ここでオリンピック男子マラソンの選考会も兼ねていることもあり注目が集まっています。

「ルートやゴール地点を変更して3回目の開催になります。最終地点は皇居と東京駅の間にある行幸通りという、とてもフォトジェニックな場所。ランナーが最後、この場所にゴールするシーンは本当に印象深いものです。また、周辺地域には日本を代表する企業や施設も集積していますし、東京オリンピック・パラリンピックへ向けたさまざまなイベントも行われています。東京マラソンもすっかり定着し、今では海外からも非常に多くの参加があります。実は、都市ボランティアのコアになっているのは東京マラソンでボランティアをされてきた方々なんです。都市ボランティアでは、東京マラソンでのボランティア経験を生かして、さまざまな場所でリーダー的役割を発揮していただけると思いますので、そういう意味でも頼もしく思っています」

さまざまな分野で“ゼロエミッション”を進めていくことが重要

——スポーツといえば「東京都知事杯 eスポーツ競技大会(仮称)」の開催を発表されました。

「以前から日本はゲーム大国でもありますから、東京でeスポーツの大会を行うというのは意義のあることだと思い、予算に入れさせていただいています。昨年のアジア大会でも公開競技として採用され、さらに注目を集めていますし、eスポーツはさまざまな産業に関係していますので大きな可能性が期待できると思っています」

——他にも、来年度以降に推進したい取り組みについて教えてください。

「元環境大臣として私自身も関心が強いのですが、東京都では『ゼロエミッション東京』の実現に向けた省エネルギー対策と再生可能エネルギー利用の更なる強化に取り組んでいます。昨年の漢字が“災”となったように、昨今の気象災害を多くの皆さんが体感しておられると思います。気候変動と災害の関係については議論のあるところではありますが、環境問題は多くの方が意識しておられると思います。そのなかでエネルギー資源の少ない日本として、また大消費地の東京として何ができるかと考えた時に、ゼロエミッション実現に向けCO2の排出をできる限り抑えることはとても重要です。走行時に二酸化炭素等の排出ガスを出さない電気自動車や燃料電池自動車などの“ゼロエミッション・ビークル”、二輪車であれば“ゼロエミバイク”、家であれば“ゼロエミ住宅”、そして、島であれば“ゼロエミアイランド”というように、さまざまな分野でクリーンエネルギーを意識し、東京が先頭に立って持続可能な社会づくりを進めていくことができれば、と思っています」

——SDGs(持続可能な開発目標)という考え方も進めて行かなくてはいけませんね。

「ますます進めていくことは必要ですが、私はこういった考え方に関して東京が遅れているとは思っていません。近代であれば明治のころから財界や知識人が環境活動、社会貢献活動に熱心であったという例は枚挙にいとまがありません。SDGsと言ってしまうと借り物の言葉のようで実感がわかない人もいるかもしれませんが、日本、東京にはもともとそういう考え方が根付いていた歴史があります。それを再確認して、今後さらに進めていきたいと思っています。

——日々、多忙な都知事ですがプライベートで今年、挑戦したいことは?

「プライベートは、ほぼ無いので…(笑)。ただ、普段から都内のバリアフリーやユニバーサルデザインを気にしていたいと思います。パラリンピックの成功あっての2020大会だと思っていますので、大会を機に東京都が徹底したユニバーサルデザイン、バリアフリーを心掛けたのだということが、大会後のレガシーになれば素晴らしいと思っています」

※1…都市ボランティア:公募で選ばれた2万人、東京都観光ボランティアおよびラグビーワールドカップ2019日本大会において都内で活動した人、都内大学からの希望による参加者、都内区市町村からの推薦者ら1万人、合わせて3万人が参加。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が募集する、競技会場などの大会関係施設における会場内誘導・案内や受付、競技運営サポートなどを行う「大会ボランティア」とは別。
※2…ゲーム競技で対戦するeスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)振興を支援し、ゲームやアニメという関連分野を含めた産業振興を目指すため「東京都知事杯 eスポーツ競技大会(仮称)」の開催を決定。大会経費の一部として、19年度東京都予算案に5000万円が盛り込まれている。
※3…エミッション(排出)をゼロにする、の意。1994年に国際連合大学が提唱した概念で、廃棄物を排出しない機械や仕組みを取り入れたり、廃棄物を再利用したりすることで、環境に影響を与える排出物を出さない社会づくりを目指す。東京都は、環境基本計画(2016年3月)において、都内の温室効果ガス排出量を2030年までに2000年比で30%削減することを目標に掲げており、運輸部門については、60%程度の削減が必要。そのため東京都は、次世代自動車であるゼロエミッション・ビークルの普及促進に積極的に取り組んでいる。