福島県白河市から生まれた“七転び八起き”ヒーロー、ダルライザー見参!

『ライズ ダルライザー −NEW EDITION−』
主演・原作:和知健明


 キャストの多くが福島県白河市の一般市民といういわゆる“ご当地”ヒーロー映画でありながら“普通の人”である主人公が大切なものを守るため何度転んでも立ち上がる姿と熱量に、各地で感動する人が続出。2018年2月に都内で限定公開されるやネットで口コミが広がり連日多くの観客が詰めかけたウワサのヒーロー映画がついに全国公開決定。主演にしてダルライザーの生みの親・和知健明が誕生秘話と、そこに込めた思いを語る。
和知健明(撮影・蔦野裕)

“普通の人”が演じることが重要だった。悪の組織も白河市民が熱演!



 白河市の名産である〈ダルマ〉と「起き上がる」という意味の〈ライズ〉を組み合わせたヒーロー、ダルライザー。しかし彼は、自分で縫製したスーツを身に着けるだけの“普通の人”。それでも愛する地元と、そこで暮らす皆の未来を守るため、何度転んでもどんなに傷ついても、あきらめることなく立ち上がる。

 そんなご当地ヒーロー・ダルライザーが誕生したのは2008年のこと。

「もとは平成の大合併の際、新たになった白河市のキャラクターを考えようという商工会議所青年部の企画があり、企画会議ではゆるキャラ案ばかりが出ていたんですが、家に帰ってから面白い会議だったなと思い、ヒーローだったらどうかなと思いついたんです。で翌日、会長にデザイン案を見せに行ったら面白いからやったほうがいい、と商工会議所青年部の中に委員会を立ち上げてくれてプロジェクトがスタートしたんです」

 その後、ダルライザーは地域のイベントやご当地ヒーローショーなどで活動していたが…。

「当時、僕は父が経営する結婚式場で働いていたんですが、あるとき人口減少社会についての講演会が行われ、スタッフとしてその講演を聞いていたんです。2050年には日本の人口が1億を下回り消滅する地方自治体も出てくるという話にすごく考えさせられました。それ以来、地域の未来のことをいろいろ考えるようになって、結婚式場でも食品廃棄を改善できないかと社長である父に相談してみたのですが結婚式場はこういうものだ、と」

 さらに2011年には東日本大震災が起こり、その後も福島県は原発事故の影響を大きく受け続けた。

「自分はダルライザーを通してもっと、地域で暮らす人々を勇気づけたり、未来のためにできることを訴えていこうと思いました。でもヒーローショーに来てくれる人の数には限界があるので、より多くの人にメッセージを伝える方法はないかな、と思って出てきたのが映画化という案でした。それで、旧知の佐藤克則監督に相談したんです」

 和知自らプロデューサーとなり企画が始動。しかし次々と困難が…。

「最初の難関が出演者でした。ダイスという悪の組織を演じているのは全員、白河市の一般市民なんですが、彼らは当初からダイスをやってきたメンバー。彼らが出てくれれば、以前からのファンにとっては、あのダイスが顔出しで映画に出てる!ということになるわけで、それがやりたかったんですが“プロの俳優に頼んだ方がいい、僕らには無理だ”と言われてしまって。これまでヒーローショーでは、声優さんが声を付けてくれていたので、彼らはそれに合わせて動いていればよかったけど映画までは…と。でも僕は白河市の人々がでなければ、皆さんがダイスをやらなければ意味がないということを伝え、演技トレーニングに参加してもらうところから始めたんです。それと同時進行で、監督と脚本のやり取りを16回くらい繰り返し、本当に苦労して試行錯誤の末に完成させました。最終的に撮影の予定を5カ月ずらして監督がまとめ上げてくれたんですが、撮影するまで不安でしたね。でも、何度転んでも起き上がる主人公の姿を演じているうちに、これがダルライザーだと現場で実感していました。改めてヒーローとは何か、ダルライザーとは何かを考えさせられましたね」

 ダルライザーであるために重要だったこととは。

「いかに普通の人間のままで内面の成長を描いていくか、という部分ですね。コスチュームを着ているとどうしても強く見えてしまう。画面で見ると、自分で言うのもなんですが、メジャーなヒーローとあまり変わらなく見えてしまうんです。ヒーロースーツでゴミ拾いをしたり、劇団にダメ出しくらったりするシーンを監督が入れてくれたおかげで“自分たちと変わらない”ヒーローであることが伝わったんじゃないかなと思います」
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