VOL.038
これを書いている今はお盆の真っただ中。夜の東京の街は車もまばらで、満月の月明かりだけが煌々と輝いている。ふと見上げれば、明かりの灯る家も心なしか少なくて、閉め切った暗い窓を見つめては、親子そろってお土産を片手に帰省する家族の姿を勝手に想像してみたりする。里帰りというと、思い出すのは学校めぐり。
長年訪れていない小学校に行って、机の小ささや鉄棒の低さに驚いたり、高校の通学路を久々に歩いてみては、よく通った駄菓子屋の焼きそばや味噌おでんの味を懐かしんでみたり…滅多にない郷愁感に浸るひと時は、時間の流れを深く心に刻むことになる。
夏というとお婆ちゃん子だった僕はよく祖母にまとわりつき、ところてんを一緒に作ったり、おはぎを作る姿を眺めていた。今は亡き祖母が作ってくれたおはぎの味は格別でいまだに懐かしくなる一品。そんなことを考えながら、今年もまた僕は里帰りできずに秋を迎えようとしている。