第3回 新宿区南元町~若葉
ちょっとおかしなデートコース、蕎麦屋、ミクニ、たいやき屋
思えば歩き初めて約9年。それも1年に200日は間違いなく歩いてるから、青山にある俺の事務所を拠点に、今まで1800通りくらいの歩き方を見つけてきた。その中から、今回は割となじみの四谷界隈を歩いてみた。目指すは市ヶ谷にある、通称『金魚屋』だ。
スタートは権田原にある明治記念館前。最初から表通りとはおさらばして脇の小道を下っていくと、首都高の高架下が空き地のようになってる所がある。といってもれっきとした道路なんだけど、車はほとんど通らないから、雨の日に運動するのにここは最適。映画の撮影にもよく使われる場所で、俺も確か『漂流街』のロケをやったことがある。デビュー当時の“民川裕司”ものでも撮影をやったはずだな。歩いてる途中で出くわした場所なんだが、「そういえばここ、来たことあるな」って記憶があったからね。ま、そういう発見があるのも路地歩きの面白さだと思うよ。
この界隈でおすすめなのは、わき道を入ったところにある蕎麦屋。といっても、さして特別なことはない普通の蕎麦屋なんだが、看板はあるのに探さないと見つからない路地の奥にあるのが面白くて一度入ったことがある。女の子と散歩する人は、いたずらっぽく使えるよ。「蕎麦食べに行こう!」って誘って、わざと高速下のトンネル道を通って行くことでスペシャル感が出るからね。こんなとこに連れてくるなんて、かなりヘンな奴だと思われるのがうれしい、みたいな(笑)。
蕎麦屋の通りを迎賓館のほうに進んだところにある『みなみもと町公園』は、このへんで一服するのにちょうどいい場所なんだ。ここはボール使用がOKだからボール持参で来ると楽しいよね。ブランコもあるから乗ってみたりして、ちょっと童心に返ったりしてね。ブランコって、なぜかわからんけどあると乗ってみたくなるから不思議だよ。漕いで、風を切って、日常じゃないどこかに運んでくれそうな感じがするからかな…。
公園の向こうには都内では珍しい電車のトンネルを見下ろせる場所があって、今日もちょうど総武線が走っていくのが見えたよ。この界隈には入り組んだ路地が多いが、その中に老舗フランス料理店の『オテル・ドゥ・ミクニ』があるんだ。ちょうど通りかかったら三國シェフがお客さんを見送ってるところだったけど、向こうから見たら、こんな静かな住宅街をウォーキングスタイルで歩いてる俺って、かなりヘンな奴だろうね。ちなみにここには『ミクニ』のカフェもあって、トンネル脇の蕎麦屋の後に「ちょっとお茶しよう」って女の子を連れてくれば、その落差が面白いってことで「ヘンな人→なかなか洒落た人」になるんじゃないかと思うのだが…。そこから新宿通りに向かって路地をくねくね歩いていくと、老舗のたいやき屋『わかば』もある。都内のたいやき屋と言えば、麻布十番の『浪花屋』かここかってくらい有名な店で、店先で食べられるようになってるのもいい感じだけど、昼間は結構行列ができてるんだよ。
まあ俺としては、甘いものを食べるなら、その先の角にある和菓子屋の水羊羹なんかをつるっとやるほうが好きかな。自家製のカステラが木の箱に入ってたりして、そういう風情もいいなって思うんだ。
(つづく)





