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2006年09月19日

 

第5回 四谷見附~市谷

神社、金魚屋、桜木立の遊歩道に癒される

 四谷見附から外濠公園の脇を歩いて市ヶ谷に向かう途中、新宿からきた道とぶつかるところに三角地帯があって、その広場に3メートルはあろうかという金属製の大きなビックリマークが建ててあった。といってもすこし前の話だが、久しぶりに行ってみたらなんと無くなってた。すぐ隣りが交番なので駐在さんに聞いてみたら「分からない」と言う。勤務して2年という事なので、ちょっと見ない間に撤去されてしまったわけか……。

 東京の街ってのは“足が速い”な。そのモニュメントにはね、道行く人々が思わず微笑んでしまうようなユーモアがあって面白かったし、なにしろ気にいってたのでなんだかとても残念な想いがした。

 この近くにはもうひとつ気に入ってる場所がある。またしても神社なのだが。

 道を隔てて向かいの路地を入った奥にある『市谷亀ヶ岡八幡宮』は、緋色というか神社独特の赤が褪せた感じで残っていて、古い建立物に目がない俺にとっては、時の流れを匂わせる風情がとても心地よい感じ。48段の急な石段を登ると踊り場らしきものがあり、さらに15段上がると境内にたどり着くのだが、この季節、いっきに登るとちょいと汗をかく。なんてことはない小さな社と言ってしまえば、まあそうなんだが、登り口に向かって左脇にはこれもまた猫の額ほどの公園があって、子供用の玩具がふたつと長椅子がひとつ。すぐ対面には流行りの外資系コーヒー屋。一服ぶん飲み物を購入して、例えば夕方なんか最高なんだけど、ボケーっとしながらコーヒーをすする!ってのもなかなかオツなものだったりして。なんら奇麗でもないし、誰も気に留めないような場所なんだが、何かちょっと変な所、とか、いびつな感じ?が妙に気に入るたちでして。今回も、新たに四谷の路地裏にポツっと建ってる祠を見つけたのには結構大喜びだったかな。

 目的地の金魚屋は、神社から歩いて数分の市ヶ谷見附の目の前。金魚屋といってもれっきとした釣り堀なんだが、店の中にはいろんな魚が、それも大量に泳いでる水槽がバンバンあって、見てると時を忘れてしまう。いっそのこと、この辺りの堀を大改造して、人間もグジャグジャ泳げるようにしてくれたら面白いかもなあ。いってみれば人間の釣り堀? あはは、こりゃ失言だな。まあ、そんなわけで今回はひとまずここが最終地点だが、近くに友人がやってる店があるのでちょいと寄り道しようかな。

 市谷から四谷に抜ける土手沿いの遊歩道は桜並木になっていて、季節がら蝉の幼虫が抜け出した穴とその抜け殻がちらほらと見られる中、たまにデッカい穴があったりして、「ややっ、これはモグラの仕業だな!」。なあ~んて言いながらカップルで散歩するのもいいかもねえ~…って、いいわきゃないか?

 友人の店『タンゴーズ・ダイニング』は、元力士の星誕期が店長をやっていて、人形町にももう一店舗あるのかな。十数年前、九州場所を見に行った時に知り合って以来の付き合いで、同じ歳。遠いアルゼンチンから見も知らぬ日本になかば国を捨て出稼ぎにきて、言葉を覚え土俵という戦場(イクサバ)に立ち、戦利品を故郷の親に送る。なんざ、なかなかできる事じゃないし、泣かせる話だよな。そういう心意気、尊敬しちまう。歩いた後に飲んだ果物のジュース、めっちゃ旨かったよタンゴちゃん!

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市谷~四谷に抜ける森林浴気分の遊歩道 色合いがシブイ市谷の『市谷亀ヶ岡八幡宮』 ダーツも遊べる『タンゴーズ・ダイニング』

2006年09月04日

 

第4回 新宿区須賀町~荒木町

懐かしさに出くわす楽しさのある街

 それにしても今さらながら思うのは、こうやって街を歩くのは裏道に限るってことだ。前回、有名なたいやき屋の『わかば』まで来たけど、その先は新宿通り。車がバンバン走る大通りを歩くのはどうにもつまらない。そこでここから路地裏を逆戻りすることにした。

 四谷霊廟の脇の坂を下っていくと、俺が子供のころに見たような、今じゃ珍しいアイスキャンディー売りに出くわした。それも、台車の上にアイスの箱を載せて、旗を立てて売り歩く昔ながらのキャンディー屋。こんなのに遭遇するから路地歩きは楽しいわけだが、アイス屋のおっさんに話を聞いてみたら、「このへんには1年に2回くらいしか来ない」と言うじゃないか。365分の2の確率で会うなんておもしろいよね。それも「夏と冬では仕事が違う」とか、訳ありな感じもそれっぽい。せっかくだから1本買って食べてみると、暑い日はこれがまた旨い! 買ったのはパイン味。俺はパインが大好きで、自分で晩飯を作る時はおかずとスープと食後のフルーツを必ず用意するのだが、7、8割はパイナップルを買う。なんで好きなのか分からないが、パイナップルとかパパイヤとかマンゴーとか、果物は南国系が多いんだな。

 アイスをなめながら次に向かったのは須賀神社。階段を上って境内に入り、柄杓で水をすくって手を洗い、一服しながらしばし休憩。夏の終わりの神社では蝉がうるさいくらい鳴いていて、涼しい風が吹いてくる。こういった所には不思議と清涼感があるから、俺の路地歩きの休憩場所はおおよそ神社仏閣。東京には至る所に七福神があるから、それを巡ってみるなんてのも面白いかもね。

 休んだ後は新宿通りを渡って荒木町の飲み屋街へ。この界隈も路地が入り組んでて相当おもしろい場所なんだ。飲んだり食べたりするのは夜だけど、初めて来た時から妙に懐かしい感じがあったんだよ。昔、うちの親父もこんな感じのところで料理屋をやってたから、「広島にもあったな…」って思ったし、若いころ、先輩たちに連れられて行った新宿のゴールデン街の雰囲気にも似てる。じいさんとばあさんでやってるような昔ながらの店が多くて、ウッドのカウンターが擦り切れてたり、椅子もキャバレーみたいな丸椅子だったりして、そういう風情がいいなって思うんだよ。ついこの間も知り合いに連れられて荒木町の飲み屋に来たんだけど、すごいレトロで面白かった。マスターはビシッと蝶ネクタイにベストで、ママさんなんか、「これはまたえらく気合入ってまんなあ~」ってくらいなスパンコールびっしりのロングドレス! 俺たちの世代的にはグラムロック風?とも言えるかな(笑)。荒木町には広島のお好み焼き屋もあるし、昼は路地歩きで、夜は飲み屋で楽しめる場所だね。じゃ、ここからはまっすぐ四谷駅前の外堀通りに出て、いよいよ目的地の市ヶ谷の“金魚屋”へと向かおう。

(つづく)

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須賀神社の手を洗う場所。石には『心洗』の文字が刻んである 荒木町車力門通りの入り口にある紹介マップ。写真入りが楽しい 荒木町の通り。右左に路地があり別世界風の懐かしさだ