≪ 第7回 江東区深川~富岡 | Home | 第9回 文京区駒込 六義園~小石川植物園 ≫

 

第8回 文京区駒込 六義園(その1)

見所は…ホラー映画のような鯉!?

「この間、銀杏拾ってきましたよ」
 路地裏歩きの達人は、拾いものの名人でもある。
「BARの呑み友達とふたりで運動をかねて六義園に行き、ベンチで昼寝してたらボコッと何かが落ちてきた。あれっ、銀杏じゃん!ってことで周囲を散策、落ちてる連中を拾って持ち帰り、殻を割って塩水につけ、しばらくなじませたら、乾かして炒って、BARの常連たちでウイスキーのつまみにした」

 今どき拾って食べる人もいるんだ…と思いながらも、銀杏拾いのノウハウを聞いてみた。食べている部分は種子の中身なこと、外側の臭い部分はしばらく土に埋めると分解されること、ただし有料公園で土を掘ると咎められるので注意が必要だ!など、携帯の写メで撮った銀杏の写真を見せながら説明してくれる。「良い銀杏は炒ると透明になってエメラルドみたいだよ」。聞いていると食べたくなる。自然の描写はいつもながらお見事だ。

 彼は公園を愛している。路地歩きを始めたころ東京都のデカイ地図を買って公園に印をつけ、「全部行こうと思った」。もちろんちゃんと理由があるのだが。
「公園には土があるからね。歩いても疲労度が全然違うから。舗装の道路を全部ひっぱがせと思うよね、歩道をね、歩道。俺は左足に爆弾抱えてるせいもあるけど、コンクリートから土に出たとたんに痛みがなくなる。人間、便利になることによって何かを失うんだって事を痛感するわけだな。昔の人はあたりまえに1日20~30キロ歩いてたわけでしょ。物質文明の進化は生き物としての人を退化させるばかりだな」

 土に触れると体が喜ぶ。ということは、都会で数十年生きた後も“はじめ人間ギャートルズ”感を残してるってことかも。秋の陽気の中、六義園に向かう道を歩きながら話を続ける。

「友人と来た時は、そいつが筑波大付属高卒で、この辺の地理には詳しいから任せろって、六義園から小石川植物園をまわった後、イチョウ並木がきれいだから東大に行こうって言い出したの。植物園の近くだからって。東大は小石川じゃないんじゃねえ?って言ったんだけど、近辺だと言い張る。“コウちゃん、着いたよ!”って行ってみたら東洋大学だとさ。まあ確かに略せば東大だから間違ってないと言えなくもない。っていうオチだったんだけどね(笑)。その後は護国寺に向かう途中で道に迷ったおかげで“鼠坂”という坂を見つけた。もしかして森鴎外の小説にあった坂じゃねえか!? 奴は“あれぇ…”とか言ってたけど、俺はちょい感激。迷ったからこそ出会えるモノがある。ってのが歩く楽しさでもあるわけだからね」


 六義園の緑が見えてきた。江戸時代に柳沢吉保の下屋敷として造成し、その庭は和歌の世界を表現したという都内でも屈指の名園だ。

「ここは春夏秋冬素晴らしいよ。春は桜、秋は紅葉、新緑の時期も、冬の雪景色もいい。冬だけはまだこの眼で見てないんだけど。何処を切ってもなんかかんかの構図になってね、スケッチブックとクレヨンを持って絵を描きに来るのもいい。鳥も多いよ、この間はカイツムリと川鵜が池の魚を食ってた。そうそうデカい鯉がうじゃうじゃいてね、餌をやると面白いよ、鯉が重なってバジャバジャバジャ~って水面にぶわ~っと出てくる。これはもうホラー映画。うわ~っ、気持ち悪い!とか言いながら、女の子たちが餌づけしてたり(笑)」

 ということで、次回は吉川による鯉の餌やりから、公園散策はさらに続く。

(つづく)

路地裏ダイヤモンド画像08-1路地裏ダイヤモンド画像08-1 拡大 路地裏ダイヤモンド画像08-2路地裏ダイヤモンド画像08-2 拡大 路地裏ダイヤモンド画像08-3路地裏ダイヤモンド画像08-3 拡大
本当はこれが見たかった!? 本郷・東大の銀杏並木 六義園の入り口付近。入ったとたんに日本情緒が 鯉以外に鴨も餌にむらがる池。一見の価値アリ

トラックバック