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2007年01月08日

 

第11回 江東区 木場公園~親水公園

河童とハードボイルド

 木場公園は広大な公園だ。東京都現代美術館もあれば、植物園や子供用アスレチックや広々とした芝生もある。その芝生の上でバック転をやっている男がひとり。誰かと思ったら吉川だった……ということもたまにはあると彼は教えてくれた。「ツアー前とかね。俺がやってると子供が珍しそうに見てて、“オレもできるぜ”的なのが集まってきて真似するの。負けてらんないから俺も意地になってやったりして(笑)」。

 今どき外でバック転などやる大人はいないだろうから、子供たちが興味津々なのは当然だろう。しかし誰でもできるものではない。『よい子は真似しないでください』といったところか。

 今回の散策ルートは、木場公園から仙台深川公園、親水公園を通り、砂町銀座商店街を抜けて木場公園に戻るという2時間強のコース。歩きながらお地蔵さんに出くわすと、ポケットから小銭を取り出し賽銭箱に入れる。「よろしく!みたいな感じ」ということだが、その一連の動作があまりにもスマートなのに驚く。東京には意外と地蔵が多いと以前も言っていた。家を出る時に賽銭用の小銭を何枚か入れてくるのだそうだ。右のポケットには、挨拶用の小銭がジャラジャラ。何気なく粋である。

 仙台深川公園から親水公園と続く遊歩道をテクテク歩いていくと、水路に佇む河童の置物が見えてきた。「最初に来た時はちょうど夕暮れ時で、河童がすっごい寂しそうに見えたの。ああ、この河童は明日までひとりで冷たい水の上にいるんだな…って、背中がいい芝居してたんだよね。思わず写メで撮っちゃった」。人はそうやって何かに感情を重ねるものだ。言葉にならない優しさだったり、孤独だったり。その河童は、一昨年末に書いた小説『エンジェルチャイムが鳴る夜に』の中でも、あるカップルの思い出の風景として描かれていた。

 水路には鴨もたくさん泳いでいた。「この時期は鴨がウマいね。もし捕っていいのなら、オレなら食うね(笑)」なんてことを言いながら、どんどん先へと進む。「こっちこっち」と呼ばれたほうに向かうと、公園の中に移築された古民家が建っていた。「海苔を作っていた民家で、土間があって、いろりがあって、なかなか面白いよ。前に来た時、係のオヤジが説明するのを“へぇー”とか言いながら聞いてたら、すごい喜ばれて、庭になってたみかんをもいで“これ食べてよ”ってくれたの。肥料を与えてないから甘くはないけどって。でも旨かったよ。すっぱい甘いみたいな、自然な昔のみかんの味がした」。普段は説明に耳を傾ける人も少ないのだろう。みかんはオヤジさんからの「ほんの気持ち」のプレゼントだったのだ。


 さて、2007年である。休憩をしながら、新年の抱負などを聞いてみた。「猪年だから、猪突猛進。道なき道をかき分けて、みなさんワイルドに行きましょう!というところかな。この連載もそうだけど、俺としてはさらにレトロにいきたいね。生き方もね。合理的なのはくそ食らえだと思ってるから。そんなに便利に短縮して急いで生きて、先に何かあるのかよって。中国の古典では“近道するやつほど遠回りになる”という言い方があって、近道ばかり探して楽しようとするやつは、結局人生遠回りして本筋には帰れないという戒めなんだけど、まさにそれだなと。いろいろ経験しないと積み重なっていかないからね」

 そういう意味では、街歩きだって小さな経験の積み重ね。『路地裏ダイヤモンド』というタイトルも、思えばそんなところからつけられたものだった。

(つづく)

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地蔵尊に遭遇したら挨拶代わりに賽銭を 暖かいうちはボートや“渡し”にも乗れる 古民家(旧大石家住宅)は公開日時が限られているので要注意