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2007年02月27日

 

第14回 港区高輪~自然教育園

棕櫚の寺からタイムスリップエリアへ

 泉岳寺からの帰り道、老舗の和菓子屋『松島屋』で名物の豆大福を購入。食べる場所を探していると「いい寺がある」と吉川から提案が。行ってみると、寺に続く下り階段の両脇に、ここは南国か?と思われる亜熱帯系植物が高々と茂っていた。

 寒さに強い『棕櫚』と思われるが、寺とのミスマッチがなんともおかしい。「俺はこういう妙なところに引っかかっちゃうんだよねえ」
 棕櫚の寺から高輪消防署に向かった右側には、またしても「引っかかる!」路地があり、通る人はほとんどいないと思われる不思議な階段の下に古い民家があったり、今では猫しか通らないような軒下があったり。それ以外に見るべきものは何もないが、「こういう家の外観を残して中だけ作り変えて事務所にするとか、いいよね!」なんて言いながら話しが弾む。路地には郷愁だけでなく、想像力をかき立てるモノも落ちているのだ。桜田通りに出ると、彼は馴染みの古本屋『石黒書店』に入り、先日取り置いてもらっていた分厚い本を数冊抱えて出てきた。
「ここから先はタイムスリップ・エリアなんだよね」。桜田通りを渡って池田山公園に向かう道を歩きながら、吉川は一軒の昔ながらのお茶屋を紹介してくれた。「つい先日も買ったんだけどね。たぶん一番高いのが100グラム1500円のやつで、それ下さいって言ったら、オヤジさん驚いた顔してさ、“若い人がお茶をねえ”なんて言われて、あんまり若くはないんだけどさって(笑)。で、ブリキ?の茶箱から葉っぱを皿に取り、秤で計って紙袋に入れ、袋の口を細い紐で結んでくれる。やっぱり違うんだなこれがさ。スタジオにこもって曲作りしてる時期の楽しみなんていったら酒か珈琲か、お茶入れるかぐらいのものでね。そんならやっぱりちょいとこだわってる老舗店の美味いやつをやりたくなるわけですよ。そのまま飲めるわけじゃないし持って帰ってから手間もかかるんだけどね」お茶屋さんの先には、吉川曰く「すずめ御殿」がある。「お屋敷なんだけど、樹が茂ってて、すずめのマンションになっている」のだそうだ。通りかかると、チュンチュンとのどかな鳴き声が聴こえてきた。「手を叩くと一瞬黙ってから一斉に飛び立つよ!」。さっそくパンパンと手を鳴らす吉川。残念ながらこの日は不発だったが、そんなことも楽しい街歩きである。
 池田山公園に到着し、日本庭園を見ながら東屋でしばし一服。この公園は「静かできれいなのに、桜の季節だって人が少ない(ので、あまり教えたくなかった!)」という、吉川お勧めの都心の穴場。そして帰路、白金台の自然教育園に立ち寄り、今回のウォーキングを振り返った。
「魚藍坂のあたりは本当に坂が多くて、坂好きの人たちにとってはすごくいい場所。昔からの名前が残ってたりして、ちょっといい感じだよね。『松島屋』の豆大福も、豆とアンコに微妙に塩が効いててウマかったし、泉岳寺でおにぎり食べてた女性がいたけど、そういうのなんか粋だね。業界人やファンの一部には、ウォーキングなんか格好悪い。ロックだぜえ~よろしく!みたいな風貌でオープンカーかなんか乗ってブリブリいわせてるほうがいいっていう連中もいるわけですよ。まあたまに気取ってる程度ならいいけどさ、それが地だと俺にはつまんないな。天気が良くて時間のある日なんかは、弁当持って来て食べれば華やぐっていうか、そういうほうが豊かなんじゃねえの? エコですよエコっ!っと思うな」
 そして吉川は再びスタジオへ、音楽の場へと戻って行った。

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『松島屋』では豆大福の他、ダンゴや赤飯もある 探検気分と好奇心で、入ってみたくなる路地 お勧めのお茶屋。昔ながらの茶箱が見える



2007年02月26日

 

第13回 港区高輪 通称『古墳公園』~泉岳寺

過去を思うのもたまにはいい

 地球温暖化の影響なのか、公園ではすでに梅の蕾が開き始めていた。現象そのものは喜ばれることではないが、街を歩いているとこうして季節の移り変わりを肌で感じる。吉川は今日も“路地歩き隊”の先導をきって、普段は誰も通らないような路地に迷い込みながら南麻布の坂を下っていた。

 古川橋から魚藍坂下に向かうと一軒の古本屋『小川書店』がある。「ここからが俺の古本屋めぐりのスタート。このへんを歩く時はまずここに寄って本を見て、それから坂を上って伊皿子に向かう」
 伊皿子へと続く急勾配の坂の途中にも吉川セレクトの店があった。知らなければ通り過ぎてしまうほど地味な構えの、都内でも珍しい“弓矢屋”。「俺の姪っ子が一時期弓道をやってたから、何か買ってやろうと思って一度入ったことがある。職人さんのこだわりの手作りって感じで、こういう店がすごく好きだねえ~」。そんな話をしながらたどり着いたのは、伊皿子の交差点を下ったところにある三田台公園。今回の最初の目的地だ。通称『古墳公園』と言うそうだが、しかし古墳はどこにも見当たらない。代わりにセメントで作られた埴輪2体と、貝塚跡、古代の住居跡がこれまたセメントで固めてある。その内部には、ご丁寧に古代人の生活の様子を再現した人形も飾られている。入り口にある小さなボタンを押すと、説明のナレーションが延々続く仕組みだ。「最初に来たのは5、6年前かな。昔よく行ってた寿司屋の女将さんが“おもしろい公園が高輪にあるのよね”って言ってたのを歩いてる途中で思い出して、あっ、ここかなと。で、入ってみて、あまりのくだらなさにひとり大爆笑だったんだけれど、なんだか妙に気に入っちゃってね、いろんな連中に紹介してる。何これ?って怒ったヤツもいたよ。貝塚は確かに出土したものだけど、他はセメント製だからありがたみはないよな。と言いながらも、何度も誘われるという(笑)。住居跡の入り口に座ってさ、一服しながらナレーションを聞いてると、当時、ここから先はすぐ海で、ここに集落があったのかあ~。しかしなんでわざわざ高台に作ったんだろう? 本来ならその便利さから海に抜ける川べりとか低地を好むはずなのに、外敵から守るにはよかろうが砦じゃないもんなあ。なーんて不思議に思いながら空想を面白がってる感じ」
 彼の頭の中に浮かぶ絵柄を想像すると、過去に思いを馳せるのもなかなか夢があって楽しい。吉川晃司が古代人だったら…と勝手にイメージしたりして…。
 古墳公園の次に向かったのは『泉岳寺』。『忠臣蔵』で有名な赤穂四十七士の墓がある寺だ。
「ここに来ると、あのころはどんなだったんだろうってちらっと思ったりするよね。冬の寒い中をさ、吉良邸のあった両国からここまで歩いてきたんだなとか」
 普段から参拝者が絶えない墓所には、線香の香りが充満していた。彼も100円で線香を買い、墓に手向けた。
 寺の入り口にはみやげ物屋もある。「これ、かわいいじゃん!」と、でんでん太鼓型の耳掻きを購入。「俺、耳掻き、好きなんだよね~」。それを聞いていた店のおばさんがニコニコしながら「誰にやってもらうかによるわよね」と言うと、「俺はひとりでやるよ」と、吉川は小声でつぶやいたのだった。

(つづく)

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住居跡に再現された古代人の生活。興味深い 泉岳寺は小ぶりな寺だ。ひっそり感がまたいい 吉川が選んだ耳掻き