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2007年02月26日

 

第13回 港区高輪 通称『古墳公園』~泉岳寺

過去を思うのもたまにはいい

 地球温暖化の影響なのか、公園ではすでに梅の蕾が開き始めていた。現象そのものは喜ばれることではないが、街を歩いているとこうして季節の移り変わりを肌で感じる。吉川は今日も“路地歩き隊”の先導をきって、普段は誰も通らないような路地に迷い込みながら南麻布の坂を下っていた。

 古川橋から魚藍坂下に向かうと一軒の古本屋『小川書店』がある。「ここからが俺の古本屋めぐりのスタート。このへんを歩く時はまずここに寄って本を見て、それから坂を上って伊皿子に向かう」
 伊皿子へと続く急勾配の坂の途中にも吉川セレクトの店があった。知らなければ通り過ぎてしまうほど地味な構えの、都内でも珍しい“弓矢屋”。「俺の姪っ子が一時期弓道をやってたから、何か買ってやろうと思って一度入ったことがある。職人さんのこだわりの手作りって感じで、こういう店がすごく好きだねえ~」。そんな話をしながらたどり着いたのは、伊皿子の交差点を下ったところにある三田台公園。今回の最初の目的地だ。通称『古墳公園』と言うそうだが、しかし古墳はどこにも見当たらない。代わりにセメントで作られた埴輪2体と、貝塚跡、古代の住居跡がこれまたセメントで固めてある。その内部には、ご丁寧に古代人の生活の様子を再現した人形も飾られている。入り口にある小さなボタンを押すと、説明のナレーションが延々続く仕組みだ。「最初に来たのは5、6年前かな。昔よく行ってた寿司屋の女将さんが“おもしろい公園が高輪にあるのよね”って言ってたのを歩いてる途中で思い出して、あっ、ここかなと。で、入ってみて、あまりのくだらなさにひとり大爆笑だったんだけれど、なんだか妙に気に入っちゃってね、いろんな連中に紹介してる。何これ?って怒ったヤツもいたよ。貝塚は確かに出土したものだけど、他はセメント製だからありがたみはないよな。と言いながらも、何度も誘われるという(笑)。住居跡の入り口に座ってさ、一服しながらナレーションを聞いてると、当時、ここから先はすぐ海で、ここに集落があったのかあ~。しかしなんでわざわざ高台に作ったんだろう? 本来ならその便利さから海に抜ける川べりとか低地を好むはずなのに、外敵から守るにはよかろうが砦じゃないもんなあ。なーんて不思議に思いながら空想を面白がってる感じ」
 彼の頭の中に浮かぶ絵柄を想像すると、過去に思いを馳せるのもなかなか夢があって楽しい。吉川晃司が古代人だったら…と勝手にイメージしたりして…。
 古墳公園の次に向かったのは『泉岳寺』。『忠臣蔵』で有名な赤穂四十七士の墓がある寺だ。
「ここに来ると、あのころはどんなだったんだろうってちらっと思ったりするよね。冬の寒い中をさ、吉良邸のあった両国からここまで歩いてきたんだなとか」
 普段から参拝者が絶えない墓所には、線香の香りが充満していた。彼も100円で線香を買い、墓に手向けた。
 寺の入り口にはみやげ物屋もある。「これ、かわいいじゃん!」と、でんでん太鼓型の耳掻きを購入。「俺、耳掻き、好きなんだよね~」。それを聞いていた店のおばさんがニコニコしながら「誰にやってもらうかによるわよね」と言うと、「俺はひとりでやるよ」と、吉川は小声でつぶやいたのだった。

(つづく)

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住居跡に再現された古代人の生活。興味深い 泉岳寺は小ぶりな寺だ。ひっそり感がまたいい 吉川が選んだ耳掻き