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第15回 港区南青山~渋谷区神宮前

都心で見つけた心意気

 天気のいい午後だった。南青山の路地を入ると、岡本太郎氏の記念館があった。「岡本太郎さんは尊敬する人間のひとりだからね、たまに行ったりしてる」と吉川。

「好きだな~。岡本さんの本を読んでみたりもしたな。太陽の塔は伝説だし、“グラスの底に顔があってもいいじゃないかあっ!”のアイデアとCMにゃ子供ながら、このおっさんすげーぞ、っと思ったもんですわ。大阪万博のシンボルを依頼されたとき、他の芸術家連中からは“身売りした”なんて非難されまくったらしいけれど、結局は自分の意思を譲らなかったわけでしょ。違う設計図を渡しておいて出来上がるまで見せなかったという逸話もある。完成した塔を見たお堅い人たちは“なんじゃこりゃ?”と頭から湯気出したらしいけどさ、インパクト絶大なシンボルになったわけで、そういう在り方というか、モノを作る人間はそうじゃなきゃいけないっていう象徴的なところがあるよね。人間長く生きてくると浮き世なんざ妥協するのが当たり前だと冷めちゃうじゃない? それ違うよな。自分に何かが足りないから妥協せざるをえないわけで。結局、岡本太郎さんはヤッカミも多くて晩年なんか孤独だったみたいだけれど、それでも媚びたりはしなかったわけでさ。それをずっと支えながら一緒にいた女性がまた素敵だったよね」

 この近辺には、吉川おすすめの「根津美術館の庭」もある。裏道にはユニークな門構えの家が点在し、撮影ポイントを案内しながら青山墓地へとたどり着く。
「墓地っていうのはさ、散歩するのにすごくいいの。夏は涼しいしね」
 そうなのか…。ちょっと不謹慎な気がしないではないが…。
「いや、逆にたくさん人が訪れたほうが喜んでもらえるんじゃないの? 2時間くらいかけて格子状に全部歩いたこともあるよ。野良猫の集落になってたりもしてさ、鶏肉5パックくらい買っても足りないよ。好物はね、鶏肉と皮!これ間違いないよ。人なつこいのはよく食うし、気持ち良さそうに昼寝してるよ。猫の避難キャンプだよね、こんな都会じゃさ」

 途中、高台の墓地と外苑西通りにはさまれて古い住宅が残る一角に下りてみた。「あれ、おもしろいでしょ」。見ると、こんなところに井戸のポンプが。ガチャガチャ動かすとちゃんと水が出る! 都心のど真ん中とは思えないのどかさだ。
「ここの壁は、ナメクジ好きには天国だよ」。墓地の石壁を指して、彼はまた変わったことを言う。「梅雨時とかになると凄いよ~ナメクジの大行進でさ。みんな気持ち悪いっていうけどさ、カタツムリの仲間だからね。殻がついてないだけだから」。…大きな違いだと思うが。「それは人間がそう思ってるだけで、カタツムリは嫌がらないのに、なんでナメクジだと嫌がるの?」。つかむところがないからです。「あっはっは、なるほど(笑)」。

 青山通りに出るとちょうどランチタイムになっていた。オフィスビルから溢れ出すスーツ姿の大群の中に、肩幅の広いウォーキングスタイルの男がひとり。その後ろ姿もまた何かの象徴のように見えた。
 青山通りを渡り、キラー通りを下り、千寿院にたどり着くと、「ちょっと寄って行くかな」と、渡辺プロダクションの社長であった渡辺晋さんの墓に参った。線香を手向け、「ここのイチョウの銀杏は、おそらくは都内で一番デカい!しかもウマイ!」と追加情報も教えてくれた。
「梅がきれいな寺があるよ」
 その言葉に誘われ、脇道を通りさらに千駄ヶ谷へと向かう。

(つづく)

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岡本太郎記念館。1度は足を運びたい 住宅街にあるオブジェ。この家の方の所有物ですが… 青山墓地の近くで既に実をつけていた桜…?
同じく青山墓地の近くで早くもほころびはじめた桜 墓地の中でも道は続くよどこまでも 青山の一角に、こんなポンプがあるとは! 現役です
オフィスからスーツの大群が吐き出される昼時の青山通り。深い海の底のようにも見える んんん?? あれは… キラー通りで吉川が見つけた“ビックリ人形”。どこにあったか分かるかな?
仙寿院の近くにある高徳寺。境内に仏の群れが 仙寿院。狭いエリアの中に社寺仏閣が多い 都内で一番デカくてウマイ(であろう)仙寿院の銀杏

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