第18回 旧東海道~品川区民公園
好きなモノにこだわる
品川神社で板垣退助の墓に参り、東海寺の沢庵和尚の墓を訪ね、清光院ではネパールの寺で見たものと類似した大名墓を発見して驚いたり、広々とした天妙国寺をのぞいたりしながら、入り口に象がいる風変わりな門構えの真了寺を通り、品川寺ではイチョウの巨木に嘆息し、吉川が「ここに住みたいね~!」と感想をもらした美しい格子天井の海雲寺にたどり着いた。
寺、寺、寺とまわった旧東海道ウオーキングもここで一段落。古いものに触れ、「やはり匠の技はすごい!」と吉川の顔に笑顔が見える。
以前吉川に、どうしてそんなに寺や墓を巡るのかを聞いたことがある。ちょっと神聖な気分になれるし、樹木が多くて心地よいというのがひとつの理由だが、「墓なんかは気持ち悪いと思う人もいるだろうけど、人がきてくれたほうがうれしいんじゃないの?」と言われて納得したものだ。過去があるから今があり、だから未来もある。天気のいい午後、路地裏にも春の光が降り注いでいた。
「あまり教えたくないんだけど、とっておきの場所がある」
そう言って吉川が向かったのは、旧東海道の鮫州商店街を左に折れたところにある運河の土手。鮫州橋をのぞみ、土手いっぱいに咲いた黄色の菜の花がそよ風に揺れていた。
「わぁ、すごい!」。同行スタッフ全員から歓声があがったほどその風景は清々しかった。
「冬は海風が冷たいけど、春から秋まで、ここはいいよ。普段はあんまり人がいないから、夏なんか上半身裸になって日焼けもできるしね。俺は日に焼いてもすぐ赤くなってサメちゃうタイプで、一度“肌を焼いてる役で”って言われて困ったことがある。撮影してるうちにどんどん白くなっちゃうから。そんな時、ここに焼きに来たりしたこともあるよ」
菜の花の土手を延々と歩き、立会川を超えて池上通りを左に曲がると、「この辺に来たら寄ってる」というパン屋『明治屋』がある。コンビニが発達した今の時代からは取り残されたような店構えだが、ショーウィンドーに並ぶ“コッペパンの手作りサンドやおにぎり”が食欲をそそる。
「今日はちょっと種類が少ないね。以前はもっと、焼きソバパンとかウィンナーサンドとかあったんだけどね。時代の流れなのかもしれないけど、俺はやっぱりこういう店が好きだね。食べるものは作ってる人の顔が見えるのが一番でしょう! じゃ、俺はメンチカツサンド」
吉川に続き、コロッケサンド、シャケのおにぎりなどを買い込み、品川区民公園に向かう。ここはジョギングコースやバーベキュースペースもある広大な公園で、品川水族館へと続いている。ふと見ると『腹筋何回』と書かれたアスレチック器具のようなものがある。
「ここはそういうのがずっと続いていて、全部やるとかなりの運動になるよ」
なるほど。しかし、のどかな公園でそれを実行する人はいるのだろうか?
「俺は何度か一通りやったけどね。これが結構大変なんだよ」
手で綱を持って滑るアスレチックにたどり着くと、吉川は早速手綱を握り、ターザンのように颯爽と風を切っていった。
(つづく)
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