≪ 第20回 池尻から松蔭神社への『烏山川緑道』 | Home | 第22回 世田谷区豪徳寺~祖師谷大蔵 ≫

 

第21回 世田谷区豪徳寺

招き猫と居心地のいい喫茶店

  その日の天気予報は雨だった。しかも「午後から強い雨」の予報。曇り空の中、行けるところまで行こうということで池尻から『烏山川緑道』を歩き始め、松蔭神社までたどり着いた。雨はポツポツと降り始めてきた。「でも、ここまで来たらとりあえず豪徳寺まで行かない?」。

吉川の提案にスタッフも全員同意見。少しの雨ならその中を歩くのもまた楽しい。「カメラ、大丈夫?」。機材を持ち歩くカメラマンに声をかける吉川だった。

 小田急線の駅の名前にもなっている豪徳寺は広大な寺だ。住宅街の道を、右に『梅が丘』左に『豪徳寺』の住所表示を見ながら進むと、正面にうっそうとした寺の森が見えてくる。

「ここは招き猫の発生の地なんだよね」。昔、この界隈をある大名が歩いてるときにね…という招き猫の謂れを説明する吉川の話を聞きながら寺にたどり着くと、入り口にも招き猫。「あれ、おもしろいでしょ」。先導する吉川の先には、奉納された招き猫がブワーっと並んだ棚があった。

「俺も一時期、招き猫に凝ったことがあったからね。最初は下町とかに散歩に行ったとき、何か買って帰ったほうがうれしいなと思ったのが始まりで、それからいろんなところに行っちゃあ、ちっちゃい招き猫を買ってきてたの。スタジオが殺風景だったし、ちょっとは福を招くんじゃないかなと思ってね。そしたらあるときうちのスタッフが、“吉川さん、これいいでしょ!”って、電動で腕がキコキコ動くやつを買ってきた。さすがにそれは“ちょっと違うんじゃないか”って(笑)。それからもいろんなのが集まり過ぎちゃってちょっと嫌になったりしたけど、今もスタジオに何個か飾ってあるよ。招き猫作家さんの一点物とか、そういうのはおもしろいなって思うよね」。ちなみに豪徳寺では招き猫も売っている。それだけでなく境内には美しい花々も満開で、井伊直弼の墓もある。世田谷の昔をしのぶには、自然たっぷりの居心地のいい寺だ。

「木とか草とか、そういうものを慈しむというか愛でる気持ちっていうのは、完全に老化現象かもしれないけどね(笑)。若いうちは生命に対する執着ってないじゃない。だから自然に対する感じ方も違うかもしれないけど、一度知り合いの若い女のコたちを連れて歩いたときなんか大変だったもん。“私たちも一緒に行く~!”って言うから、お前ら本当だなって言ったんだけど、歩き始めたら靴のかかとは踏んでるわ、サンダルはいてるわで、少し歩いただけなのに“どこまで行くの? もう信じらんな~い”とか言い出して、途中で店に入っちゃったコとかいたからね(笑)」


 雨はさらに強くなってきた。昼ご飯を食べていないことを思い出し、松蔭神社近くの商店街に戻り、魚屋がやっている店で魚定食を食べる。その後は近くの喫茶店で雨宿り。古い住宅を改装したその店を、吉川はいたく気に入った様子だった。

「最近、こういう店、多いよね。わざと古っぽく作ってあるような店はあんまり好きじゃないけど、古いまんま使ってるとこは味があっていいよ。ここはカーテンとか窓も古いし…」と言いながらガラガラっと窓を開けると「にゃぁ」と猫が庇で雨宿りしていた。「びっくりした。開けちゃいけなかったのかね(笑)」

 ニューアルバム『TARZAN』リリースに続く番組出演やツアー開始と、多忙を極める日々の中、コーヒーを飲み、店自慢のスイーツをつまみながら、思いがけず過ごしたまったりとした午後。雨はまだ降り続いていた。

(つづく)

※写真をクリックすると拡大画像が見られます。拡大写真の右側にマウスを重ねると「NEXT」ボタンが現れ、次の写真を見ることができます。

豪徳寺の入口脇にある商店。ここからすでに招き猫 豪徳寺山門 参道がしずしずと続く
五重塔も建立されている。ここだけ見ると京都のお寺のよう 雨が降ると緑に艶やかさが増す 奉納された招き猫の大群。「いつ奉納されるんだろう?」と吉川も首を傾げる
猫、猫、猫。壮観。圧巻。 もういっちょ猫。真ん中に見える黒いのはアタゴオルか!? 社務所でも猫がお出迎え。でも招き猫じゃない
ここでも井戸を発見。飲めないらしい… 井伊家代々の墓所。広い墓所は中国を思わせる 井伊直弼の墓。吉田松陰の墓と対で見ると意味深い
魚屋で食べたお昼。祐庵焼? 居心地のいい、古い民家を改装したかフェレストラン 中も趣向が凝らされている。押入れと障子戸を利用した席がいい


トラックバック