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2007年07月24日

 

第25回 墨田区向島~台東区浅草・かっぱ橋

吉川がハマった料理器具とは?

 街を歩いていると、いろんなものがインプットされる。前回紹介した『長命寺・桜もち』もそのひとつ。「こういう場所を覚えておくと、桜が咲いたら食いに行こうって、またここまで歩けるからね」と吉川は満足そうに話していた。

「そういうイベントって季節に関係があるものが多いじゃない。桜もそうだし、今なら紫陽花とかね。どこどこに紫陽花がきれいに咲いてるから見に行こうとか、それも楽しいと思うよ。若いころは面倒くさいと思ってたけど、それは“若い”というより、粋を知らないってことで、要するにガキなんだよ。自然を愛でて季節を味わいながら、例えば浅草なら帰りに電気ブランとかホッピーを飲んで、うりゃぁって酔っぱらえば、デートコースとしてもいろいろ楽しめていいんじゃない、って思うんだけどね」

 ところで肝心の長命寺はどこ? という話になり、桜餅屋から裏に回ると、思わぬところで渋い寺を発見。『牛頭山弘福禅寺』は、いかにも禅寺らしい年季を積んだ質素な佇まいがいい寺。その近くにある『三囲(みめぐり)神社』は、境内にたくさんの石碑があり、石碑ウォッチゃ-にはたまらない寺だ。「こんなとこにも七福神があるよ」。神社好きの吉川は七福神にもよく反応する。何かそそるものがありそうだ。「特別に好きってわけじゃないけど、東京にはすごい七福神が多くて、今までも、深川にもいたし、品川にもいたし、浅草にもいる。他にもいろいろいると思うから、七福神だけ回っても十分におもしろいと思うよ」。各々の場所にあるおいしいもの屋なども紹介しながら、独自ルートも書き添え、絵の得意な吉川がイラストを描いたりする『ロック七福神マップ』。そんなのができたらかなりおもしろいものになるだろう。

 その後は土手沿いの釣り堀がある公園でひと休み。暑い初夏の1日、売店で買って食べた氷がとてもおいしかった。「あの氷屋さんはいい機械を使ってたね。氷に対して歯がまっすぐ当たってないと、あんな淡雪みたいな氷は剃れないもん。多分、昔の機械を使ってるんだよ。昔の機械はよかったって感じだね」

 浅草に戻り、向かったのはかっぱ橋の道具街。料理も好きなこだわり人間としては、かなりハマるだろうと予想したのだが、「何度か来たことあるけど…」と、なぜか歯切れが悪い。「中華鍋を買おうと思って、中華料理屋の知り合いに、鍋のいい悪いを教わったの。同じ鉄でもプレスして伸ばしたやつは、厚さが均一だから火の回りがダメだって。プレスじゃなく、職人が叩いて作った鍋は、底のほうが微妙に厚くなってるからいいんだって言われたけど、なかなか見つけられなくて……」と、歩いていると、「これすごい!」。ある店の前で立ち止まり、吉川は目を輝かせた。「これはヤバイよ。取材じゃなきゃ、ずっと見てるところだね」。残念ながら時間の都合で長居はできなかったが、最後に「ひとつだけ聞いていい?」と店の主人に尋ねたのは「ハモ切りはどれですか?」。つまりその店は、包丁の専門店だったのである。

「自分でそんなにいい包丁を持ってるわけじゃないけど、刺し身包丁だけはちょっと高いかな。あとは出刃で、出刃は何にでも使ってる。俺は逆に普通の家庭で使ってる軽い包丁は使えないの。あれって軽いから押して切ってるわけだけど、磨いだ出刃なら乗せただけてスポンと切れるからね。でも、出刃は磨いであるのとそうでないのと2本必要で…」ということで、止まらない吉川の包丁談義は次回に続く。 

(つづく)

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長命寺の境内には残念ながら入れなかった。裏手の山門と石碑 牛頭山弘福禅寺 三囲(みぐるみ)神社。こころなしかたくましげな顔の狛犬
淡雪のようなかき氷を作ってくれた公園の売店 これが噂の“淡雪”かき氷 言問橋のたもとには紫陽花が咲き誇っていた。うっそうと、うつくしく、青、青。
後光差す浅草寺を通り抜け、かっぱ橋へ 噂の包丁屋の軒先。ずらりと揃った刃物、包丁 看板が大きな包丁だって気付いたかな?

2007年07月11日

 

第24回 台東区浅草~墨田区長命寺

桜もちの甘酸っぱい思い出

 浅草、雷門。浅草寺へと続く仲見世は平日でも人でごった返していた。「1本裏道がおもしろいよ」。吉川に促され脇道を歩き始めたところ、スタッフのひとりから「ここ、初めて来ました」の声が。「えっ、そうなの? じゃあせっかくだから中を歩こうか」。さりげなく優しい肩幅の広い男は、率先して観光地の人ごみに入っていった。

焼きたて煎餅屋や揚げ饅頭屋をのぞきながら、浅草寺で賽銭をあげて手を合わせ、まずは『花やしき』へと向かう。『花やしき』といえば、名物は軒先をかすめるジェットコースター。しかし「俺は乗らない」と吉川は言う。「あれは乗るもんじゃなくて見るもんだよ。ジェットコースターって、免許取り立ての女の子の助手席みたいで、脚に力が入っちゃってしょうがない。ないブレーキを一所懸命踏んでるからね」。要するに怖いわけですね。「いや、俺は自分が運転できないものには乗りたくないから…」。言い訳をするので次に向かうとしよう。
 それにしても、裏道を歩く吉川が反応するものはおもしろい。まずは『初音小路飲食店街』と書かれたひっそりした商店街。「夜とか来たら、おもしろい店がありそうだね~」。続いて「懐かしい!」と声をあげたのは古銭屋。「母親にお土産を買おうかな」とつぶやいたのは、ツゲの櫛の専門店。骨董品屋で古い火鉢を見つけると「ベランダに置いて、水をはって金魚を入れたい」と興味を示し、江戸切子の専門店では、涼しげな模様が掘り込まれたグラスを手にとり「キレイだね」としばらく見ていた。そうして浅草寺の周りを一周して雷門に戻ると、吾妻橋の向こうにアサヒビールのビルが見える。そのユニークな造形から“うんこビル”とも呼ばれるビルだ。「初めて見たときはゲラゲラ笑ったよね。これはウケ狙いだと思って。でも、すごくいいと思うのは、頭の固い社長なら“これは絶対にウンコって呼ばれる”って反対すると思うわけ。それを、むしろいいと判断したその大器、寛容な感じがいいよね」
 そこから吾妻橋を渡り、ある場所を目指し川沿いを歩いた。「確かこっちだったと思うけど…」。記憶をたどりながら吉川が進む。「俺、ちょっと見てくる」。そう言うと小走りに駆け出した。しばらくすると、遠くのほうで両手で大きな丸を作って合図している。記憶に間違いはなかったらしい。案内された入った店『長命寺・桜もち』の桜もちは、ほどよい甘味がとてもおいしい逸品だった。
「昔、女の子と来て食べたことがあったんだよね。歩いて、疲れると甘いものが欲しくなるじゃない。で、ちょっと食うかって入ったんだけど、当時はヘビースモーカーだったから、店内禁煙ってことで、外の壁に寄りかかって食べた記憶がある。俺は1個で、その子は2個。そのときもすごいウマくて、実は歴史のある有名な店だって聞いたのはその後。何か印象深かったから覚えてたんだけど、場所はうろ覚えだった。でも人間っておもしろいよね。ある景色か何かが目に入った瞬間に、ぶわーっと記憶がつながって、あのときはこうだったとか思い出すからね」。目の前の隅田川の土手は桜の並木。花見シーズンは景色も最高だろう。「こういう場所を覚えておくと、桜が咲いたら食いに行こうって、またここまで歩けるわけよ。昔は一切そういうことは考えなくて、ただ飲んでるだけだったからね。どこかに行こうって言われても、ウルサイ!みたいな(笑)。だから俺は、今のほうが女性には優しいかも。自分でそう思ってるだけかもしれないけどね(笑)」

(つづく)


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浅草といったらまずここからですか。 「裏道が面白いよ」…とまずは1本裏へ と思いきや、初浅草のスタッフのために仲見世の目抜きに戻る。優しい!
花やしき。火曜日定休。残念! 初音小路。そそられる裏道だ 棚がまたいい味出してます
古銭屋にはかの板垣退助もいた ユニークな店が立ち並ぶ伝法院通りへ およそブラシ状のものならなんでもおいているブラシ屋さんとか…
つげの櫛の専門店とか… 大振りの古民具も扱う骨董屋… 江戸切子のお店もあった
「うんこ」なオブジェ。すっかり東京の顔だがフィリップ・スタルクの作品って知ってた? 浅草寺から隅田を渡り、左岸を歩く。さくら並木が春の満開の美しさを思わせる で、見つけた思い出の桜もちのお店
『長命寺・桜もち』お茶とセットで1個250円 シンプルにして豊潤。香りも楽しめる。暑い日でもここで熱いお茶とセットで頼みたい 裏にはちゃんと長命寺