番外編 in PERUその2
“パイティティ”とは誇りの在処
9月28日に放送された番組を見た人は分かると思うが、ペルーでのロケは過酷を極めたものだった。「ひとつの山を越える間に四季があった」と吉川が言うように、高低差だけでなく寒暖差も激しい山をいくつも超えた。しかも狭い道の片側は1000メートルもの谷底。
「高所は得意じゃないけれど、それでも割と平気だったのは、凄まじすぎて非現実的だったから。風が強く吹くと向かいの尾根まで飛ばされそうな感じで、上昇気流に乗ってコンドルが舞ってるのを3回も見たよ。コンドルは神の使いと言われてるんだけど、普段はこんなに見ることはないらしいし、途中で熊や鹿にも遭遇して、“この旅は祝福されてる”って現地の人は言ってたけどね」
番組の企画そのものは、伝説の黄金都市エル・ドラドを探すものだった。吉川と番組クルーたちは、スペイン人による侵略と略奪をのがれたインカ人が黄金を隠したという夢の在処を探るため、発掘調査が進むチョケキラオ遺跡から深いジャングルへと分け入った。そして吉川がたどり着いた結論は、その場所は彼らの心のよりどころなのだということだった。
「彼らが言うところの“パイティティ”っていう黄金伝説の街は、どこかに絶対あるという確信は最終的には持ったけど、そこを探したいというモチベーションの底にあるのは、黄金そのものより、自分たちの誇りなんじゃないかと思ったよね。
唯一スペイン人たちに踏みにじられなかった自分たちの文明がどこかに残っているという心のよりどころ。その思いに突き動かされた人たちに何人も会ったしね。俺たちにとっては黄金じゃないんだって。でも、もちろん黄金もあったほうがいいけどね。ジャングルをガイドしてくれたイズバン君なんか、奥さんと子供がいるのに20年近くも探してるんだから。借金がかさんで大変だから見つからないと困るって(笑)。
イズバンには言ったんだけどね。もし見つからなくても、その年月の間にキミは貴重な体験をしたんだから素晴らしい人生じゃないかって。そしたら思いっきり“ノー!”って言われた。金が見つからなければそんなもの意味ないって。そんなことないと思うけどなって言ったんだけどね。
だからいい日本語を教えたよ。“日本にはキミのような人に称賛の意味を込めて『馬鹿』っていう言葉があるんだよ”って。脇目もふらずにひとつのことをやり続けることを、○○馬鹿。例えば俺は“音楽馬鹿”なんだよね、って教えたら、『ぜひとも次から使わせてもらうよ!』って言ってたかな。今度日本人に会ったら“私は馬鹿です”って省略して言いかねないけど(笑)」
吉川たち探検隊は、辛い行程をたどりながら日に日に結束を強めていった。同行したシェフの料理は簡素なものだったが、疲れた体に塩味の野菜スープがウマかった。満天の星を眺めながらのアウトドア・トイレもなかなかのものだった。そして吉川は、通訳として参加した、元センデロ・ルミノソの青年幹部だったという同世代の男性と、長い長い話を続けることになる。
(つづく)
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