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2008年02月12日

 

第34回 港区南青山~渋谷区広尾

ウーパールーパーと探偵物語

「ここはウチのファームなんだけどね」。青山学院大学の裏手の一角。吉川の案内で住宅街を歩くと、貫録ある古風な民家に出くわした。「知り合いの家なんだけど、仕事で長期間いなくなる時に、事務所の植物とか金魚とかを預かってもらってる。土の庭があるし、大きい水槽もたくさんある家だからね」

 今、そのお宅には、吉川がスタジオで飼っているウーパールーパーが預けられている。昨年秋に撮影でペルーに出向いた際に預けたもので、「結構大きくなっちゃって、うちの水槽じゃ狭くなってきてかわいそう」という理由で今も仮住まい中だ。

「あいつらは目がほとんど見えないから、冷凍キューブになった赤虫を食べやすい大きさに切って口の周りに持っていってやると、歯がない分ものすごい吸引力で吸い込む。でも、氷ってる餌だから飲み心地が悪いんだろうね、一度吸い込んでからペッペッと赤虫を2、3匹吐き出すのがバカすぎておかしいよ(笑)。手も最初は指がくっついてるのに、毎日動かしてるうちに動くようになってくる。子供のころからずっと見てるとおもしろいよ。餌をやるときに机を3回打つとか決めておくと。その音であがってくるからね。水中ではえら呼吸だけど、陸上だと肺が発達して肺呼吸になるとか、不思議な生き物だよ。食べると旨いらしく、それで数が激減しちゃって養殖が盛んになった。美味いとか、皮が重宝されるとか、すべては人間様のご都合しだいってわけ、おおよそ絶滅した生き物ってのは乱獲が主原因だという、傲慢な話だよね」

 六本木通りを恵比寿方向に渡り、坂を登ると、皇族の家の壁と隣りの塀の間が路地になっていた。何の意味もない路地でも、見つけたら入るのが吉川流。路地を抜けると右前方に国学院大学。その先にある氷川神社は、事務所の初詣で訪れた神社だそうだ。

「自分の初詣はいろんな神社に行ってるよ。毎日歩いてると、正月の三が日だけでも10や20の神社に出くわすから、それを一通り詣るというね(笑)」。この氷川神社には、今どき珍しい土俵もある。同行スタッフと「子供のころって必ず相撲大会があったよね」と、談笑する吉川だった。

 裏道りを明治通りへ向かう途中、一軒の魚屋を教えてくれた。『丸大魚店』という名前の古い魚屋だが、「表通りのスーパーより全然いい魚を売ってる。プライド持って商売してる」と、お墨付き。

 そして次に「おもしろいものを教える」と向かったのは、屋上を通って家に入る不思議なマンション。「傾斜地に立ってるからそうなったみたいだけど、内覧をやってる時に通りかかって、わざわざ見に行ったんだから。“ちょっと部屋探してるから見せてくれない?”って。一度屋上を通ってみたかったんだよね。礼を言ってすぐ帰ったら“もういいんですか?”って(笑)」

 そこから広尾高校前の信号に出て、駒沢通り方面へ向かいながらなだらかな坂を下る。歩きながら吉川は、もうひとつお気に入りだった場所の話をしてくれた。「このへんに、ドアの幅くらいしかない家があったんだよ。二階建てで、ものすごい細い。おかしな家だなと思って気に入ってたけど、ついになくなっちゃった。その家はね、もし自分が探偵物語みたいな映画とかプロモーションビデオを撮ることがあったら、絶対に住んでる設定にしようと思ってた。出入りするシーンでドア開けて出てきた時、家自体がそのまんまの大きさかよって思ったら笑えるでしょ」。そんな映像をぜひ見てみたかったと思ったが、それもまた時の流れである。

(つづく)

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吉川のウーパールーパはピンクと黒。これは別個体 氷川神社の土俵。ここまで立派なのは珍しい? 恵比寿の裏路地で見つけた『ゆ』。青空に映える