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2008年05月20日

 

第40回 渋谷区参宮橋~初台

 吉川お勧めの『刀剣博物館』は、文字通りさまざまな刀剣が展示されている博物館だ。参宮橋から初台に向かって代々木4丁目を左に、その先を右に曲がり、さらに道なりに左に曲がって行くと、閑静な一角にその建物があった。

「日本のものだけでなく、いろんな刀剣があっておもしろいよ。刃物を見ると燃えるっていうか、刃物って男のあり方みたいなものを象徴する例えになると思うんだよね。

「ナイフの香りがするとか、ナイフのように尖っていたいとか、よく言うじゃない。たぶん、あの光が人をぞくっとさせるのは“生命”に関わるからだと思う。生き死にじゃなく、その人の夢とか希望とか、生命観というか、生きてる証、みたいなね」

 ギラギラとした光に男の美学を見る吉川。人の有り様とは、誰とでも共有できるほど簡単でも分かりやすいものでもないが、少なくとも覚悟を持ったスタイルは言葉の端々から伝わる。

 住宅街をさらに進むと“刀剣”から一転、新緑の茂るのどかな遊歩道に出た。甲州街道と平行して走っているその道は、初台からずっと先まで続いているそうだ。

「一度調布まで歩いたけどね」。

 調布? と、思わず聞き返す距離だが、吉川は当たり前の顔で「そう」と答える。
「『珍竹林』っていう名前のラーメン屋があるんだよ」。

“ちんちくりん”という語感がツボらしく、ニコニコしながらラーメン屋の場所を教えてくれた。遊歩道脇には他にもさまざまな店鋪が並んでいる。「この辺はいわゆる作られた感じじゃない店がいっぱいあるのがいいね。古い家を再利用したコーヒー屋があったりしてオリジナリティーがある。夜になると若い奴らがワイワイやってるけど、いいなと思うよ」

 甲州街道を渡った向こう側には、吉川が「ものすごく気になってた」というタコ焼き屋があった。大ダコが入っているのが自慢らしく、看板のタコ焼きからはタコが飛び出ている。

「本当に大きいの?」。店の主人に吉川が質問する。「大きいですよ。でも、焼くとタコの水分が減っちゃうからねぇ。ほら、これを使ってるの」。そう言うとご主人は業務用の冷蔵庫から金属バットに入ったタコを取り出して見せてくれた。食した感想としては、「もっとキャベツと紅ショウガがたっぷり入ってるほうが俺の好み」。

 その後は「以前発見した」という昭和の香りのする古いマンションを見学し、その奥の空き地でひと休み。新国立劇場近くの商店街では、年期の入った甘味屋の前で足が止まった。「こういう店なら女の子と入っても粋だと思うんだよね」。普段は「ケーキ屋さんとかに連れていかれたら、俺はどの面下げて座っていいのか分からない」と言う吉川だが、同じ甘いものでもアンコ系は好きなようだ。

 「ふたりで着物を着て行きたい感じだね。外に赤いもうせんをかけたベンチがあったらなおいい。でも、着物で歩くならそれに似合う街並があってほしいから、金沢あたりに行かなきゃいけなかったりして、ちょっとしたデートなのにものすごく手間がかかる(笑)」

 ひとしきり甘味屋の話が弾んだところで、吉川から宿題が出た。「東京では、和菓子と一緒に必ずお稲荷さんとのり巻きを売ってるけど、あれはどうして? 西のほうでは売ってないよ。お赤飯があるのは和菓子に小豆を使う関係で分かるけど、理由を知りたい」。ということで調べたのだが、残念ながらいまだ核心に至らず。知恵袋求む!

遊歩道沿いにはユニークな店が並ぶ “昭和”なマンション。奥には公園が 店の前の公衆電話も懐かしい甘味屋