≪ 2008年05月27日 | Home | 2008年06月24日 ≫

2008年06月17日

 

第42回 渋谷区上原~世田谷区北沢

メダカにも弱肉強食の人生がある

 天気がよければ外で食う、が路地裏歩きの鉄則。東大裏にある『フレッシュネスバーガー』にはちょうど外で食べる場所がある。初夏の日差しの下、しばしアウトドアランチを楽しむことにする。
 この界隈は近くに駅がないせいか、通りにはいわゆる大型店がなく、のんびりした雰囲気。「駅が遠いのは不便かもしれないけど、俺はこういう街並み、好きだね」。そんな話をしながら東北沢の駅に向かい歩き続ける午後だった。

「ちょっと入ってみよう」。ということで、オープンカレッジの看板が掲げられた駒場東大の構内に進入。同級生の一人が東大の大学院に通っているそうで、「そいつが先生を連れて俺のコンサートに遊びに来てくれたことがあるんだけど、その教授が“いつでも講師やりに来てください”って言うの。何でも好きなことをしゃべっていいって言うんだけど、東大の講師なんて、俺がどの面下げてねぇ(笑)」。そう言って笑う吉川だが、これもまたちょっと見てみたい絵柄ではある。

「これこれ、知ってる? メダカの卵!」。ある家の前に置かれた鉢にザバっと手を入れると、水草を持ち上げて根の部分にくっついたプチプチした卵を指して吉川は説明を始めた。

「メダカってこういうところに何百個も卵を産むんだよ。よく見てるとカワイイよ。まず目がふたつ見えてきて、『オバQ』のO次郎の顔みたいになって、心臓ができて、どんどん形になっていくからね。ところが2週間くらいで何百匹が50匹くらになっちゃう。死ぬのもいるけど、食っちゃうの。急にデカくなるやつもいて、生存競争激しいなと思うよ。メダカだって弱肉強食。そういうのを子供に見せるのもいいよね。育てるのも手がかからないし、その意味を親がしっかり教えればいい。人を陥れろってことじゃなくて、自然の摂理とか。今は、机上の空論というか建て前ばかり教えるから、大人になって路頭に迷うんだと俺は思うんだよ」

 たどり着いた東北沢駅ではちょうど踏切が降りたところだった。足を止め、周りを見渡すと「あっ!」とひと声。「ちょっと見ていい?」。風情ある和食器の店に吉川は興味津々。「お客さんに出すぐい呑みを探してた」ということで、しばし買い物タイム。きれいな焼き色のぐい呑みと、凝った絵柄の小皿を見つけ、なかなかご満悦である。

 線路を渡り、左に折れ、下北沢に向かって進むと、今度は昔ながらの質屋の看板が見えてきた。「ちょっと行ってみよう」ということでさらに進んだが、なぜかその道は行き止まり。世田谷の迷路は手強いが、こんな時こそ吉川の“路地学”が鼻を効かせる。

 少し戻ったところで正真正銘の抜け道を発見。

「やったー! こういう路地がナイスだよ!」

 縦1列で歩いて抜けた通りには、また違う質屋が大きな蔵を構えていた。
「今どき蔵がある家なんて珍しいね。入り口の高さが低いのは、昔の人の背丈に合わせてるんじゃない? ずっと続いてる感じでいいよね」

 とはいっても、質屋の用途は時代によって変わりつつある

「今は女のコたちが、男に買ってもらった高価なものを売りにいくんでしょ。たまにテレビで見るけど、あれは男も情けないだろうね。同じものを複数の人に買ってもらって、ひとつだけ自分のものにして他は売っちゃうみたいだけど、男はかわいいもんというか、自分が買ってあげたと思ってる。せつないねぇ」

 そういう女性はダメかと聞くと、「いや、女がどうかというより、男が馬鹿だね」。そう言うと吉川はちょっと楽しそうに笑った。

(つづく)

※写真をクリックすると拡大画像が見られます。拡大写真の右側にマウスを重ねると「NEXT」ボタンが現れ、次の写真を見ることができます。

「これが卵」。魚に関してはかなりの知恵袋だ 駒場の東大。緑が多く散歩するのも気持ちいい 東大裏にある『フレッシュネスバーガー』1号店