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2008年07月29日

 

第45回 杉並区高円寺~堀ノ内

高円寺に住んでる人は骨がある!?

 歩いていて小腹が空いたら何を食べるか。吉川にとって頻度が高いのは、たこやきとソバ。特にソバは、ウマい立ち食いが好みだが、スタッフに女性がいたりすると、気を使って立ち食いじゃないソバ屋に入る。あまり表に出さない吉川の男のやさしさだ。この日も中野から高円寺に向かう途中、中野駅前の込み合った立ち食いソバを断念し、大久保通りの途中でさくっと天ザルを食し、一路高円寺へ。

「歩いてみるとかなり近かった」高円寺駅周辺でまず目に止まったのは、南口の線路脇にあったシブ~い飲み屋だった。

「椅子が全部ビールケースを逆さにしたやつなんて、今時なかなかないよ。外で飲める気楽さもいいし、俺はこういう店、好きだね」
 さらに線路脇を進むと、自転車置き場と思われる高架下に出た。
「こういうとこもいいじゃない。雨の日も運動できるしね。でもまあ、ここまで来て運動しても、帰りにはさっきの店でビール飲んじゃうでしょ(笑)」

 その後、「高円寺なら『高円寺』に行かないと」ということで、小道をくねくね曲がりながら『高円寺』にたどり着いた。小ぶりな寺ながら木々が多く、夏は緑の木陰が心地いい。自販機で飲み物を買い、境内でちょっとひと休み。高円寺は古着の街としても有名だが、吉川にも捨てられない古着があるそうだ。

「実家に置いてある高校時代のジャージーとか捨てられないんだよね。インターハイの時に着たやつとか。でもそういうのって、もう着ることはないから一番邪魔なんだけどね」
 きっと、邪魔だけど捨てられないモノのほうが、思い出がつまっているということだ。
「ま、そういうことだね」

 そして高円寺といえば、吉川には切っても切り離せないモノがある。

「俺にとっては、高円寺といえば大澤誉志幸なんだよね」
 大澤は吉川よりデビューも年齢も先だ。「尾崎(豊)なんかと飲んでるころ、いつもフラッとやってきて先輩風を吹かせるというね(笑)。ちょっと風変わりなところもあるけど、俺は全然好きだし、音楽家としても尊敬してる。ただ、普段見てると相当おもしろい人だよ。デビューしてからも地元の高円寺にずっと住んでて、家の近くに作ったスタジオに遊びに行ったこともあるよ。だからかもしれないけど、高円寺っていうと、ミュージシャンとか役者が住んでるイメージがあるよね。下北沢もそうだけど、下北のやつらより骨があるっていうか。こんなこと言ったら下北に住んでる人に悪いけど、今の下北は昔と変わっちゃったから」

 ちょっと歩き足りないということで、南下して蚕糸の森公園へ向かい、真盛寺、妙法寺と寺回り。
 雨模様の空を見上げ、「梅雨って、梅の実が生る時期に降る雨だから“梅雨”って書くって知ってる?」と、風流なことを教えてくれた。

「うちの母親もこの時期に梅を漬けてるよ。柔らかいけどすっぱい梅干しで、俺はすっぱいのが好きなんだよね。今は甘いのが流行ってるし、ひと粒いくらとか高いやつが売ってるでしょ。でも俺は、そういう流れが好きじゃないんだよ。今、チョコレートとかも無駄に高いのがあるけど、高く売れる嗜好品を先進国が作らせるために、日々必要な食料を作れなくなってアフリカとかが飢えるという図式がある。そういうことに俺は腹が立って仕方ないの。だからそういうものを高く売るやつは大嫌いだし、喜んで買うやつはもっとバカだって思っちゃうけど、こういうことを女のコに言うと、またアウトなんだよ(笑)」

 梅雨の話だったのにな…と思いながら、いつもの吉川らしさが心地いい午後だった。

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路地にあった吉川好みの飲み屋。レトロだ 『高円寺』を探す途中で通ってみた路地 妙法寺。「古い木の作りもいい寺だね!」

2008年07月15日

 

第44回 中野区中野ブロードウェイ

あのころの怪獣やヒーローは美しい!

「変わってないねー。ここに足を踏み入れるのは20年ぶりくらいだよ」
 今回の路地歩きの集合場所は、中野サンプラザの近く。まずはアーケードの商店街を抜け、中野ブロードウェイの階段を上りながら、吉川にとっての“中野”話を聞いてみた。
「デビュー当時は中野サンプラザでよくライブとかやってたね。去年、久しぶりにやったけど、その前も5年くらい間あけてるから。あとは、知り合いのアップビートっていうバンドのベースさんが、この近くで小さいバーをやってる。…

「俺の同級生で以前一緒にツアーをやってたドラムのマロ君が、1週間に一度そのバーに行って遊んでるから、広島の同級生と一緒にたまにそこで飲んだりね。俺にとっては都心から中野あたりまでは徒歩圏だから、ふらっと歩いてくるんだよ」

 話しながらいよいよ2階フロアに侵入した。

「はぁ~、こんな感じになってるんだ。秋葉原みたい」
 と吉川が言うように、アニメ関係の店や、フィギュアの店など通好みのショップがずらりと軒を列ねている。骨董品屋をのぞいては、「こういうカメラうちにもあったよ。しかし古い焼き物とかに目がいっちゃうのは、ジジイ化してる証拠だな(笑)」。ゲーム屋の店先で懐かしい『GAME & WATCH』を見つけては、「これもうちにある! 授業中によくやってて、おこられたよね」。

 そして吉川の目の色が変わったのは、怪獣やヒーローもののフィギュアを扱う店に入ったときのこと。袋詰めされてずらりと棚に並んだ5~10センチ大ほどのフィギュアを前に、終わらない話が始まった。

「イナズマンって知ってる? 最初サナギマンっていうイモ虫みたいなのに変身してからイナズマンになるんだけど、サナギマンの時に攻撃されるとすごく弱い。それを乗り越えて強いイナズマンになるわけで、そこで子ども時代の俺は“耐える”ってことを学んだんだよね。忍耐を積まないと強くはなれないんだと(笑)。キカイダーにしても、人間が悪事を働くために作った人造人間なんだけど、もとからあった良心が悪と戦って勝ってしまったから、キカイダーは正義の見方になった。デビルマンみたいなもんだよね。

 でも、キカイダーを作ったギル博士がある笛を吹くと、脳が悪い気持ちに負けそうになって死ぬほど頭が痛くなる。善と悪の戦いというか、俺たちが子どものころのヒーローのほうが、いい意味で暗さがあった気がするね。ヒーローでも苦節何年とか、人間と同じように傷ついたりするところを見せたからね。人間の延長というか、教訓とか精神性がちゃんと描かれてた。バロム1とか合体もののヒーローは、子どもがふたりで1コになって変身する設定で、気持ちが通じ合ってないときは変身できないの。喧嘩したり、どちらかが我を通したりしていざこざがあると強くなれなくて、そこでふたりは間違いに気付いて仲直りするという。今考えると笑っちゃうけど、小学生にはそういうのも必要かもね」

 話の途中、吉川はフィギュアを見ながら何かの主題歌を口ずさんだりしていた。「こういうのって、見た瞬間にその時代に戻るよね。時の隔たりがなくなるというか、今見ても造形が美しいと思うからね。怪獣にしても何にしても、やっぱり作り手の思いみたいなものが滲んでる美しさだと思うよ」

 いかにも楽しそうな吉川だが、後ろ髪を引かれながら、一路高円寺へ。線路脇の『佐世保バーガー』は、サンプラザのライブでよく差し入れられた思い出の味だということだった。

(つづく)

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中野ブロードウェイ。入るとなかなか出てこられない 小腹が空いたので立ち寄った駅前のそば屋。満席で断念 大リーガーの城島が好物だったという『佐世保バーガー』