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第46回 港区赤坂6丁目周辺

家も人も、感じ入るのは心意気

「俺はここに住みたいんだよね」
 港区赤坂という住所表示のある坂を下ると、目の前にそびえるのは東京ミッドタウンのビル。まさか吉川がそこに住みたいと言うはずがない…と思いながら坂の下の目を転じると、ミッドタウンと対峙するように、壁に蔦をはわせた、古めかしいが立派な一軒家が目に入ってきた。

「大きな木や緑があるのがいいなと思ったけど、一番なのは、隣りにミッドタウンができても頑として古いままそこにあり続けるという心意気。古い建物だから耐震構造の問題とかあるだろうし、中の梁なんかは直したほうがいいと思うけど、一見豪華に見えるバブルっぽいビルより全然素敵だと思う。何がカッコイイか、逆じゃない?ってね」

 東京のど真ん中で存在感を光らせるその住居のあたりから、今回は赤坂の入り組んだ路地へと足を進めた。赤坂6丁目界隈の裏通りには昔ながらの名前のついた坂が多く、人通りがまばらなのがウオーキングには最適。まずは、小さなレストランの前で『勝海舟邸跡』という表示を発見した。

「勝海舟さんってのがまた、俺は大好きで、頭を下げて通らなきゃいけない人だね。当時、幕府側のトップでありながら倒幕派の連中の話も聞き、坂本龍馬をいろんな局面で助けたりもした。鎖国を続けたら日本はダメだという先見の明を持っていたから、敵味方じゃなく将来の日本のために動いたわけで、俺はやっぱりそういう心意気に惚れるところがあるね」。住居跡を記した看板には、勝海舟は赤坂の地を愛し、終生赤坂に住み続けたと記してあった。

 通りをさらに進むと、いかにも老舗感のある漢方薬店が存在感を見せている。「ふらっと入ったことがあるけど、あんまりウェルカムな顔はしてもらえなかったよ(笑)」。確かにそんじゃそこらの漢方薬屋とは異なった風情がある。「一度ちゃんと入りたい」という吉川だが、今日は入るのをやめ、突き当たりを右に折れて氷川神社へと向かう。

 吉川の案内で裏から神社の境内に入ると、大きな銀杏の木陰が心地いい。「ここはすごい穴場。普段はめったに人が来なくて、休むのにちょうどいいんだよ」。神社を抜け、氷川坂を下ると、高い石塀の下に不思議な入り口を発見。「これ、何の入り口か分からないでしょ?」。珍しいものを紹介するときの吉川は、内心「むふふ」という顔をしている。促されるままカラカラと戸を開けてみると、中には長い階段。そこは坂の上の料理屋に続く“知ってる人しか開けない”入り口だった。坂のすぐ下には、手書きで『氷川菜園』と書かれた空き地もある。のぞいてみると、トマトとナスが生えている。吉川が都会の野菜作りに目を止めるのは、自らそれを実践しているからでもあるようだ。

「今朝も事務所のベランダでキュウリとトマトとピーマンを収穫してきたよ。まあ、収穫が目的というより、ベランダは放射熱がキツイからなるべく緑を増やそうと思って始めたんだけどね。プランターでも、金魚の水槽に入れてる土を撒いたりすると、糞が肥料になってよく育つよ。今みたいにアルバム用の曲作りをしてるとスタジオにこもりきりでおかしくなりそうなときがあるから、たまに会社のベランダでピーマンや金魚を見ると、少しはまともな角度に気持ちを戻してもらえる感じがするからね」。もちろん、自分で作ったものはウマイってのもあるけど、と、吉川はまた少し「むふふ」という顔を見せた。赤坂ワンダーランドの探検はまだまだ続く。

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ミッドタウン近くで存在感たっぷりの蔦の家 勝海舟邸跡は、ランチの美味しそうな店だ 吉川も興味津々。赤坂にあったシブ~い菜園

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