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第52回 中央区築地~月島

勝どき橋を走った17歳の吉川晃司

 昼を過ぎても築地場外市場はにぎわいを見せていた。「夏に知り合いを集めてBBQをやった時は、ここで大ぶりの伊勢エビを一匹2000円で買ったからね。東京じゃ普通はありえない値段だけど、全部買うから安くして、他のも買うから安くしてって値切って買っちゃった」。買い物上手は交渉上手。値切るのもコミュニケーションのひとつなのだ。魚好きの吉川は、「ちゃんと築地を歩く時は、また別の機会に早朝の場内に行こう」と言いながらもさまざまな店の前で足を止める。「ここでよく包丁を買った」という包丁屋正元の前では、プロ仕様の道具の説明もしてくれた。「貝を開けるヘラは普通1本のヘラで全部やっちゃうけど、本当は貝によって道具が違うの。赤貝用とか平貝用とか。牡蠣なんかはやっぱり殻ごと買って自分で開けて食べたほうが断然ウマイよ。海の香りが苦手っていう人もいるけど、田舎のきれいな海で育った連中にとっては、たまらなくいい香りなんだよね。殻を開けて、海水と牡蠣のエキスが混じり込んだそのままをいただくんだけど、ちょっと柑橘系を搾ってもいいね。だから、牡蠣の香りや味の違いは、育った海に左右される。これからの季節、ナマコもはずせないな、俺としては。これもね、えもいわれぬいい香りさ。コラーゲンが豊富だし、身体を内から暖めてくれるらしいから、女性にもいいでしょ。ひとつ、いいこと教えるね。牡蠣をフライにする時、小さい牡蠣は2つ一緒に、靴を箱に入れるみたいに腹を重ねて揚げるんだよ」。なるほど、と感心していると、「なんちゃってね」と照れ笑い。ウマそうな話によだれが出そうになってしまった。

 刺し身などの皿を売る店では、盛りつけのこだわりで話が弾んだ。「スタジオで曲作りしてる時なんか、気分転換したくなることがあって、そんな時は近所の仲間に声かけて刺し身を振る舞ったりするんだよ。檜のまな板に、お新香、ミョウガ、大葉にモロキュウ、大根のツマなど、いろんなものを盛りつけるの。アート感覚っていうか、カッコよく言えば枯山水みたいな感じ。作ってる時は無心になれるし、食べた人は喜んでくれる。そういうのをやるのが好きなんだよね」

 築地6丁目から晴海通りを渡り、勝どき橋に向かう途中では、さらに思わぬ話も飛び出した。「昔、この通りを半パンにびしょ濡れのワイシャツで何度も走ったよ」。もちろん実話ではない。デビュー作となった映画『すかんぴんウォーク』で、東京湾をバタフライで泳いできて上陸する有名なシーンでの話だ。「当時は勝どき橋のどんつきが海で、そこから上陸、晴海通りをハダシで走って、走ってる間に体が乾いて、皇居のところで、はとバスに潜り込むっていう設定だったんだよ。映画っていろんな角度から撮るから、泳ぐのも走るのも10回以上繰り返して、今思うと感心しちゃうよね。撮影してる時はデビュー前で無名だから、通りすがりの人が“AVの撮影?”“そういやアイツ、AVで見たことある”なんて適当なこと言ってたりして(笑)」。その時17歳の吉川晃司が走った道を、来年デビュー25周年を迎える吉川が歩く。橋からの眺めは時代と共に変わっても、人はそうそう変わらない。あのころの青さや熱さは形を変え、今に脈々と受け継がれている。それを証拠に(?)、その後向かった月島の駄菓子屋では、30円と10円の懐かしいゼリーのおやつに大はしゃぎ。吉川が手にしたのは30円のヨーグルト味。「30円のほうが絶対にウマイ!」と笑う姿は、まさに少年のままなのだった。(つづく)

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築地の露天でドライ桃を購入。ウマかった! 場外の魚屋で生子を発見!「ウマそうっ!」 「月島は表通りより路地の雰囲気がいいね」

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