第55回 渋谷区猿楽町~目黒区中目黒
あこがれの日本家屋で鴨居にゴン
並木橋の脇を通り、路地を抜け、“裏”ルートから代官山を目指してたどり着いたのは、代官山アドレスの裏側。八幡通りを横切り、武家屋敷風の駐車場をパスしながらヒルサイドテラス方面に足を進めていたとき、「このあたりにあるバリ風の洒落たレストランに来たことがある。店の外のテラスに水が流れてるようなとこ」とふいに吉川が言う。いつもの吉川からすると洒落た場所に自ら行ったとは意外だが…「NHKでやった『真夜中は別の顔』の撮影でね」というから納得だ。「出演していた大澄賢也さんを水に落とす場面で、なんだかすまなくてね(笑)」
ヒルサイドテラスに着くと、「デビュー当時、ここにあったサンドイッチ屋によく連れてこられた」と吉川。その店『TOM'Sサンドイッチ』は、本日も営業中。平日午後のヒルサイドテラスにあまり人影はなく、冬の温かい日差しがちょっとしたのどかさを演出していた。
「こっちこっち、この日本家屋にずっと行ってみたかったんだよね」。吉川が手招きする先には、堂々たる姿を見せる時代がかった家屋があった。傾斜地になっているため、ヒルサイド側から屋根に飛び移れるほどその距離は近い。「どうやって入るんだろう? この柵を越えれば屋根づたいに…」と、大人らしからぬ相談をしながら、なぜかコソコソと道路側に回ると……。「あれっ?こんな入り口、あったっけ?」。聞けば、去年の6月から一般開放されたという。広大な日本庭園を有するその建物は、重要文化財となっている『旧朝倉家住宅』。入館料100円を払い、靴を脱いであがり、大正時代の和風建築の趣を色濃く残す家の中を歩きながら、「いやー、素晴らしい!」と吉川は感激しきりだ。「昔からすごい屋敷だと思って見てたけど、こういう家で、着物着て、夏は縁側でスイカの種を飛ばす。そういう生活が一番贅沢だね。このまま押入れに隠れて、閉館してからひとりでゆっくり楽しみたいよ(笑)」。子どもならやりそうなことですよね、と返すと、「大人になったからなおさらやりたい」と吉川。「もし解体してビルにするなんていったら、絶対やりに来たい。それなら通報されてもいい(笑)」。昔の家だから、ほらね、と吉川は鴨居に「ゴン」と頭をぶつけて見せる。182センチの体は、この家にはちょっとだけ大きすぎるようだ。
その後は、高台にあって景色のいい西郷山公園で休憩し、坂の下の菅刈公園にも立ち寄り、坂に沿って作られた都心では珍しい畑を見に行った。「いつも子どもがいっぱいいるんだよね。学校で畑をやってるのかもしれないけど、そういうの、いいんじゃない」。そして今回の締めは、目黒川を渡った中目黒にあるなじみの金魚屋。「金魚を始めたときにいろいろ教えてもらった」という『熱帯魚 かのう』は、魚好きのご夫婦で経営しているアットホームな店。錦鯉から、飼育用の鮫、エイ、そしてアマゾンから来た巨大なピラルクーまで、ちょっとした水族館のようだ。特にピラルクーは「ばかデカさに笑っちゃう」と、吉川も大笑いしたほど見応え十分!「魚って見てると癒されるし、美しいね。なんで魚が好きかって、“野生”の近くにいたいっていう気持ちもあるのかもしれない。今の犬とか人間と友達みたいな存在もいいのだろうけれど、俺は毒されてない魚がいいかも。ウロコなんて鎧みたいじゃない。ちょっとゾクッとするというか、本能が喜ぶって感じかな」
吉川にとって、今年はデビュー25周年。来年2月まで続くアニバーサリーイヤーは始まったばかりだ。
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