番外編 吉川が姜尚中氏とトークショー!
「今日は革ジャンを着てくるはずだったけど…」
2月4日、吉川晃司と姜尚中氏という異色のトークイベントが恵比寿ガーデンホールで行われた。
194回を迎える『コーセーアンニュアージュトーク』で顔を合わせたふたりだが、実は1週間ほど前まで面識はなく、「お会いしたことはないけど、『朝まで生テレビ』に出演されてるのを見てたからね。発言の内容も、非常に好きな方ではありますよ」と吉川は話していた。それから数日後、顔合わせの意味も含めて初めて会ったふたりは、なんと「(午前)3時ごろまで飲んでたよね」と、姜氏が明かすなど、すっかり意気投合した様子。ステージに登壇した姜氏の登場テーマは意外にもロックの名曲『BORN TO BE WILD』。好きな曲だそうで、「この間飲んだ時、今日は革ジャンを着てくると言ったんですが…」と姜氏。吉川も「そういえば俺も革ジャン着てくると言いましたよね(笑)」と、酒の席ではワイルドに盛り上がったことをうかがわせた。
話は最初から意外な方向へ進んだ。
「吉川さんって、松田優作さんに似てるんですよね。だから、お会いする前は、きっとやんちゃで、少しあんちゃん風な人かなと」と姜氏。「あんちゃん風とはどういうことで…」と吉川が尋ねると、「うつけということです(笑)」。しかし、松田優作にしても吉川にしてもそれは表面的なイメージで、松田優作が実は演劇青年でとても繊細な人間であったように、吉川にもそういう一面を見たと姜氏は力説。「このままいけば、多分吉川さんは、緒方拳さんのような役者になる人だと思う」と断言。返答に困る吉川に、「ゆくゆくは日本映画史に残るような役柄を演じてほしい」と、役者・吉川にエールを送った。
そしてふたりは、人生には挫折も必要という話に入っていった。吉川も、30代で人間不信に陥りそうなほどの挫折を一度経験している。「姜さんも著書の『悩む力』に書かれてましたけど、人間、ずたずたになったときはそれがチャンスだと思えないけれど、越えていくうちに、これを体験しておかないと見えなかったものがたくさんあると気付いていく。僕も挫折があってそう思うようになった。それがなければもっと楽な道だったかもしれないけれど、もっと奥にある深いところは見えなかったと思う」と吉川。それに対して姜氏は「僕、10年前の吉川さんだったら話ができなかったかもしれない(笑)」とジョークを交えながらも、「陰影があるというか、人間のひだが分かりそうな人だと思った」と応えた。含蓄のある話はさらに続き、「孤独なときは、意外と本によって助けられる」「誰しも若いころに輝く時があるが、それを美しさだと思うと間違える。若いということに価値がある文化というのはおかしい」「今は分かりやすいものが求められるが、分かりやすいものがいいものではない」など、物事に対するふたりの感性はどんどん寄り添っていく。「でも、(本にしても)分かりやすさで人を救ってることがある。ある時の本のサイン会で、精神的に悩みを抱えた方に“これで慰められました”と言われて僕はすごくうれしかった。その本が例えば学術的に価値はなくても、人にとってそれはどうでもいいこと。その人の悩みにヒットすれば、それは決して浅いことじゃない」と、姜氏がエピソードを明かすと、吉川も深くうなずく。時にズバッと一刀両断するような物言いで笑いをふりまきながらも、ふたりの人間を見つめる思いがあふれたトークとなった。
そろそろ終了の時間にさしかかったころ、「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」と姜氏。「吉川さんの車はフェラーリでしょ。乗ってる時はどういう気分になるの?」「いやぁ…」「じゃあ、それは僕に贈与してもいい? 色を赤に変えて贈与してくれれば、僕は東大の赤門を赤のフェラーリで行く」「赤がお好きですか?」「いや、赤門だから赤がいいかと」。このやりとりを真顔で聞く観客に、「みなさん、今、笑うとこですよ」と、吉川が場を盛り上げる。最後には吉川の伴奏で姜氏が、「49歳で亡くなった一番の親友が好きだった」という井上陽水の『傘がない』を披露する一幕もあり、1時間50分に渡るトークイベントは終了した。「またぜひご一緒に酒を」と吉川。笑顔で握手するふたりは、やはりどことなく似ている気がした。
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