≪ 2009年02月 | Home | 2009年04月 ≫

2009年03月23日

 

第58回 港区麻布台~麻布十番

あってよかった麻布の『がま池』

 飯倉片町から新一ノ橋交差点に向かって左側の高台には、大使公邸や外国人住宅が立ち並ぶ閑静な一角がある。時流にとらわれずしっかりと建てられた邸宅を見学するのはなかなか楽しい。「こんな家だったらいいね」など、住みたい家の話をしながら高台エリアを抜け、鼠坂を下ると、かつては町工場が多く下町感覚の残る東麻布エリアに突入。麻布は場所によって街の雰囲気がくるくる変わるのがおもしろいところだ。表通りに出ると道の向かいには、「洋風の料理を作るときはよく利用する」というスーパーマーケット『NISSIN』があり、右に進めば麻布十番。吉川が若い時代のひとときを過ごした街だけあって思い入れも強いところだ。今は地下鉄の駅ができて便利になった分、「麻布十番らしさがなくなった」と残念がる吉川ではあるのだが。「俺が住んでたころは、着物来て歩いてるおっさんがいたりして、粋な感じがあったんだけどね。便利を取るか、その街らしさを取るかは難しいところだね」。それでも昔ながらのモノは探せば残っている。まず紹介してくれたのは、「安くておいしい」八百屋。続いては、「十番といえば焼き肉だけど、おすすめの店を教える」ということで、焼き肉屋へと向かう途中で見つけた古めかしい洋菓子店『プランス』。「どうせ紹介するならこういう店にしたいね」と吉川も納得の様子だ。『フランス』でなく『プランス』というのも愛嬌で、入り口のひさしは色褪せてはいるがトリコロールカラー。「買い食いしよう!」と盛り上がり、店内に入ると先客の女性が「3色シュークリームがおいしい」と教えてくれた。

 おすすめの焼き肉店『千栄』は、仙台坂下にほど近いエリアにあった。「本場の韓国料理を食べさせてくれる店で、ウマイよ!」と、吉川。ウオーキングスタッフの若い男性から、麻布十番でデートするのにいい店を教えてと訪ねられ、「焼き肉じゃないほうがいいときは、この先に有名な洋食屋の『EDOYA』があるし、釜飯の『村田』もウマイよ。食べた後は、『EDOYA』の脇を入ったところにあるバーみたいなのもいい感じだし…」と、レクチャーしながらも話しは思わぬ方向へ進んでしまった。『村田』の近くに輸入下着屋を発見したときのこと。「デートの帰り際にはこういう店に寄って、“これを着てほしかったんだ”って下着を買うとか(笑)。でも、セクシーなのを選んだらエロオヤジと思われるし、かといって800円のとかでも怒られそうだし(笑)。なぜ女性は下着に高いお金を払うんだろうね。男同士で話してると、“今日は下着がそろってないから絶対見せられない”って言われたとか聞くことあるけど、男からすると、下着の時間はさほど重要じゃないというか…(笑)」。思わぬ下着トークはその後もしばらく続いたのだった。
 六本木から始まった麻布ウオーキングの終着点は、「がま池に行こう!」という吉川の一言で決まった。場所は、仙台坂上にある麻布グラウンドの前の路地を入った一角。今はマンションに遮られて表からは見られないが、この日は、裏の空き地からのぞくことができた。「昔の地図を見て、この池を見つけた」と吉川。「何回歩いても見つけられなかったんだけど、どうしても見たいと思って探して、ある時、建物の隙間を入って見つけたの。今日も見られて良かったよ。この空き地に建物が建っちゃったらまた見られなくなるからね」。ふと気付くと、外国人の男性が、池をのぞく吉川に興味津々な眼差しを向けている。吉川が立ち去った後、その男性は買い物袋を下げたまま『がま池』に向かって行った。

※写真をクリックすると拡大画像が見られます。拡大写真の右側にマウスを重ねると「NEXT」ボタンが現れ、次の写真を見ることができます。

「安くておいしい」麻布十番の路地裏の八百屋さん 3色シューは生クリーム、チョコ、カスタードの3種 ついに見つけた『がま池』。竹林の間に青い水面が

2009年03月09日

 

第57回 飯倉片町~麻布台

好きなのは『キャンティ』、スペイン村、地下道!?

「この道、通ったことある?」。飯倉からホテルオークラ方面へ向かう道を渡った最初の曲がり角で、吉川は右の坂を下り始めた。そこは細い道が入り組んだ麻布の“谷”への入り口。近年整備された坂道も、昔風の民家の屋根が見え始めると同時に、ゴツゴツした細道に変わっていった。二階建ての古い家の屋根には、昔なつかしい木造のベランダがしつらえてある。「以前はこういう家、多かったよね。ドラマの『寺内貫太郎一家』みたいな世界。お父さんに怒られた後に、子どもとお母さんが話をするのはいつも屋根のベランダみたいなね。星を眺めながらとか。でも今は、そうやって仲直りする場所がなくなっちゃったよね」

 麻布郵便局の裏にあたるこの一角には、用がなければ入ってくる車もほとんどなく、静かな路地には冬のあたたかな日差しだけが降り注ぐ。テクテクと散策を楽しみながら、落合坂を上り、表通りに出て左に折れると、「昔、何度か来たことがある」という都内でも珍しいベラルーシ料理のレストランが。その前を通り、飯倉片町に戻ると、以前よく顔を出したという老舗イタリア料理の『キャンティ』がある。西麻布にも支店はあるが、吉川はやはりこちらがお気に入りだ。

「旬の手長海老のグリルとかカニのポタージュがおいしくて、しょっちゅうそれを食べてたよ。花ズッキーニにモッツァレラチーズを詰めて揚げたやつなんかもいいね。女のコを連れていくと、なぜか知り合いに会ってしまうという(笑)。ひいきにしてた店の人が、郷里に戻って店を始めてから少し足が遠のいてるけど、俺にとっては思い出深い場所。ふたつくらい上の世代のカッコイイ大人たちが集まってて、俺も最初は上の人たちに連れて行ってもらったんだけど、おしゃれな大人がいたっていう感じだよね。今、50代後半から60代くらいの人たちかな。そういう場所に背伸びして行ってる感じは自分でも嫌いじゃなかった。若造が行きにくい場所って、あってもいいよね」

『キャンティ』の脇の路地を下ると、通称“スペイン村”と呼ばれる欧風のタウンハウスが並ぶ一角があった。「よく撮影で使ったりしたけど、こういう手作り感のある家っていいよね。昭和初期とかに日本人が作った洋館みたいな、仮面ライダーとかによく出てきてたようなね」

 例えばコンクリートの打ちっ放しのような「無機質なのは好きじゃない」と吉川は言う。逆をいえば、個性があり、手間暇かけてこだわった無駄があるようなものが好き。それは吉川の音楽にも、生き方にも共通しているようだ。ちなみに「本気で住んでみたい」と思っていたスペイン村だが、吉川が若かりし当時はほとんど空きが出なかったそうで、いい物件は人の出入りが少ないということだ。

「ちょっとおもしろいもの、見せるから」。吉川が取材スタッフを促して向かったのは、スペイン村の脇道から広い通りに出て階段を下った地下道。入ってみると、地下にもぐっている首都高速をバンバン走る車が眼下に見えた。もやっとした地下道の明かりも、なんともいえない不思議空間を演出している。外に出て場所を確かめると、飯倉片町の交差点に近いあるアンダーパスだったのだが、横断歩道があるからわざわざ通る人は少ないだろう。「ね、おもしろいでしょ」と、ちょっと得意気な吉川である。その後は麻布十番に向かったのだが、まずは新一の橋に向かって左手の高台にひょいと入り、大使館公邸や外国人住宅が立ち並ぶ閑静な一角に歩を進めた。

(つづく)

※写真をクリックすると拡大画像が見られます。拡大写真の右側にマウスを重ねると「NEXT」ボタンが現れ、次の写真を見ることができます。

1階の屋根にベランダがある昔なつかしい日本家屋 日本のイタリア料理の草分けでもある『キャンティ』 首都高速を見下ろせる地下道。おもしろい空間だ