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2009年4月27日

 

第60回 港区芝浦~浜離宮

小綺麗って、貧しい空間じゃない?

 吉川は、芝浦運河沿いの遊歩道をレインボーブリッジ方面へと向かっていた。遊歩道沿いの空き地には、のんびりした時間を楽しむ人がちらほらと見受けられ、東京にもお散歩ブームが到来していることを感じる。その分野では“先駆者”の吉川は、そこから海岸通りに戻り、巨大な日の出水門を横に見ながらさらに先へ進む…と、気になるものを発見した。水路の脇にある『あずま発着場』。古びた船着き場で、「もうやってないんじゃない…? いちおう行ってみる!?」。ということで路地を回って着いてみると…、「やっぱりやってないよ!」。まあ、こんな寄り道も時にはおもしろいものだ。

 さらに先に進むと、今度は「あのラーメン屋、結構うまいよ」と、とある店を紹介。そこで昼ご飯を食べようという話になったが、ウマイ店は込んでいて、断念。さらに歩き、レンボーブリッジの付け根付近にある芝浦スタジオまでやってきた。ここには録音&撮影スタジオがあり、吉川もリハーサルなどでたまに訪れることがある。スタジオの前の塀を乗り越えた空き地は吉川にとっての「穴場」で、「リハの合間に、天気のいい日は寝っ転がって日焼けしたり、海を見ながらボーっとしたりしてるよ」。ということで本日もここでしばし休憩。目の前ではレインボーブリッジが巨大な弧を描いていて、なかなかの絶景ポイントだ。
「夜に一番海側のほうまで行くと、スズキとか釣れるんだよ。釣っても放すんだけどね。雨が降ったときは、リハの合間にレインボーブリッジの歩道に上がって、軽く走ったりしてるよ。高速が上にかかってるから雨に濡れなくていいんだよね。でも、このあたりも小綺麗になっちゃったけど、俺は“小綺麗”っていうのがどうも好きじゃないんだよね。街にしてもさ、例えばニューヨークのソーホーみたいに、たまたま家賃が安くて便利だったからってことで、絵描きとかいろんなアーティストが自然に集まってできた街は素晴らしいと思うけど、東京でも企業が先行した場所はわざとらしいし、いちいち金かかるようにできてて、そういうの見てると、これって貧しくないか?と思っちゃうんだよね、模造品だなと」
 のんびり日向ぼっこしながら、いろんな話をした。自然の近くで聞くほど、吉川の反骨トークは含蓄を帯びて響く。
 ラーメン屋が満杯で食べ損ねた昼食は、浜離宮に戻る途中に弁当を買い、竹芝桟橋近くの公園で食べた。弁当だけではバランスが悪いからと、吉川はコンビニで野菜の総菜を数点購入。ベンチに食べ物を広げると立派なランチに早変わりだ。
 浜離宮に向かうルートは、最初は海岸通りの一本海側の道を歩き、その後は海岸通りをひたすら新橋方面へ。東京湾側には港湾関係の巨大な倉庫やトラックなどが並び、“巨大なモノ萌え”を感じるおもしろい風景だ。「昔はこのあたり、もっとあやしい雰囲気だったんだよね」と吉川。夜は出歩いちゃいけないような感じですか?と聞くと、「そう、だから俺は夜に歩いたりしたけど」。なるほど。だから危なかったのでは…。「あ、あはは(笑)」。
 浜離宮は素晴らしい庭園だった。木の美しい枝ぶりを見たり、生い茂った葉がドームのような天井を形作っている中に入り、木漏れ日を浴びたりしながら、吉川の案内で庭園をくまなく歩く。「あっちに行ってみようよ」。促されて向かった先は、一面の菜の花畑。「海際、山際というより“自然際”が好き」と吉川は言う。年齢に関係なく、こんな美しさをちゃんと感じられるようでありたいと思った。


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おすすめのラーメン屋。「なかなかウマイよ!」 「穴場」の日向ぼっこ場所から見た橋と海の景色 浜離宮にある樹齢300年の松。「等身大の盆栽だね」

2009年4月13日

 

第59回 港区大門、浜松町周辺

立ち飲みにあこがれた少年時代

 待ち合わせ場所は大門駅の近くにある焼き鳥屋『秋田屋』前。桜が満開の東京の午後、店はまだ開店前で、炭を用意する従業員の姿がちらほらと見受けられた。

「ここは、いつ通っても飲んでる人がグシャーっと歩道まで溢れてて、日が暮れるころにはみんな酔っぱらって盛り上がってたんだよね。焼き鳥を焼く白い煙りがグワーットあがってて、それがまあすごいいい匂い。店構えもこげ茶色の古めかしい感じで、その雰囲気がよかったんだけど、数年前に建て替えてきれいになっちゃったね」。残念がる吉川だが、今も『秋田屋』の開店時間は午後3時半。ちょっと一杯やりたい人には、相変わらず優しい店である。

「よくこういうとこにフラっと入ったりしてたよ。昔、うちの田舎なんかは、酒屋さんに立ち飲みのスペースがあって、よくおっちゃんたちが飲んでたけどね。10円とか20円の、串に刺した貝とかイカとか、缶詰なんかを食いながら、2、3杯飲んで帰るみたいな感じ。あるとき、住んでた家の隣りが酒屋さんで、俺はよく、外から帰っちゃあ酒屋に寄って、10円のイカを買っておっちゃんたちといっしょに食ったりして母親に怒られてた。でも、小さいころって、そういうおっちゃんが格好良く見えたわけ。店の端っこのスペースで、3、4人で立って酒を飲みながら話してる感じが、“大人だなぁ”っていう、あこがれだったよね。俺だって小さいころはカウンターにも届かなくて、大人を見上げてたわけだからね。マネしてつまみだけ食べるんだけど、もともと酒のつまみだからすんげえしょっぱいの(笑)」

 開店時間まで、まだ間がある。とりあえず今はパスして、「ここは穴場」と吉川が紹介する芝離宮に向かう。ちょうど桜は満開。周りを高層ビルに囲まれた都会のオアシスは、「穴場」というだけあって花見日和の割りに人も少なく、のんびりしたムードがいい感じである。

「浜離宮が有名すぎるから、みんなこっちには来ないんだよね。ここを作ったのは…ああ、なるほど、もともとは大久保さんだ。大久保彦左衛門の大久保家だよね」。入り口の説明看板を読みながら、「しかしこれが個人の家だったっていうのは…すごいよね」と、感心しきりの吉川である。

「入り口に、スミレが咲いてるって書いてあったけど、どこにあるかわかんないよね」と言いながら歩いていると、「あっちにあったわよ」と、初老のご婦人が教えてくれた。戻って探すも、なかなか見つからない。「ここよ、ここ!」。見かねたご婦人が手招きして場所を教えてくれた。よく探さないと見逃すような小さいスミレだが、吉川はちょっとうれしそうだ。

「山とか歩いてると、ああいうお母さんによく会うよ。すごい親切で、いろんなことを教えてくれるけど、急いでるときとか話しを切るタイミングが見つからなくてちょっと困ったりして(笑)」。芝離宮では、「フランスに行ったとき、葉っぱがサラダに出てきて食った」という西洋タンポポも発見。実はスタッフの間では、西洋と日本のタンポポの見分けがつかなかったのだが、吉川が教えてくれたのだ。

 今回のウオーキングルートは、大門から芝浦に向かい、浜離宮まで引き返してくるコース。公園から芝浦へ向かうには、本来なら海岸通りに出るのが直線ルートだが、「いや、こっちから行こう」と、JR浜松町方面に逆戻り。線路脇の路地に入り、昔のタイル張りのきれいなビルを見学したり、あやしいムード満点のJRの古いガード下を抜けたりしながら、芝浦運河沿いの遊歩道へ向かった。

(つづく)

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大門駅近くにある『秋田屋』。ただ今開店準備中! 古いタイルに感心! 浜松町駅裏の『渡辺ビル』 味のあるJRの古いガード。車は通れなくなっている