第66回 台東区谷中 初音小路~さんさき坂
25周年も夢の途中だと俺は思う
7月22日。日本中が皆既日食の話題で揺れたこの日は、25周年イヤーを迎えた吉川のニューアルバム『Double-edged sword』のリリース日でもあった。朝のワイドショーの取材も入ったこの日、吉川がテレビクルーを案内したのは台東区の谷中だった。
最初に目指したのは、日暮里駅から谷中銀座商店街に向かう途中にある『初音小路』。「映画のセットみたいだよね」と吉川が言うその路地には、昔ながらの食堂や飲み屋が軒を並べている。「初めて来たときから、夜に飲みに来てみたいとずっと思いながら何年か経ってしまった。今度来るときまでなくならなきゃいいけど」。小路の中ごろにある『都せんべい』で好物の「ゴマがめっちゃ入ってる」せんべいを購入。パリッとかじると、香ばしい香りが漂った。
この界隈に来たときはいつも寄っていたという谷中銀座商店街のうどん屋をのぞき、街のにぎわいを楽しみながら商店街を抜け、左に折れると、昔懐かしい駄菓子屋を発見。10円の『おばけ煙』と30円の『セメダイン風船』を買い、「昔はこういうので遊ぶのが楽しくて、かわいいもんだったよねぇ」といいながらその場で遊び始めた吉川は、今でも十分楽しそうな様子だ。
次に吉川が足を向けたのは、さんさき坂にある和風小物の『いせ辰』。版画模様の江戸うちわが並ぶ中、「これ買おう」と手に取ったのは『かまわぬ』の文様のもの。吉川は『かまわぬ』が好みなのだ。一本の丸い竹を細かく裂いて骨にした江戸うちわは、竹のしなりがよく、風の送りもやわらかい。竹といえば、この連載の元タイトルでもある『蘭心竹生』の“竹のように生きる”という言葉を思い出した。曲げられても戻る。まっすぐに生きる。25周年にあたり、その思いを新たに聞いてみる。
「まあ、まっすぐ行くには無傷ではいられないわけだけど、俺を応援してくれる人たちも、“こいつはどこまでやるんだろうな”っていうのを見たいんじゃないかなと思うんだよね。でもそれは、“どこかでつぶれるかな”っていう思いも反面あるような気がする。見たいような、見たくないような、それはそれで身近に感じるようなね。でも俺は変わらないというか、変われない。生涯いち歌手だし、毎回が真剣勝負。常に自分を越えてかなきゃ次のものは出せないから毎年どんどんキツイけど、人間は年老いていくのか成熟していくのかどっちかだからね。よく“人生折り返し”とか言うけど、折り返してどうすんだよって。むしろ折り返すなよ、進めよって。人生ってひとつの作品であるしかないわけだから、最後に行き着くまではすべてが途上。夢の途中だと俺は思ってるんだよね。アルバムに関しては、ファンの人たちがどういう吉川を望んでるのか、アニバーサリーとしては感謝の意を表すというか、今までありがとう、これからもよろしくっていう意味を込めて、みんなが好きな速くて激しいやつを多めにしたってのはあるけど、自信を持って作った。だから、あとは体のケアをちゃんとして、見るからに健康であることが大事だと思ってる。もっとちゃんと鍛えてね。いくら精神を語っても、健康じゃなきゃ実現できないからね」
谷中散策はまだ始まったばかり。この後吉川は、ある和菓子屋で大歓迎を受けることになるのだが、そこに至るテレビ取材の詳細も含め、次回に続く。
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