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2010年02月08日

 

第74回 渋谷区神泉~港区北青山

若者よ、人生はその先がおもしろい

 渋谷の桜ヶ丘から吉川が次に向かったのは神泉町。246を渡り、路地をぐるぐる周りながら井の頭線の駅にたどり着いた。駅の手前には、「デビュー前にリハーサルをした」という思い出のライブハウス『Lantern』。そして、「ほら、すごいでしょ!」と吉川が指し示す先には井の頭線のトンネル。「都会のど真ん中にこんな古いトンネルが残ってるなんてすごくない? 俺はこのトンネル、美しいと思うんだけどね」。トンネル脇の階段の上には「夜になるとTシャツ屋になる店」があったりと、なかなか面白い。そこから渋谷方面へ向かい、道玄坂の“ラブホ街”へと突入した。

「焼き肉屋が多いね。“肉欲街”って感じだね(笑)」と、吉川は無邪気に笑う。「俺が東京に出てきたころはこんなに開放的じゃなくて、すごい入りにくい場所だったけど、今は普通に女子高生が歩いてる。ライブハウスができたせいもあるだろうけど、どんな情報でも欲すれば何でも手に入っちゃう今の時代って、どうなのかなって思うよ。何でもオープンで明るいことがいいことみたいに言われるけど、俺はそうは思わない。秘すること、容易に手に入らないことがあってこそ生まれるものもあるからね。ラブホ街だって、隠微さがなくなると文化的な香りもなくなってつまんなくなっちゃう。自分たちの時代は遊びにも段階があって、エロ本見るだけでドキドキだったよ。先輩に言われて夜中に自販機に買いにいくと、ガタンって本が出る音が夜中の路上に鳴り響いて、あわてたりして(笑)。でも今は若いうちから何でも手に入っちゃうから、達観してるというか、人生に飽きるのが早いよね。遊び尽くしたと思っても表層だけで、間にからみつく心模様がない。それがないとただの“肉欲街”なんだよ。やっぱりわび、さびがね。おっさんくさいこと言っちゃうけど(笑)」

 道玄坂から渋谷駅に向かい「ハチ公の前を通るのは何十年ぶり」という吉川とハチ公前をスルー。「ハチ公の向き、変わってない?」という話で、調べてみると、駅前整備に伴い北側を向いていたハチ公が駅向きに変更されたのはなんと20年前だった。その後は、のんべえ横丁から宮下公園、キャットストリート、裏原宿と、今回のウオーキングの最初に見た渋谷川が流れていたと思われる道を歩き、「東京も古い街並みを残してほしいよね」などと話しながら、246と表参道の交差点の裏にある青山の公団住宅に寄り道した。外で土いじりする住民がいたり、青山とは思えないのどかさだが、「前は八百屋とかトラックでいっぱい来てたのに、住人が少なくなってる気がする。結局いつかは建て替えられるんだろうね」と、良き場所を惜しむ吉川だった。しかしすべてなくなってしまうわけではなく、246の角にある『山陽堂』書店は、なんとこの地で120年も看板を守り続けている。「店のおかあさんに聞いたら、明治神宮ができる前からやってるんだって。開店は明治24年で、場所は近所で2回ほど動いたらしいけど、東京オリンピックで246が拡張されるまでは大きい本屋だったらしいよ。その話を聞く前までは、こんなとこにちっちゃい本屋があるなと思ってたぐらいだったけど(笑)。やっぱりそういう心意気がいいよね」

 そしてもうひとつ。表参道に面したとあるビルに、その昔、尾崎豊ら音楽仲間に誘われて何度か行ったという『港町十三番地』というカラオケスナックも残っていた。その近くの路地が『ロハス通り』と名付けられていたのは、ちょっと驚きだったのだが。

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神泉町で見つけた吉川も驚愕の“古”民家 宮下公園にはオブジェのようなすべり台が 表参道に120年の歴史を誇る『山陽堂』書店