第77回 平和島東京流通センター
物の値段は自分にとっての価値
その日は朝から雨だった。雨でも歩ける面白そうなところ、という吉川の提案で、今回は平和島の東京流通センターで行われた骨董市へ。広大なスペースではないが、小さな店がたくさん出店していて、所狭しとアンティークが並んでいた。
「骨董が好きなわけじゃないけど、古いものは色も趣があったり、職人の手仕事だったりして、そういうのは好き。希少価値というより、作品性に引かれるね。だから、街を歩いててそれっぽい店を見つけると、気に入ったぐい飲みとかお猪口を2つ3つ買って帰る感じ。高くても1000円くらいのものをね。お猪口だけに、ちょこちょこね(笑)」。ずらり並んだ和食器類を前に、ダジャレも出る吉川である。
「この根付け、かわいいねぇ」。目に止まったのは、つげの木を栗の形に彫ったもので、値段は7万円。「この10年くらい、また根付けが流行ったから値上がりしてるらしくて、いい根付けは値段もいい。昔の人は、煙草入れとかに付けて帯のところからちょろっとのぞかせるのが粋だったらしいから、携帯に付けたいと思うんだけどね。でも偽物っぽいのは嫌だし、アンティークじゃなくていいから、ちゃんと職人さんが彫ったもので誇りと心意気が感じられるものがいい。だけど現代根付けのいい物ってホントに高いから。100万単位のものもざらにあって、根付けに凝ったら家がつぶれるよ(笑)」
さらに見て回ると、江戸時代や西洋のものだけでなく、吉川の子ども時代にあったトッポジージョやピグモン、カネゴンなどの人形や、当時の大工道具なども売られていた。家を建てるときに大工が使っていた『墨つぼ』を見て、少年時代の記憶もよみがえってくる。
「木で骨組みが作られた建築途中の家って、ジャングルジムみたいに登ったり降りたりしていい遊び場だったんだよね。カンナとかの道具は大工さんが持ち帰るけど墨つぼは置いてあったりして、勝手に木に線を引いて怒られたり、空手の真似して屋根に使う瓦を割って怒られたりしてたね(笑)」。他にも、蓮根畑で蓮根を引っこ抜いてぬかるみにハマった話や、白菜畑の白菜を引っこ抜いて遊んだ話など、子ども時代のやんちゃな“悪行”は数知れず。それも「気持ちとしては収穫を手伝ってた」というのだから憎めない。
ここの骨董市も、アンティークにまじって新品のエルメスの皿が割安で売られていたりして、愛嬌もたっぷり。「この間、漆塗りのお猪口を見つけたんだけど、みそ汁椀が小さくなったようなサイズで、すごく可愛くて、1個1万円だったけど、見た瞬間に引かれて買っちゃった。こいつは俺を呼んでるんだなと思ってね。でも、友達が遊びに来ると、今まで集めた50個くらいのぐい飲みを出して好きなのを選ばせるんだけど、みんなその漆のやつがいいって(笑)。やっぱり手間をかけた本物は分かるんだね。最近はずっとそれで飲んでるけど、これがまた格別。物の値段って、適正価格もあるけど、価値にお金を払うところもあるじゃない。例えば人の心意気にお礼するとき、5000円なのか5万円なのか。お金で返すってことじゃなくて、価値をどうつけるのか。それは自分が納得すればいいことで、そういう考え方は好きだね。アンティークにしても、ホントに昔のもの?って思ったとしても、売ってる人の努力と口上に1万円、みたいなね」
帰り道、「前から気になってた」という、軍艦を模したようなビルを見学。そこは『ヤマトインターナショナル』というアパレル系の会社の建物だった。
※写真をクリックすると拡大画像が見られます。拡大写真の右側にマウスを重ねると「NEXT」ボタンが現れ、次の写真を見ることができます。