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2009年04月27日

 

第60回 港区芝浦~浜離宮

小綺麗って、貧しい空間じゃない?

 吉川は、芝浦運河沿いの遊歩道をレインボーブリッジ方面へと向かっていた。遊歩道沿いの空き地には、のんびりした時間を楽しむ人がちらほらと見受けられ、東京にもお散歩ブームが到来していることを感じる。その分野では“先駆者”の吉川は、そこから海岸通りに戻り、巨大な日の出水門を横に見ながらさらに先へ進む…と、気になるものを発見した。水路の脇にある『あずま発着場』。古びた船着き場で、「もうやってないんじゃない…? いちおう行ってみる!?」。ということで路地を回って着いてみると…、「やっぱりやってないよ!」。まあ、こんな寄り道も時にはおもしろいものだ。


2009年04月13日

 

第59回 港区大門、浜松町周辺

立ち飲みにあこがれた少年時代

 待ち合わせ場所は大門駅の近くにある焼き鳥屋『秋田屋』前。桜が満開の東京の午後、店はまだ開店前で、炭を用意する従業員の姿がちらほらと見受けられた。

「ここは、いつ通っても飲んでる人がグシャーっと歩道まで溢れてて、日が暮れるころにはみんな酔っぱらって盛り上がってたんだよね。焼き鳥を焼く白い煙りがグワーットあがってて、それがまあすごいいい匂い。店構えもこげ茶色の古めかしい感じで、その雰囲気がよかったんだけど、数年前に建て替えてきれいになっちゃったね」。残念がる吉川だが、今も『秋田屋』の開店時間は午後3時半。ちょっと一杯やりたい人には、相変わらず優しい店である。


2009年03月23日

 

第58回 港区麻布台~麻布十番

あってよかった麻布の『がま池』

 飯倉片町から新一ノ橋交差点に向かって左側の高台には、大使公邸や外国人住宅が立ち並ぶ閑静な一角がある。時流にとらわれずしっかりと建てられた邸宅を見学するのはなかなか楽しい。「こんな家だったらいいね」など、住みたい家の話をしながら高台エリアを抜け、鼠坂を下ると、かつては町工場が多く下町感覚の残る東麻布エリアに突入。麻布は場所によって街の雰囲気がくるくる変わるのがおもしろいところだ。表通りに出ると道の向かいには、「洋風の料理を作るときはよく利用する」というスーパーマーケット『NISSIN』があり、右に進めば麻布十番。吉川が若い時代のひとときを過ごした街だけあって思い入れも強いところだ。今は地下鉄の駅ができて便利になった分、「麻布十番らしさがなくなった」と残念がる吉川ではあるのだが。「俺が住んでたころは、着物来て歩いてるおっさんがいたりして、粋な感じがあったんだけどね。便利を取るか、その街らしさを取るかは難しいところだね」。それでも昔ながらのモノは探せば残っている。まず紹介してくれたのは、「安くておいしい」八百屋。続いては、「十番といえば焼き肉だけど、おすすめの店を教える」ということで、焼き肉屋へと向かう途中で見つけた古めかしい洋菓子店『プランス』。「どうせ紹介するならこういう店にしたいね」と吉川も納得の様子だ。『フランス』でなく『プランス』というのも愛嬌で、入り口のひさしは色褪せてはいるがトリコロールカラー。「買い食いしよう!」と盛り上がり、店内に入ると先客の女性が「3色シュークリームがおいしい」と教えてくれた。


2009年03月09日

 

第57回 飯倉片町~麻布台

好きなのは『キャンティ』、スペイン村、地下道!?

「この道、通ったことある?」。飯倉からホテルオークラ方面へ向かう道を渡った最初の曲がり角で、吉川は右の坂を下り始めた。そこは細い道が入り組んだ麻布の“谷”への入り口。近年整備された坂道も、昔風の民家の屋根が見え始めると同時に、ゴツゴツした細道に変わっていった。二階建ての古い家の屋根には、昔なつかしい木造のベランダがしつらえてある。「以前はこういう家、多かったよね。ドラマの『寺内貫太郎一家』みたいな世界。お父さんに怒られた後に、子どもとお母さんが話をするのはいつも屋根のベランダみたいなね。星を眺めながらとか。でも今は、そうやって仲直りする場所がなくなっちゃったよね」


2009年02月23日

 

第56回 港区六本木界隈

あのころの思い出がつまった街

 土曜の午前中の六本木は人通りもまばらだ。前夜のにぎわいの後の一抹の空しさを漂わせながら、街は冬の強い日差しに照らされていた。「二十歳のころ、頻繁に来てたよね」。思い出をたぐりながら、入り組んだ路地を吉川が歩く。六本木交差点から飯倉に向かって最初の路地を左に入り、小さな交差点を右に曲がると突き当たりは階段。その手前の路地にもよく顔を出した店があった。今はもうなくなったが、「海外アーティストが来日すると必ずといっていいほど顔を出した」その店で、吉川はプリンスやエリック・クラプトンらに引き会わされた。「みんなカッコよかったよ。プリンスがものすごく小さいのにビックリしたり、シーラ・Eとは一緒に太鼓叩いたり、リマールは年を聞いたらすごい上で驚いた。僕、本当は年が違うんだよって(笑)」。笑い話をしながら階段を下り、下りて左側の建物を差して吉川が言う。「このビルに入ってる『BOO!WOO?WOO!』って店、飲もうとなるとここだったなあ。音楽業界人が多くて、俺たちが10代のころは当時流行ってたハードロックのバンドたちが来てて、それから俺とか尾崎(豊)とかがいて、ビジュアル系の髪の毛おっ立てたやつらが来たときは、その髪の毛をかき分けないと入れないくらい狭い(笑)。俺がいつも座ってたのはカウンターの一番奥。斜めの屋根に天窓が開いてて、そこからよく外を見てた。店の前は墓だから見晴らしがよくてね。あのころ、墓の向こうからその窓を見たら、明かりの中に俺の顔があったよ(笑)」。その墓地をぐるりと周り、外苑東通りに戻る“スーパー路地裏”を歩きながら、当時のやんちゃエピソードを吉川は教えてくれた。


2008年09月22日

 

第48回 港区赤坂・紀尾井坂~薬研坂

赤坂で思い出す“激流下り”と青春時代

「東京に来て、ちょっとしてからあそこに行ったことがあるね」。赤坂見付の弁慶橋から紀尾井坂を上ると、右手にはホテルニューオータニ。吉川が行ったというのは、その上に帽子のように乗っている回る展望レストラン。映画『人間の証明』で印象的に使われた場所だ。


2008年09月08日

 

第47回 港区赤坂周辺

言葉の通じない店で考えたこと

 吉川と共に街を歩くと、たまに狐につままれたような気になることがある。赤坂の氷川神社前の坂を下り、地下鉄千代田線の赤坂方面へ向かっていたところ、「あまり人とすれ違わずにショートカットできる道があるよ」と言ったと思ったら、吉川の姿はひょいと路地に消えた。「は?」と思いながら背中を追うと、路地を抜け、大きなビルの脇に出た。見上げるとそこは鹿島建設のビル。吉川はさらに脇道をずんずんと進み、通りすがりの紳士然としたビジネスマンをちらっと見ては、「いいスーツ着てたね」と瞬時に見抜く。普段はジャージー姿ではあるものの、やはりいいものを見る目を持った人なのだと感心していると、突き当たりを右に折れてさらに数分。やっと“ああ、ここに出たのか”と思える場所にたどりついた。そこは、国際新赤坂ビル東館と西館の間を抜けたところの三叉路。「ね、わかったでしょ」。人知れぬ路地を紹介した吉川はちょっと得意げな笑み。確かに、なんとか研究所という怪しげな看板を掲げた家や、古いがしっかりした造りのビルなどを眺めながら、大規模な開発から取り残された路地ならではの風情を感じることができた。見上げる先には赤坂サカスのビル。しかし吉川の次なる目的地はさらに用がなければ絶対行かなそうな階段路地だった。


2008年08月11日

 

第46回 港区赤坂6丁目周辺

家も人も、感じ入るのは心意気

「俺はここに住みたいんだよね」
 港区赤坂という住所表示のある坂を下ると、目の前にそびえるのは東京ミッドタウンのビル。まさか吉川がそこに住みたいと言うはずがない…と思いながら坂の下の目を転じると、ミッドタウンと対峙するように、壁に蔦をはわせた、古めかしいが立派な一軒家が目に入ってきた。


2008年03月10日

 

第36回 港区西麻布~乃木坂

夕日スポットと男の生き方と

 西麻布の『北海園』で遭遇した57歳のオウムの名前はクインドーといった。人生の先輩・クインドーに別れを告げ、外苑西通りを横切って到達したのは青山公園。真横に広がる青山墓地が有名なため見逃してしまいがちな公園だが、だから穴場にもなるわけで、たまにエクササイズをしに来ることもあるという。


2008年02月12日

 

第34回 港区南青山~渋谷区広尾

ウーパールーパーと探偵物語

「ここはウチのファームなんだけどね」。青山学院大学の裏手の一角。吉川の案内で住宅街を歩くと、貫録ある古風な民家に出くわした。「知り合いの家なんだけど、仕事で長期間いなくなる時に、事務所の植物とか金魚とかを預かってもらってる。土の庭があるし、大きい水槽もたくさんある家だからね」


2007年11月28日

 

第30回 港区虎ノ門~芝

芝公園・淫靡な旅館とアスレチック

「あっ、そうだ、東京タワーの金魚屋に寄っていこう!」
 虎ノ門から芝公園に向かう途中、思い出したように吉川は言った。正則高校前の坂を上り、オランダ大使館前を通ってさらに進むと、大きな纏のオブジェのある建物を発見。「これ消防署?あ、鳶の人たちの会館だ!」、なんて話しながら裏道を行くと、こんなところに出るのか、と、思いがけなく目の前に巨大な東京タワーが現れた。“金魚屋”は、1階にある水族館の横にひっそりとあった。しかし吉川が“金魚屋”と呼ぶ場合は、以前紹介した市ヶ谷駅前の店もそうだったが、かなり多くの種類の水生動物がいて、いわゆる“金魚屋”ではなくちょっとしたミニ水族館。見るだけでも十分楽しめる。


2007年11月13日

 

第29回 港区飯倉~虎ノ門

愛宕の山と、ロックな家

 飯倉のロシア大使館付近に来ると、東京タワーが目の前にそそり立っている。吉川がデビュー当時所属していた渡辺プロダクションは以前この近くにあった。10代の後半、この界隈をよく歩いたそうだ。「ずいぶん街は変わっちゃったけどねぇ…」と言いながらも、慣れた足取りでひょいと裏道に入り込む。「ちょっと寄り道」と言われて後をついていくと、霊友会の巨大な本堂の奥にある細い石段を通り、八幡神社の境内に出た。


2007年03月13日

 

第15回 港区南青山~渋谷区神宮前

都心で見つけた心意気

 天気のいい午後だった。南青山の路地を入ると、岡本太郎氏の記念館があった。「岡本太郎さんは尊敬する人間のひとりだからね、たまに行ったりしてる」と吉川。


2007年02月27日

 

第14回 港区高輪~自然教育園

棕櫚の寺からタイムスリップエリアへ

 泉岳寺からの帰り道、老舗の和菓子屋『松島屋』で名物の豆大福を購入。食べる場所を探していると「いい寺がある」と吉川から提案が。行ってみると、寺に続く下り階段の両脇に、ここは南国か?と思われる亜熱帯系植物が高々と茂っていた。


2007年02月26日

 

第13回 港区高輪 通称『古墳公園』~泉岳寺

過去を思うのもたまにはいい

 地球温暖化の影響なのか、公園ではすでに梅の蕾が開き始めていた。現象そのものは喜ばれることではないが、街を歩いているとこうして季節の移り変わりを肌で感じる。吉川は今日も“路地歩き隊”の先導をきって、普段は誰も通らないような路地に迷い込みながら南麻布の坂を下っていた。


2006年08月07日

 

第2回 港区白金~南麻布界隈

花見、釣り堀、坂道の風情

 前回は、旨いコーヒー豆を売ってる店に行ったり、以前見つけた不思議な自動販売機を再確認したり、スーパーの店頭で焼き鳥を買って食べたりしながら白金界隈を歩いたわけだが、このあたりにはもうひとつ、住宅街の中でひっそりやってる釣り堀があって、そこもなかなかいい風情なんだ。


2006年07月24日

 

第1回 港区白金界隈

コーヒー豆屋の出会い

 今週からこの『蘭心竹生』も第二章に突入する。『路地裏ダイヤモンド』と称して、東京の路地裏の魅力を発見していこうじゃないか、っていうのが趣旨だが、そもそも俺が路地裏を歩くようになったのは、持病の腰のヘルニアが悪化したからだった。9年くらい前に1週間くらい寝たきりになっちまって、医者に相談したら手術しなきゃダメだっていう。しかも、腹から開いて内臓を取り出してから背骨を手術するって言われて…それはさすがに嫌だなと思った。で、手術しないで治すなら「歩いて身体を矯正しなさい」。