あのころの怪獣やヒーローは美しい!
「変わってないねー。ここに足を踏み入れるのは20年ぶりくらいだよ」
今回の路地歩きの集合場所は、中野サンプラザの近く。まずはアーケードの商店街を抜け、中野ブロードウェイの階段を上りながら、吉川にとっての“中野”話を聞いてみた。
「デビュー当時は中野サンプラザでよくライブとかやってたね。去年、久しぶりにやったけど、その前も5年くらい間あけてるから。あとは、知り合いのアップビートっていうバンドのベースさんが、この近くで小さいバーをやってる。…
「俺の同級生で以前一緒にツアーをやってたドラムのマロ君が、1週間に一度そのバーに行って遊んでるから、広島の同級生と一緒にたまにそこで飲んだりね。俺にとっては都心から中野あたりまでは徒歩圏だから、ふらっと歩いてくるんだよ」
話しながらいよいよ2階フロアに侵入した。
「はぁ~、こんな感じになってるんだ。秋葉原みたい」
と吉川が言うように、アニメ関係の店や、フィギュアの店など通好みのショップがずらりと軒を列ねている。骨董品屋をのぞいては、「こういうカメラうちにもあったよ。しかし古い焼き物とかに目がいっちゃうのは、ジジイ化してる証拠だな(笑)」。ゲーム屋の店先で懐かしい『GAME & WATCH』を見つけては、「これもうちにある! 授業中によくやってて、おこられたよね」。
そして吉川の目の色が変わったのは、怪獣やヒーローもののフィギュアを扱う店に入ったときのこと。袋詰めされてずらりと棚に並んだ5~10センチ大ほどのフィギュアを前に、終わらない話が始まった。
「イナズマンって知ってる? 最初サナギマンっていうイモ虫みたいなのに変身してからイナズマンになるんだけど、サナギマンの時に攻撃されるとすごく弱い。それを乗り越えて強いイナズマンになるわけで、そこで子ども時代の俺は“耐える”ってことを学んだんだよね。忍耐を積まないと強くはなれないんだと(笑)。キカイダーにしても、人間が悪事を働くために作った人造人間なんだけど、もとからあった良心が悪と戦って勝ってしまったから、キカイダーは正義の見方になった。デビルマンみたいなもんだよね。
でも、キカイダーを作ったギル博士がある笛を吹くと、脳が悪い気持ちに負けそうになって死ぬほど頭が痛くなる。善と悪の戦いというか、俺たちが子どものころのヒーローのほうが、いい意味で暗さがあった気がするね。ヒーローでも苦節何年とか、人間と同じように傷ついたりするところを見せたからね。人間の延長というか、教訓とか精神性がちゃんと描かれてた。バロム1とか合体もののヒーローは、子どもがふたりで1コになって変身する設定で、気持ちが通じ合ってないときは変身できないの。喧嘩したり、どちらかが我を通したりしていざこざがあると強くなれなくて、そこでふたりは間違いに気付いて仲直りするという。今考えると笑っちゃうけど、小学生にはそういうのも必要かもね」
話の途中、吉川はフィギュアを見ながら何かの主題歌を口ずさんだりしていた。「こういうのって、見た瞬間にその時代に戻るよね。時の隔たりがなくなるというか、今見ても造形が美しいと思うからね。怪獣にしても何にしても、やっぱり作り手の思いみたいなものが滲んでる美しさだと思うよ」
いかにも楽しそうな吉川だが、後ろ髪を引かれながら、一路高円寺へ。線路脇の『佐世保バーガー』は、サンプラザのライブでよく差し入れられた思い出の味だということだった。
(つづく)
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