本を読まなきゃ人間深くならないよ
神保町のすずらん通りにある中国書専門店『内山書店』に入ると、吉川は棚から分厚い本を取り出してこう説明した。
「これが宮城谷(昌光)さんに勧められて買った中国の4000年分の地図。“小説に付いてる地図だけじゃ分からない”と言ったら、中国の全時代を網羅してるものがあるから、それを傍らに置いて読むといいって教わったの。でも、時々字が分からない(笑)。中国の略字って、あまりにも略されてるからね。宮城谷さんには、地図の他に『資治通鑑(しじつうがん)』っていう中国の史書も勧められたけど、これはもう見た瞬間にあぜんとした。原文のまんまなの。漢文、しかも見たことのない複雑な文字で、要は和訳されていない(笑)。さすがに買わなかったけど、宮城谷さんの研究ぶりはすさまじいと思ったね」
地図の効用については、「大陸の川って、一度氾濫すると平気で数百キロも流れが変わっちゃうらしく、この町からこの町まで何日で行けたっていうのが時代によって矛盾するわけで、そういうことを地図を見ながら読んでるとイマジネーションが広がる」とのこと。天気のいいい午後、すずらん通りを歩きながら吉川の本の話は続いた。
「何度も言ってるけど、中国が好きで中国史を読んでるわけじゃなくて、日本を知るためにはまず中国を知らないといけないし、本来の熟語の意味とかも分からないから。『四面楚歌』だって、“四面が楚の歌”っていうのは、そういう場面があったからできた言葉なわけで、中国の4000年を把握すると、日本の武将の戦術とかも分かってくる。ルーツはほとんど中国にあるからね。だからまずいところにハマったんだよ。一生かかっても読み切れる数じゃないから(笑)」
地下鉄神保町駅近くの路地には、吉川おすすめのカフェ『さぼうる』がある。古くからこの街にある有名店で、古き良き味わいを醸す雰囲気がいい。広島の修道高校時代の水球部の先輩でコラムニストの神足裕司氏と飲んだ時、待ち合わせで訪れたそうだ。本屋街は「紙と印刷のにおいが好き」と吉川。その後は多くの小説家が執筆のために滞在した山の上ホテルに向い、さらに本の話を続けた。
「今、若い人たちがあまり本を読まなくなったっていうけど、もったいないよね。本を読まない人って底が浅いし、俺は本を読まない連中は基本的に信用しないと言ってもいい。そういう人って、近道しようと思っても結局は人生の大遠回りしてると思うよ。文字を読まないと想像力が身に付かないし、学びたいって気持ちがなくなったらそこで止まっちまう。自分を高めるためには、生涯勉強でしょ。ベタベタな言葉だけど、俺はホントにそう思うよ。人に会って、この人深いなっていうのは、出で立ちとかまなざしで分かっちゃうし、深くない人は魅力的に思えない。学問とは人を知ること、と言っても過言じゃないもんね」
でも、読むのはいいけど書くのは難しいね、と吉川は笑みを浮かべる。「北方(謙三)さんに何度も“書け”って言われるけどね。音楽やってるヤツは文章に独特のリズムがあるからいいって。でも、そうそう書けるもんじゃないでしょ。だから、夢としてはあるけど、今はとにかくひたすら読むと」
神保町、お茶の水界隈は大学も多く、「学生街っていいよね」と吉川。帰り道、今回の歩き始めから気になっていたニコライ堂の近くにあるスペイン・バル『カフェ・ド・アリ』に立ち寄った。吉川は、ダブル・エスプレッソを注文した。
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地図の効用については、「大陸の川って、一度氾濫すると平気で数百キロも流れが変わっちゃうらしく、この町からこの町まで何日で行けたっていうのが時代によって矛盾するわけで、そういうことを地図を見ながら読んでるとイマジネーションが広がる」とのこと。天気のいいい午後、すずらん通りを歩きながら吉川の本の話は続いた。
「何度も言ってるけど、中国が好きで中国史を読んでるわけじゃなくて、日本を知るためにはまず中国を知らないといけないし、本来の熟語の意味とかも分からないから。『四面楚歌』だって、“四面が楚の歌”っていうのは、そういう場面があったからできた言葉なわけで、中国の4000年を把握すると、日本の武将の戦術とかも分かってくる。ルーツはほとんど中国にあるからね。だからまずいところにハマったんだよ。一生かかっても読み切れる数じゃないから(笑)」
地下鉄神保町駅近くの路地には、吉川おすすめのカフェ『さぼうる』がある。古くからこの街にある有名店で、古き良き味わいを醸す雰囲気がいい。広島の修道高校時代の水球部の先輩でコラムニストの神足裕司氏と飲んだ時、待ち合わせで訪れたそうだ。本屋街は「紙と印刷のにおいが好き」と吉川。その後は多くの小説家が執筆のために滞在した山の上ホテルに向い、さらに本の話を続けた。
「今、若い人たちがあまり本を読まなくなったっていうけど、もったいないよね。本を読まない人って底が浅いし、俺は本を読まない連中は基本的に信用しないと言ってもいい。そういう人って、近道しようと思っても結局は人生の大遠回りしてると思うよ。文字を読まないと想像力が身に付かないし、学びたいって気持ちがなくなったらそこで止まっちまう。自分を高めるためには、生涯勉強でしょ。ベタベタな言葉だけど、俺はホントにそう思うよ。人に会って、この人深いなっていうのは、出で立ちとかまなざしで分かっちゃうし、深くない人は魅力的に思えない。学問とは人を知ること、と言っても過言じゃないもんね」
でも、読むのはいいけど書くのは難しいね、と吉川は笑みを浮かべる。「北方(謙三)さんに何度も“書け”って言われるけどね。音楽やってるヤツは文章に独特のリズムがあるからいいって。でも、そうそう書けるもんじゃないでしょ。だから、夢としてはあるけど、今はとにかくひたすら読むと」
神保町、お茶の水界隈は大学も多く、「学生街っていいよね」と吉川。帰り道、今回の歩き始めから気になっていたニコライ堂の近くにあるスペイン・バル『カフェ・ド・アリ』に立ち寄った。吉川は、ダブル・エスプレッソを注文した。
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