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2008年04月23日

 

「それは言わない約束でしょ?」タブーを犯すポツドール「顔よ」

 こんにちは、中井です。暖かくなって、劇場通いが一層、楽しい季節ですね。

 今月もたくさんのおもしろい舞台に出合えましたが、まずはポツドールの『顔よ』。顔の美醜を扱った作品でしたが、この問題はタブーも多いし、つくる側も観る側もしんどいテーマだと思います。タブーを犯すのはポツドールの得意技ですが、今回も「それは言わない約束でしょ?」の約束が次々と破られるんですね。

 言う人、言われる人、どちらの立場に立っても痛い。役者さんの緊張感あふれる演技で、その痛みが心にヒリヒリ刺さります。でもこのヒリヒリは、舞台でしか味わえない貴重な感覚です。

 サモ・アリナンズの『洞海湾』も、ヒリヒリする話でした。ただこちらは、裏のない笑いがたくさん絡むんです。暴力シーンは多いし、人はたくさん死ぬし、話はひどいと言えばひどい(笑)。でも、宇多田ヒカルのデビューのころの物真似とか、コンプレックスの当てぶりとか、笑いが体当たり系で、ちょっと古いんです。

 でもその古さやむき身な感じが、話をいい具合に救ってくれる。だから後味が全く悪くありませんでした。座長の小松和重さんをはじめ上手な役者さんも多くて「上手くて楽しくてひどい話ってあるんだな」と。サモアリはこの公演で活動休止とのこと、残念ですが、松尾スズキさんの作・演出で、素晴らしい公演が打てたと思います。

 そして『どん底』もおもしろかったです、とっても! 私は原作を知らないのですが(ナースチャという名前の娼婦を、ずっと「ナースちゃん」と呼ばれていると勘違いしていたくらいです)、この作品は本当に群像劇なんですね。どんな状況をどん底と感じるかはその人次第ですが、過去も価値観もさまざまな人が登場して、何がどん底か、何が救いかもまちまちです。

 最終的にほとんどの人は同じ場所にいるんだけれど、幸せになったように見えたり、その逆だったり、変わらないように見えたり。20人近い登場人物が、全員ちゃんと印象に残っています。それは上演台本と演出のKERAさんの力で、改めてKERAさんのすごさを感じました。

 同時期に宝塚を退団したふたり、朝海ひかるさんの『トライアンフ・オブ・ラブ』と、湖月わたるさんの『カラミティ・ジェーン』がこれまた同時期にあったのも興味深かったです。いずれも宝塚時代には見られなかった面をうまく引き出せて、今後がますます楽しみです。

中井の気になる!!◆モダンスイマーズ「夜光ホテル」(下北沢・オフシアター 5月3日~6月1日) ◆シスカンパニー「瞼の母」(三軒茶屋・世田谷パブリックシアター 5月10日~6月8日) ◆M&O playsプロデュース「まどろみ」(池袋・あうるすぽっと 5月15~25日) ◆宝塚月組「Me&My girl」(宝塚大劇場 ~5月5日)◆猫のホテル「けんか哀歌」(下北沢・本多劇場 5月1日~11日) ◆月影番外勝負「物語が、はじまる」(赤坂RED/THEATER 4月23日~5月4日) ◆阿佐ヶ谷スパイダース「失われた時間を求めて」(森下・ベニサンピット 5月8~27日)


Profile

中井美穂 (なかい・みほ)
95年、フジテレビ退社後フリーアナウンサーに。現在『旅の香り』(テレビ朝日系・日曜18:56~)、『タカラヅカ cafe break』(MXテレビ・月曜22:00~)に出演。2007年1月スタート『世界陸上~We Love アスリート~』(TBS・金曜25:25~)でのMC、また8月25日~9月2日に開催される『世界陸上大阪大会』でもメインキャスター務める。『STORY』(光文社)連載コラムも好評!