ハチャメチャなファンタジーのビジュアル化には演劇が最適
こんにちは、中井です。今月もたくさんのいい舞台に巡り合いました。まずは劇団☆新感線の『蜉蝣峠』。宮藤官九郎さんと新感線の組み合わせは『メタルマクベス』(06年)以来ですが、今回もまたうまくハマりましたね。宮藤さんの書く話は、中島かずきさんの話のように、いくつかの話がどんどんまとまって大きなうねりになるのではなく、すごくバカバカしい画(え)、すごく寂しい画というピースがパズルを埋めるように集まって、最終的にひとつになるんだな、と感じました。同じいのうえ歌舞伎でも、書き手によって世界が広がっていくのはおもしろいですね。
どんなふうになるのかまったく予想がつかなかったけれど、観たらとても楽しめたのが『夜は短し恋せよ乙女』でした。主役ふたりが初舞台と聞いていたので「大丈夫?」とも思っていたのですが、田中美保ちゃんも渡部豪太君も原作の小説にイメージにぴったりな上、舞台上でとても伸び伸びと動いていたのが印象的でした。セットの動かし方、空間の使い方も、アナログなのに想像力が刺激されました。もとがハチャメチャなファンタジーの場合、演劇こそビジュアル化に最適なメディアだと実感させてもらいました。アトリエダンカンの本屋大賞シリーズは『風が強く吹いている』も良かったので、三部作最後の『鴨川ホルモー』にも自然と期待がかかります。
美輪明宏さんが主演、演出、美術を手がけた『毛皮のマリー』も、ビジュアル化という点で圧倒的でした。自分はこれが好きだという趣味、思想、主張を、異端と言われながらも徹底的に打ち出す。しかもお金と時間をかけて。何しろ会場のル・テアトル銀座のロビーは、『毛皮のマリー』公演中だけ床がバラ模様になったんですよ。もうひとつの十八番である『黒蜥蜴』のように、陰のある華麗な世界も好きですが、今回の徹底したキッチュさも素晴らしかったです。
宝塚星組『マイ・ディア・ニューオリンズ』は、トップの安蘭けいさんをはじめ10人が一気に退団する特別なさよなら公演でした。本編にもそれは反映されていましたが、私としてはレビュー『ア・ビアント』に感動しました。作曲の藤井大介先生が、安蘭さんと同期ということもあって思い入れもあったんでしょうね。彼女が在籍した組の名前、よくインタビューで答えていた言葉までが歌詞に盛り込まれ、これまでの思い出と愛惜、未来へのエールがこもったショーになっていて、私は観るたびに大号泣してしまいました。
中井の気になる!! ◆ナイロン100℃『神様とその他の変種』(下北沢・本多劇場 ~5月17日) ◆大パルコ人 メカロックオペラ『R2C2~サイボーグなのでバンド辞めます!~』(渋谷・PARCO劇場 4月27日~5月31日) ◆『シラノ』(日比谷・日生劇場 5月5~28日) ◆バンダラコンチャ ソロアルバム公演『相思双愛』(新宿・紀伊國屋ホール 5月9~17日) ◆イキウメ『関数ドミノ』(赤坂RED/THEATER 5月8~24日) ◆SISカンパニー『楽屋』(三軒茶屋・シアタートラム 5月10日~6月14日) ◆新国立劇場『タトゥー』(初台・新国立劇場 小ホール 5月15~31日) ◆サンプル『通過』(三鷹市芸術文化センター 星のホール 5月15~24日)