役者の息づかいまでうかがえそうな濃密な空間での貴重な体験
今月は小さめの劇場で濃厚なものを見ることが多く、小さい劇場だからこそできるものというのがあるということを再認識しました。
まずは野田秀樹さんの東京芸術劇場芸術監督就任記念プログラムの『ザ・ダイバー』日本バージョン。昨年上演されたロンドンバージョンではキャサリン・ハンターという女優さんが演じていた役を日本版では大竹しのぶさんが演じられました。
キャサリン・ハンターは野田さんと同じような動きを野田さんと同じような感性でできるというイメージがあって、その身体の特徴性が目をひく女優さんだと思うんです。それに対して大竹さんは圧倒的に女であるという部分が強く、リアリティーが増して、全く別な話に思えました。
あれだけのキャパであれだけの役者たちを息づかいまでうかがえるような近さで見られたのはとても貴重でした。
そしてハイバイの『て』。これも野田さんの就任プログラムの「芸劇eyes」という企画の第1弾。もともと、主宰の岩井秀人さんのお母さんの影響を強く受けている作品が多いのですが、これだけ私小説みたいなことを舞台にして、大丈夫なのかな…と思ってしまいました。祖母が亡くなるちょっと前からお葬式までの家族の出来事を自分の視点と母親の視点という2つの立場から描きます。
こういう作品を見て思うのはホントに家族ってやっかいだなということ。でも決して離れることができない存在。それだからこそ愛おしいんですね、きっと。
この2本は野田さんが芸術監督に就任したからこそ小ホールという濃密な空間で上演されたのだと思います。改めて、野田監督ありがとうございます。
そして『ねじと紙幣』。女殺油地獄をモチーフとしたこの作品では、作・演出の倉持裕さんが歌舞伎という構造に向き合ってちゃんと現代劇に仕上げているという感じがしました。そして男の人が演じる歌舞伎とは違った面で、殺される場面でのともさかりえさんの曲がった腕とか足とかがとてもリアルでした。森山未來さんの持つ身体能力の高さがストレートプレイでもいかんなく発揮されていました。
大人計画の『サッちゃんの明日』では家納ジュンコさんという女優さんにひかれました。とてもきれいな女優さんなんですが、もの凄いエロい事をたくさん言います。清純派に見えて変態っぽい演技がとってもうまい。よく見るとサモアリナンズの役者さんであるとのこと。さすがサモアリ。小松さんも相変わらずの天才っぷりを見せてくれました。
小松さんといい、ハイバイに客演していた菅原永二さんといい、「普通にいるよねこの人」と思わせておいて実は凄く変なうまい人っていう役者さん、私は大好きです。
11月3日に、新国立劇場で上演中の「ヘンリー六世」の上演後のアフタートークで司会をします。よろしかったらぜひ!!
中井の気になる!! ◆THE SHAMPOO HAT「沼袋十人斬り」(下北沢・ザ・スズナリ ~25日) ◆パルコ・プロデュース「印獣」(渋谷・PARCO劇場 ~11月8日) ◆D-BOYS STAGE「鴉KARASU」(青山劇場 ~25日) ◆「ヘンリー六世」三部作(初台・新国立劇場 中劇場 10月27日~11月23日)