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2010年03月15日

 

これからは演劇の現場にZUKAZUKA行きます!!

 こんにちは、中井です。2~3月は注目作品が目白押しで、どこに足を運ぼうかと思案の毎日でした。

 モダンスイマーズの『凡骨タウン』は、昨年上演した『夜光ホテル』のその後を描いた作品。

 作・演出の蓬莱さんの作品は今までは、具体的なエピソードを重ねて物語を分厚くして、ストーリーでお客さんを引きつけるという手法を取っていたと思うのですが、今回はセットも抽象的にし、エピソードを投げ掛けて観客の想像力を刺激するというやり方を取っているように思えました。

 1月に長塚圭史さんに取材したときにも感じたのですが、今までストーリー性を重視していた人たちが、事件性を放棄するというか、全貌を見せず、私たちに考えさせるようになってきたように思えます。具体例がなければ、取り方次第で見た人によってストーリーは膨らんでいきます。そういうアプローチの仕方が面白くなってきたということなんでしょうか。今度機会があったら聞いてみたいですね。

 蓬莱さんは自転車キンクリートSTOREの『富士見町アパートメント』でもそんな感じ。事件で物語が動くのではなく、登場人物の内なるものから発生することによってストーリーが展開します。そして登場人物の2人の関係性については断片的に語らるため、謎は謎のまま話は進みます。なにか深読みしたくなる気分になりました。

 この『富士見町-』は、4人の作家さんがアパートの一室という設定で1時間のストーリーを作り、鈴木裕美さんが1人で演出をするという企画。マキノノゾミさんの『ポン助先生』は役者さんのバランス、演出のバランスが整っていて、題材も演劇を知らない人でも楽しめるものでした。そして鈴木さんが一番楽しみながら演出しているといった印象を受けました。4本ともそれぞれの個性が出ていて、演出家は大変だと思うけど、また見たいと思わせる企画でした。

 そして『上海バンスキング』。私は作品も吉田日出子さんを舞台で見るのも初めて。「今コクーンでわざわざやるのはどうなんだろう」なんて思ったいたら観て分かりました。「あ、この舞台生きてる! 単なる復活劇じゃないんだ」と。昨年のBunkamura20周年記念企画『雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた』のリアル版を見ている感じがしました。作品は戦争に翻弄される人間の切なさ、哀しさそして吉田さん演じる女性のたおやかさを描いていて胸がいっぱいになりました。

 実は今月でこの連載を終了することとなりました。2006年11月から多くのお芝居についてお話させていただきました。このコラムを通じて、演劇に興味を持つ方が一人でも増えてくれればと思っていました。

 これからは今まで何度かやっていた対談形式の取材を不定期連載の形でやらせていただくことになりました。今までよりもっと突っ込んだ形で作品や演出家さんや役者さんの考え、その作品の楽しみ方なんかを伝えていきたいと思っています。これからもよろしくお願いします。


2010年02月15日

 

和央ようかさん主演の『ディートリッヒ―』要チェックです

 こんにちは中井です。

 今まではこの1カ月に見たお芝居からピックアップして観劇リポートをお届けしていたのですが、今月はちょっと気になる作品をご紹介します。

 先月の14日に私が製作発表の司会を務めた『ディートリッヒ~生きた 愛した 永遠に~』(青山劇場 3月12~28日)というオリジナルのミュージカル作品です。

 ドイツ出身の女優にして世界的シンガー。美しいだけでなく、その凛とした生き方に男性に限らず女性からも多くの支持を受けているマレーネ・ディートリッヒの生涯を描いた作品なんですが、マレーネ・ディートリッヒってみなさん分かります? 分かりますね。じゃあ先に進めます。

 今回、宝塚で長く男役のトップを務めた和央ようかさんが主演を務めます。6年という近年まれにみる長きにわたってトップを張り続けた和央さんは、2006年の宝塚退団後も舞台を中心に活躍され2008年にはミュージカル『シカゴ』にも出演されています。和央さん目当てだけでも劇場に足を運ぶ価値は十分なのですが、今回はそこに大きなサプライズが。宙組時代に和央さんの相手役を務めていた花總まりさんがこの作品で舞台復帰を果たすこととなりました。この2人は宝塚ファンの中では“伝説のコンビ”といわれているんです。そんな2人がディートリッヒと、生涯にわたってディートリッヒの親友だったエディット・ピアフ役を演じるなんて、本当に楽しみです。

 2004年にはコンビで「第29回菊田一夫演劇賞」を受賞するなど実力のあるお2人だけに、昔を知らない人にもぜひ見てほしい作品です。

 加えて現在、英国のロイヤル・バレエ団のゲストプリンシパルであるバレリーナの吉田都さんが東京公演のみ出演。華を添えます。吉田さんはバレエ以外の一般的な演劇作品に出るのは今回が初めてで、こちらも貴重な舞台となるでしょう。

 共演陣も実力と華やかさを兼ね備えた豪華なメンバー揃い。なかでも注目は史上最年少で宝塚の振付を手掛ける振付家の桜木涼介さん。ルックス・実力ともにそろった桜木さんの名前、覚えといてください。

 もう字数が少なくなってしまったんですが、1月25日発行号で対談させていただいた長塚圭史さんの阿佐ヶ谷スパイダースpresents『アンチクロックワイズ・ワンダーランド』。「物語からの脱却」とは演劇の可能性そのものだなと感じました。しかし観ているこちら側も緊張感いっぱい。ふだん使わない脳みそをフル回転して観ました。

中井の気になる!! ◆『農業少女』池袋・東京芸樹劇場 小ホール1 3月1~31日) ◆冨士山アネット『家族の証明∴』(こまばアゴラ劇場 3月6~10日) ◆『象』(初台・新国立劇場 小ホール 3月5~30日) ◆『マクベス』(三軒茶屋・世田谷パブリックシアター 3月6~20日) ◆カフカの『変身』(ル テアトル銀座 3月6~22日) ◆『ヘンリー六世』(彩の国さいたま芸術劇場 3月11日~4月3日)


2010年01月18日

 

芝居もいいけど落語もね!!『志の輔らくご』

 こんにちは、中井です。今月はいつも以上に、振り幅の広い舞台を観られました。

 まずは『志の輔らくご』。立川志の輔さんがお正月のパルコ劇場に登場するようになって5年目だそうです。今年、強く思ったのは、落語を好きな方もそうでない方も、志の輔さんは今、観るべきだということ。枕と噺の切り替えがとても自然で、気が付くと完全に噺の中に引き込まれています。内容は、自作の新作落語3本。中でも、江戸時代の歌舞伎役者・中村仲蔵のネタに泣かされました。人物の演じ分け、せりふと説明の切り替え、当時の役者を取り巻く環境、仲蔵の役者としての性(さが)などが、説明くさい言葉なしに伝わってくるんですね。会場の集中力も自然と高まって、客席は水を打ったようにシーンと。世界陸上の100mの決勝前も、何万人という観客が静まり返るんですが、その時を思い出しました。

 和物続きでは、早乙女太一君の『美しき華』も良かったですね。天才子供女形といわれた彼も18歳になり、若さの特権であるスピードに安定感、「何をやっても早乙女太一」という芯の強さが加わりました。第一部の、太一君の素に近いショーでは、去年出演した劇団☆新感線の経験が厚みになっていましたし、第二部の女形としてのショーは、色っぽさが艶っぽさへとレベルアップしていました。とはいえ、かつらを着け、裾の長い着物を着た上で、あれだけ自在に身をこなすのは筋力の賜物。若く美しい女形にしかできない舞台を見せてもらいました。

 宝塚花組の『相棒』は、企画を聞いて思わず「大丈夫なの?」と心配した演目でした。放送中のテレビドラマを舞台化すること自体が難しいはずですし、杉下右京は水谷豊さんがつくり上げ、水谷さんの個性と一体になったキャラクター。それを宝塚作品にするのは、かなり冒険のはずだと。でも結果は、かなり楽しめました! 右京を演じた真飛聖さんもうまく個性を取り込んでいましたし、他のキャストもうまくハマり、ダンスあり、ちょっとしたお遊びありの、宝塚ならではの『相棒』に仕上がっていたんです。昨年同じ石田先生の演出する作品に出たメンバーが多くいた花組ならではの安定したチームワークがあるから、ベタなことも冒険もできるんでしょうね。

 シアターコクーンの『東京月光魔曲』は、松雪泰子さんと瑛太さんの姉弟がとにかく美しかった! 特に、爽やかさだけでなく影も出ていた瑛太さんの、舞台2作目にしての成長ぶりに目を見張りました。

中井の気になる!! ◆『血は立ったまま眠っている』(渋谷・シアターコクーン ~2月16日) ◆シス・カンパニー『えれがんす』(新宿・紀伊國屋ホール 1月29日~2月14日) ◆阿佐ヶ谷スパイダース Presents『アンチクロックワイズ・ワンダーランド』(下北沢・本多劇場 1月21日~2月14日) ◆『飛龍伝』(新橋演舞場 2月3~21日)AGAPE store『残念なお知らせ』(新宿・全労済ホール スペース・ゼロ 2月12~21日) ◆宝塚星組『ハプスブルクの宝剣 -魂に宿る光-』『BOLERO』(東京宝塚劇場 2月12日~3月21日) ◆モダンスイマーズ『凡骨タウン』(池袋・東京芸術劇場 小ホール1 2月5~21日)


2009年12月21日

 

タニノさんの頭の中を少しだけ垣間見られたポストトーク

 こんにちは、中井です。2009年も残りわずか。観劇もラストスパートかけてます!

 まず『海をゆく者』、作品もキャストもよかったです。アイルランドを舞台にした話は、暴力的な若者を描いた『ウィー・トーマス』などのマクドナー作品しか知らなかったのですが、マクファーソンという劇作家が書いたこの話は登場人物がおじさん5人。なのに全体的な印象、セットの雰囲気がよく似ていて、すんなりその世界に入れました。途中から悪魔が出てくる意表を突く設定なのですが、アイルランドでは“神様や悪魔と契約する”という感覚が普通に根ざしているのでしょう、違和感はなく、終盤はグッと引き込まれました。小日向文世さん演じた悪魔は、喪黒福三をもっと理詰めにしたような銀行員風の風貌で、だからこそ怖かったです。役者さんは全員が達者。毎日違う仕掛けがあるんだろうな、と想像させる余裕は、この座組みならではでした。幸せな終わり方も良かったです。

 幸せな終わり方と言えばグリングの『jam』も印象的でした。青木豪さんは「忘れていたけど、かつて友達に言われて傷付いた言葉、自分が親友に対して心の中で抱いた一瞬の黒い感情」を思い出させる芝居を書く人。今回も痛い気持ちになることたびたびでした。でもギリギリのラストで、ほんのり明るいものを提示してくれる。公演のたびに観に行っていた劇団なので活動休止になるのは寂しいですが、また会えるのを楽しみに心待ちにしたいと思います。

 庭劇団ペニノの『太陽と下着の見える町』は、ポストトークの司会をさせていただくために稽古場も見学させていただき、事前の期待がかなり高まっていたのですが、本番は期待以上でした。作・演出のタニノクロウさんは、ファンタジックな部分とストレートな性欲の部分のバランスが抜群におもしろい方ですね。どちらかに転ぶことなく最後まで駆け抜けて、思いもよらない、でも納得の落とし所に着地してくれました。広い会場でペニノを見られたのも貴重でしたし、ポストトークでタニノさんの頭の中を少しだけ垣間見られ、いい経験をさせていただきました。

 同じくフェスティバル/トーキョーのプログラムで、観客が貨物となって東京から横浜までトラックで運ばれるリミニ・プロトコルの『Cargo Tokyo-Yokohama』も本当に行ってよかったです。まず、流通という観点から都市を見るという発想がおもしろいですよね。でも実行となると、日本の法律や規制をクリアするだけでも相当大変なはず。それなのに緻密な演出がなされていて、3時間近い行程、まったく飽きることなく過ごせたのは驚きです。登場する物流センターで働く人や物流博物館の職員さんたちの生の言葉も素敵でした。観客を運んでくれたふたりのドライバーさんもとても魅力的で「こんなふうに愛情と誇りを持って自分の仕事について語れる人が何人もいる」という発見もうれしかったですね。

中井の気になる!! ◆『ミュージカル テニスの王子様』(日本青年館大ホール ~24日) ◆『マレーヒルの幻影』(下北沢・本多劇場 ~27日) ◆『東京月光魔曲』(渋谷・シアターコクーン ~1月10日) ◆『志の輔らくごin PARCO』(渋谷・PARCO劇場 1月5~31日) ◆宝塚宙組『カサブランカ』(東京宝塚劇場 1月3日~2月7日) ◆『ミュージカル キャバレー』(日生劇場 1月7~29日) ◆冨士山アネットproduce『EKKKYO-!』(池袋・東京芸術劇場小ホール1 1月14~17日)


2009年11月16日

 

『世田谷カフカ』と『印獣』でチームワークの妙を堪能

 こんにちは、中井です。今年も残り40日。あと何本、舞台を見られるでしょうか? さて、今月もまたKERAさんに楽しませてもらいました。『世田谷カフカ』は、カフカの未完の長編小説3本をまとめると聞いていたので「どんなふうにするんだろう?」と思っていたら「こんなやり方があるんだ!」と。それぞれの主人公と登場人物にカフカ本人まで出てくるし、ダンスや映像もありと、たくさんの要素を入れ込んでいたのですが、すべてが見事にしっくりきたのです。でもそれがしっくり感じられたのは、間違いなくナイロン100℃という劇団でやったから。プロデュース公演で同じようなことをしようとしても、こんな仕上がりにはならなかったでしょう。

 劇団とは違うチームワークを見せてもらったのは、ねずみの三銃士の『印獣』です。生瀬勝久さん、池田成志さん、古田新太さんの3人が「おもしろい舞台をつくろう」と集まって、おもしろくないはずがありません。しかも脚本が宮藤官九郎さん、演出が河原雅彦さんなら間違いなしでしょう。とはいえ、この作品の本当の主人公は三田佳子さん。スターがスターであった時代の芸能界で、世間の常識とは違う生活を送って来たであろう三田さんだからこそできる迫力満点の役でした。とんでもない格好もさせられたりしていましたが、これを中途半端にやっていたら、むしろ看板に傷が付いていたでしょう。それを堂々とやりきったところに“本物”を感じました。岡田義徳さんの好演も光ってました。

 劇団☆新感線の『蛮幽記』も文句なしのおもしろさでした。以前から早乙女太一君は絶対に新感線に出るべきと思っていて、彼本人も出たいと言っていたのを知っていましたから、まさに夢がかなった舞台です。この作品は2度見たのですが、太一君は声からして変わっていて、いいカンパニーでお芝居をしている充実感、ぐんぐん吸収していい役者さんになっていく様子がよくわかります。復讐から始まる物事には勝者も敗者もなくただ悲しみがあるだけなんだなと。また観たくなる作品でした。

 彩の国さいたま芸術劇場のネクストシアター『真田風雲録』には感動しましたね。小劇場の劇団はなじみがある私ですが、それ以外の形で、若手の役者が集まった演劇集団と言われてもピンと来ません。演出を蜷川幸雄さんがなさったことで初公演を観に行ったのですが、劇場の床を泥一面にして役者さんを動かす演出に驚きつつも納得。合戦って、こういうことなんですよね。役者さんもスタッフの皆さんも死ぬほど大変だったと思いますが、そんな演出を貫いた蜷川さんは、本当にパンキュッシュな方だと思います。与野本町まで行く価値のある作品でした。

中井の気になる!! ◆パルコ・プロデュース『海をゆく者』(渋谷・PARCO劇場 12月8日) ◆『フロスト/ニクソン』(天王洲アイル・天王洲 銀河劇場 18日12月5日) ◆Bunkamura20周年記念企画『12人の怒れる男』(渋谷・シアターコクーン 17日12月6日) ◆宝塚月組『ラストプレイ祈りのように』『Heat on Beat!』(東京宝塚劇場 27日12月27日) ◆バンコク・シアター・ネットワーク×東京芸術劇場共同制作『赤鬼/農業少女』(池袋・東京芸術劇場 小ホール1・2 1923日)


2009年10月19日

 

役者の息づかいまでうかがえそうな濃密な空間での貴重な体験

 今月は小さめの劇場で濃厚なものを見ることが多く、小さい劇場だからこそできるものというのがあるということを再認識しました。

 まずは野田秀樹さんの東京芸術劇場芸術監督就任記念プログラムの『ザ・ダイバー』日本バージョン。昨年上演されたロンドンバージョンではキャサリン・ハンターという女優さんが演じていた役を日本版では大竹しのぶさんが演じられました。

 キャサリン・ハンターは野田さんと同じような動きを野田さんと同じような感性でできるというイメージがあって、その身体の特徴性が目をひく女優さんだと思うんです。それに対して大竹さんは圧倒的に女であるという部分が強く、リアリティーが増して、全く別な話に思えました。

 あれだけのキャパであれだけの役者たちを息づかいまでうかがえるような近さで見られたのはとても貴重でした。

 そしてハイバイの『て』。これも野田さんの就任プログラムの「芸劇eyes」という企画の第1弾。もともと、主宰の岩井秀人さんのお母さんの影響を強く受けている作品が多いのですが、これだけ私小説みたいなことを舞台にして、大丈夫なのかな…と思ってしまいました。祖母が亡くなるちょっと前からお葬式までの家族の出来事を自分の視点と母親の視点という2つの立場から描きます。

 こういう作品を見て思うのはホントに家族ってやっかいだなということ。でも決して離れることができない存在。それだからこそ愛おしいんですね、きっと。

 この2本は野田さんが芸術監督に就任したからこそ小ホールという濃密な空間で上演されたのだと思います。改めて、野田監督ありがとうございます。

 そして『ねじと紙幣』。女殺油地獄をモチーフとしたこの作品では、作・演出の倉持裕さんが歌舞伎という構造に向き合ってちゃんと現代劇に仕上げているという感じがしました。そして男の人が演じる歌舞伎とは違った面で、殺される場面でのともさかりえさんの曲がった腕とか足とかがとてもリアルでした。森山未來さんの持つ身体能力の高さがストレートプレイでもいかんなく発揮されていました。

 大人計画の『サッちゃんの明日』では家納ジュンコさんという女優さんにひかれました。とてもきれいな女優さんなんですが、もの凄いエロい事をたくさん言います。清純派に見えて変態っぽい演技がとってもうまい。よく見るとサモアリナンズの役者さんであるとのこと。さすがサモアリ。小松さんも相変わらずの天才っぷりを見せてくれました。

 小松さんといい、ハイバイに客演していた菅原永二さんといい、「普通にいるよねこの人」と思わせておいて実は凄く変なうまい人っていう役者さん、私は大好きです。

 11月3日に、新国立劇場で上演中の「ヘンリー六世」の上演後のアフタートークで司会をします。よろしかったらぜひ!!

中井の気になる!! ◆THE SHAMPOO HAT「沼袋十人斬り」(下北沢・ザ・スズナリ ~25日) ◆パルコ・プロデュース「印獣」(渋谷・PARCO劇場 ~11月8日) ◆D-BOYS STAGE「鴉KARASU」(青山劇場 ~25日) ◆「ヘンリー六世」三部作(初台・新国立劇場 中劇場 10月27日~11月23日)


2009年09月21日

 

10時間でも興味が途切れない『コースト・オブ・ユートピア』

 休憩も入れると通し上演が10時間15分の『コースト・オブ・ユートピア』を観ました!

 終わった時はさすがに得も言われぬ達成感がありましたね。19世紀ロシアの話なので、そのあたりの歴史に私がもっと詳しければ、もっと楽しめたんだろうな、という感は否めませんが、それでも舞台作品として十分におもしろく「観てよかった!」と思えるものでした。追っても追ってもせりふを咀嚼しきれないのに、興味が途切れず、気持ちが持っていかれたのは、やっぱり役者さんの力ですね。阿部寛さんや池内博之さんというモデル出身の方が、勝村政信さんや石丸幹二さんという劇団出身の方と渡り合って大きな作品をつくり上げているのが、今の日本の演劇界のおもしろさだとも思いました。ヅカファンとしては、元宝塚の紺野まひるさんが素晴らしい演技を見せてくれたのもうれしかったです。

 ヅカと言えば、星組の新トップコンビのお披露目公演となった『太王四神記』も良かったです。新トップの柚希礼音さん、夢咲ねねさんは、どちらも長身でキラキラしたルックス。この作品は今年1月、花組でも上演されましたが、ふたりに代表される星組の個性が、花組版とはまったく違う『太王』をつくりました。花組が緻密に作品を構築して、物語の世界観をていねいに伝えたとしたら、星組はケレンと勢いで観客を巻き込む感じ。どちらにも良さがあって、競作の成功例ですね。この作品はもしかしたら『ベルサイユのばら』や『エリザベート』のように、各組が手がける名作になるかもしれません。

 その星組で4月まで男役トップだった安蘭けいさんが、退団後初めて舞台に立ったのが『アイーダ』です。男役を卒業して半年もたたないうちに女性役を演じると、ほとんどの場合(そんなケース自体がまれですが)、違和感が生まれます。安蘭さんはそれがまったくなく、これからの活躍を予感させました。それにしても気になるのは、元宝塚の女優さんが増え続ける中、ミュージカルで彼女たちの相手役になる男優さんが同じくらい増えているのか、ということです。『アイーダ』の伊礼彼方君は健闘していましたが、こういう人材がますます増えてほしいですね。

 松たか子さん主演のミュージカル『ジェーン・エア』も、マツタカファンの私は大満足の1作でした。若いし、大きな苦労などなかったと思える育ちなのに、どうしてあんなリアリティーある人間像が演じられるのか。ひき込まれながらも不思議に思います。

 今回に限らずなんですが、松たか子さんの舞台はぜひ多くの人に観てほしいと思います。

中井の気になる!! ◆ハイバイ「て」(池袋・東京芸術劇場小ホール1 9月25日~10月12日) ◆新感線「蛮幽記」(新橋演舞場 9月30日~10月27日) ◆ナイロン100℃「世田谷カフカ世田谷カフカ~フランツ・カフカ『審判』『城』『失踪者』を草案とする~」(下北沢・本多劇場 9月28日~10月12日) ◆ミュージカル「CHICAGO THE MUSICAL」(赤坂ACTシアター 10月1~25日) ◆「印獣」(渋谷・PARCO劇場 10月13日~11月8日)


2009年08月17日

 

作り手の皆さんの姿勢が素晴らしいコクーン歌舞伎十五周年企画

 こんにちは、中井です。『世界陸上』の出張前、たくさんの舞台でエネルギーチャージしました。まずは、先月に続いてコクーン歌舞伎です。鶴屋南北の名作『桜姫』を先月は現代版に書き換え、今月は古典をコクーン版演出で上演するという試みでした。普通に2カ月やってもいいのに、十五周年ということもあって、あえてこういう企画を立てて冒険する。作り手の皆さんの姿勢が素晴らしいですよね。2作観たことで私自身、『桜姫』という作品をより深く感じることができました。古典版のラスト、中村七之助さん演じる桜姫が、赤ん坊を抱いている姿が神々しくて、パッと聖母マリアをイメージしたのですが、奇しくも現代版の桜姫の役名がマリア。偶然なのか仕掛けなのかは分かりませんが、贅沢な舞台の見方を経験せさてもらいました。

 ペンギンプルペイルパイルズの『cover』もよかったです。オープニングの自動車のシーンから、まさかあんなにしみじみしたラストになるとは……。深いテーマなのに淡々として、でも笑えて、さらに切ない。キーパーソンの谷川昭一朗さんが“さりげなく上手い大人の役者”でカッコよかったです。前回の劇団公演とは印象がまったく違って、作・演出の倉持裕さんの引き出しの多さを感じました。パンフレットに倉持さんが「書きたいことはたくさんある」と書かれていたので、それを追いかけていきたいと思います。

 役者の上手さを感じた作品をもう1本。世田谷パブリックシアターで上演した『奇ッ怪』です。小泉八雲の短編をイキウメの前川知大さんが構成、演出した作品で、メーンの出演者が仲村トオルさん、池田成志さん、小松和重さん。話をしながらクルクルと役が変わって、いくつもの話を行き来するのが、とてもスムーズでした。技量がなければできないことで、お三方のおかしみや色気と共に、自在な演技力を堪能しました。これも、八雲と前川さんを組み合わせた企画の勝利ですね。

 大好きなモダンスイマーズの『血縁~飛んで火に入る赤木五兄弟』もおもしろかった! 旗揚げ十周年記念作品ということで、メンバー全員で作・演出、いつもは作・演出の蓬莱竜太さんが役者として出演されていました。途中に『スリラー』のダンスがあったり、最後まで堪能しました。こんなお祭りができる劇団がどれだけあるのか考えたら、やっぱりモダンは幸せな劇団で、それを見られる私も幸せだとつくづく感じたのでした。

中井の気になる!! ◆宝塚星組『太王四神記』(東京宝塚劇場 ~9月13日) ◆ザ・ミュージカル アイーダ 宝塚歌劇「王家に捧ぐ歌」より(東京国際フォーラム ホールC 8月29日~9月13日) ◆NODA・MAP『ザ・ダイバー』日本バージョン(東京芸術劇場 小ホール1 8月20日~9月20日) ◆ミュージカル『ジェーン・エア』(日生劇場9月2~29日) ◆『ワルシャワの花』明石家さんま主演(世田谷パブリックシアター 9月5~16日) ◆英国ロイヤルバレエ『兵士の物語』(新国立劇場 中劇場 9月11~16日)


2009年07月20日

 

“演劇の神様”のような存在に思えた『桜姫~』での笹野高史さん

 こんにちは、中井です。本格的な夏ですね。暑さに負けず、劇場通いを続けましょう!

 今月、強く印象に残っているのは『桜姫~南米版』。脚本を書いた長塚圭史さんは、以前はひとつのことをいろんな言葉で説明しているイメージでしたが、劇団公演の『失われた時間を求めて』から、観客に大きなテーマを投げて説明しないようになってきている印象に変わりましたね。初日開けてすぐと千秋楽前日の2回見たのですが、そういう抽象的な内容だったせいか、最初は役者さんたちが探り探りだったのが、あとになるとそれぞれが自分の色を出していて、印象がまったく違いました。歌舞伎の『桜姫東文章』はあらすじしか知らないのですが、アッパークラスの人も底辺で生きる人も、ひと皮むけば結局は似たようなものだというメッセージは、何となく共通しているような気がします。笹野高史さんの役割が、都合のいい時に必要なものを持ってきたり、片付けたり、作者が持っていきたい方向に物語を引っ張っていくという、歌舞伎でいえば黒子ですが、もっと広く“演劇の神様”のような存在だといえる気もして、おもしろかったですね。

 シアタークリエで上演された『ゼブラ』は、ヒロイン役が交替して現場は大変だったと思いますが、星野真里さんは主人公のキャラクターにぴったりで、まるで最初からキャスティングされていたようでした。夫の愛人と会った斎藤由貴さん演じる長女が、その愛人が帰った後に茶碗を投げつけるシーンになぜか私のスイッチが入り(そんな経験はないのに!)、そのあとは胸が詰まりっぱなしでした。小劇場の作品がプロデュース公演で大きくなった成功例だと思います。

『COCO』は、先月から続くマイブーム、鳳蘭さんのシャネルがとにかく格好よかった! コレクションに失敗した晩年のシャネルから話が始まるのがよかったですね。

 宝塚月組の『エリザベート』は、自分のトートをつくり上げていた瀬奈じゅんさんが素晴らしかった。彼女はルキーニ、そして男役でありながらエリザベートも演じた経験もあり、この作品で3役演じたことのある、おそらく世界で唯一の人。東宝版は演じる人に合わせて振付が変わりますが、宝塚版は同じ歌詞、同じ振付なので、逆に演じる人の個性が問われます。瀬奈さんは満を持してのトートで「見せどころをわかっている!」というまさに美しく、妖しく歌い踊り誘う宝塚のトートでした。

中井の気になる!! ◆ONEOR8『躾』(吉祥寺シアター ~26日) ◆ペンギンプルペイルパイルズ『cover』(下北沢・本多劇場 ~26日) ◆モダンスイマーズ『血縁』(赤坂RED/THEATER ~8月2日) ◆コクーン歌舞伎『桜姫』(渋谷・シアターコクーン  ~30日) ◆『オペラ・ド・マランドロ』(池袋・東京芸術劇場中ホール 25日~8月2日) ◆『スペリング・ビー』(天王洲 銀河劇場 ~8月2日)


2009年06月15日

 

凄すぎる鳳蘭さんの存在感と清水邦夫さんの戯曲

 こんにちは中井です。今月もたくさんの作品を見ました。担当の編集者の方に「舞台と仕事のバランスがおかしくありませんか」と言われました…。

 今月真っ先に取り上げなければいけないのが『雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた』。戦争で解散してしまった少女歌劇団の、かつての娘役のスターが『ロミオとジュリエット』の稽古を続けながら今もなおゴールデンコンビといわれた相手役の登場を待ち続けるというお話。娘役トップスターの三田和代さんが待ち望む相手役を演じた鳳蘭さんの存在感にとにかく圧倒されました。鳳さんがセットとなっている大階段の上から現れるのですが、これが何年も宝塚のトップを務めてきた人の降り方なんだと思いました。こんな相手役に巡り会ったら自分の残り人生をかけて待つだろうな、と納得させられました。

 そしてなにより脚本の清水邦夫さんの台詞が物凄く刺さるんです。夢の世界に生きてきた女優さんの人生の幕の引き方。それを支える男性たちの姿。戦争を経て変わってしまったそれぞれの人生。老いをどう受け入れて生きていくのか。息をのむような美しい言葉、印象的な台詞が襲ってきて、しばし立ち上がれなくなるほど。カーテンコールで流れた清志郎さんの「デイドリーム・ビリーバー」の歌詞がまた芝居のテーマに合っていて、また涙。

『楽屋』も清水さんの作品。生瀬勝久さんが演出しているからか、コメディーシーンも多く、笑っているうちに、女優として生きるということの恐ろしさ、切なさ、魅力を余すところなく感じさせてもらいました。

 女性というものを知り尽くしたかのような美しい言葉が散りばめられた清水さんの作品はもっと見なくちゃ。とにかく戯曲が読みたい、と思いました。

『夏の夜の夢』は再演。前回は見られなかったのですが、とても評判がよくてぜひ見たかった作品でした。パック役のチョウソンハさんの台詞と最後のシーンに感動。回り舞台がぐるっと回るとそこは舞台装置の裏。スタッフさんも見切れて早替わり室もよく見えるし、衣装を脱いだ出演者が皆登場し、役ではなく役者の姿と表情をさらけ出す。演劇っていいなあとぐっときました。

『鴨川ホルモー』は本屋大賞連続上演シリーズの最終作。このシリーズは3本あったのですが、どれも劇場、演出家、演者がうまくかみあっていて、とてもいい企画だったと思います。またこういうシリーズを仕掛けてくれないかな~と思いました。

中井の気になる!! ◆「桜姫」(渋谷・シアターコクーン 30日) ◆「炎の人」(天王洲 銀河劇場 28日) ◆「グローリー・デイズ」(新宿FACE 25日) ◆「Mr.PINSTRIPE 2009」(青山劇場 2528日) ◆さいたまゴールド・シアター「アンドゥ家の一夜」(彩の国さいたま芸術劇場 小ホール 18日7月1日) ◆「NINAGAWA 十二夜」(新橋演舞場 2027日) ◆「現代能楽集 鵺」(初台・新国立劇場 小劇場 7月220日)


2009年05月18日

 

劇団公演だからこそ出来た!? ナイロン100℃『神様とその他の変種』

 こんにちは、中井です。皆さんは大型連休をどう過ごされましたか? 私はせっせと劇場通い。いつもと変わらぬ日々でした。

 まず庭劇団ペニノのアトリエ、はこぶねに初めて行ってきました。ごく普通のマンションの一室で、30人ぐらいでいっぱいになる客席と小さな舞台がつくられています。でも舞台上の美術は細部までつくり込まれていて、終演後、写メを撮らせてもらったくらい(撮影していいとのことでした)、緻密でした。タイトルが『苛々する大人の絵本』なので、どうイライラする話なのかと思っていたら、誰かの夢を形にしたような、中学生男子のエロ妄想を具現化したような、不思議な内容でした。でも私の頭の中に普段浮かんでいることを1時間切り取ったら、きっと大差はないはず。「舞台を観る」という行為の中で、無意識のうちに「観る側」と「つくる側」を分けて考えがちでしたけど、本当は頭の中は似たようなもので、それを形にするかしないかの違いだけなのかな、と考えたりしました。

 新国立劇場で田村孝裕さんが演出した『シュート・ザ・クロウ』も、登場人物にリアリティーがあっておもしろかったです。翻訳劇らしからぬ日常的な空気が感じられて、また同時に、4人の男優さんがみんなタイル張り職人に見えました。田村さんには男芝居や翻訳モノのイメージがなかったのですが、さすがですね。次回作がご自身の脚本で四姉妹を中心にした『ゼブラ』とまったく違う世界なので、この作品を経て『ゼブラ』がどう変わるのか、とても楽しみになりました。

 それからナイロン100℃の『神様とその他の変種』。またもやKERAさんにヤラれました。さんざん笑ったり怖い気持ちになったあと「ああ、私たちの家も動物園と同じ、雨ざらしなんだな」と納得させられて。作品ごとにやっていることが違うのに、でも最終的にはKERAさんしか書けないと納得させられる確かなものがあるんですよね。特に今回は、劇団公演だからこそ出来た作品だと思いました。作・演出家の望む形を短時間でつかめる役者さんが集まっている凄さ。だって峯村リエさんが演じた役なんて相当難しい役ですし、みのすけさんだからこそ11歳の少年を自然に演じられたはず。そこに山内圭哉さんや水野美紀さんという外部の方が新鮮かつ、この作品にしかない空気を注いでくれて大満足でした。それにしても、やっぱり音楽がかっこいい。毎度ですがサントラ化、希望します!

中井の気になる!! ◆『夏の夜の夢』(初台・新国立劇場 中ホール 5月29日~6月14日) ◆『江戸の青空』(三軒茶屋・世田谷パブリックシアター 5月24日~6月7日) ◆ハイバイ『リサイクルショップKOBITO』(こまばアゴラ劇場 6月5~16日) ◆『女信長』(青山劇場 6月5~21日) ◆『桜姫─現代劇─』(渋谷・シアターコクーン 6月7~30日) ◆『ゼブラ』(日比谷・シアタークリエ 6月9~29日) ◆『グローリーデイズ』(新宿FACE 6月11~25日) ◆ホリプロ『炎の人』(天王洲 銀河劇場 6月12~28日)


2009年04月20日

 

ハチャメチャなファンタジーのビジュアル化には演劇が最適

 こんにちは、中井です。今月もたくさんのいい舞台に巡り合いました。まずは劇団☆新感線の『蜉蝣峠』。宮藤官九郎さんと新感線の組み合わせは『メタルマクベス』(06年)以来ですが、今回もまたうまくハマりましたね。宮藤さんの書く話は、中島かずきさんの話のように、いくつかの話がどんどんまとまって大きなうねりになるのではなく、すごくバカバカしい画(え)、すごく寂しい画というピースがパズルを埋めるように集まって、最終的にひとつになるんだな、と感じました。同じいのうえ歌舞伎でも、書き手によって世界が広がっていくのはおもしろいですね。

 どんなふうになるのかまったく予想がつかなかったけれど、観たらとても楽しめたのが『夜は短し恋せよ乙女』でした。主役ふたりが初舞台と聞いていたので「大丈夫?」とも思っていたのですが、田中美保ちゃんも渡部豪太君も原作の小説にイメージにぴったりな上、舞台上でとても伸び伸びと動いていたのが印象的でした。セットの動かし方、空間の使い方も、アナログなのに想像力が刺激されました。もとがハチャメチャなファンタジーの場合、演劇こそビジュアル化に最適なメディアだと実感させてもらいました。アトリエダンカンの本屋大賞シリーズは『風が強く吹いている』も良かったので、三部作最後の『鴨川ホルモー』にも自然と期待がかかります。

 美輪明宏さんが主演、演出、美術を手がけた『毛皮のマリー』も、ビジュアル化という点で圧倒的でした。自分はこれが好きだという趣味、思想、主張を、異端と言われながらも徹底的に打ち出す。しかもお金と時間をかけて。何しろ会場のル・テアトル銀座のロビーは、『毛皮のマリー』公演中だけ床がバラ模様になったんですよ。もうひとつの十八番である『黒蜥蜴』のように、陰のある華麗な世界も好きですが、今回の徹底したキッチュさも素晴らしかったです。

 宝塚星組『マイ・ディア・ニューオリンズ』は、トップの安蘭けいさんをはじめ10人が一気に退団する特別なさよなら公演でした。本編にもそれは反映されていましたが、私としてはレビュー『ア・ビアント』に感動しました。作曲の藤井大介先生が、安蘭さんと同期ということもあって思い入れもあったんでしょうね。彼女が在籍した組の名前、よくインタビューで答えていた言葉までが歌詞に盛り込まれ、これまでの思い出と愛惜、未来へのエールがこもったショーになっていて、私は観るたびに大号泣してしまいました。

中井の気になる!! ◆ナイロン100℃『神様とその他の変種』(下北沢・本多劇場 ~5月17日) ◆大パルコ人 メカロックオペラ『R2C2~サイボーグなのでバンド辞めます!~』(渋谷・PARCO劇場 4月27日~5月31日) ◆『シラノ』(日比谷・日生劇場 5月5~28日) ◆バンダラコンチャ ソロアルバム公演『相思双愛』(新宿・紀伊國屋ホール 5月9~17日) ◆イキウメ『関数ドミノ』(赤坂RED/THEATER 5月8~24日) ◆SISカンパニー『楽屋』(三軒茶屋・シアタートラム 5月10日~6月14日) ◆新国立劇場『タトゥー』(初台・新国立劇場 小ホール 5月15~31日) ◆サンプル『通過』(三鷹市芸術文化センター 星のホール 5月15~24日)


2009年03月16日

 

宝塚未体験者にすすめたい「太王四神記」と「逆転裁判」

 こんにちは、中井です。暖かくなって、劇場通いがますます楽しい季節ですね。

 時々聞かれる質問に「宝塚っておもしろいんですか?」というものがあります。そんな時、私はなるべく具体的な作品を例に出して説明するんですが、先月観た花組の『太王四神記』と宙組の『逆転裁判』は、ヅカの強みと魅力がたっぷり詰まっていて、その説明にとっても役立ちました。『太王』はNHKでも放送されていたヨンさま主演の韓国ドラマが原作。全24話を2時間半にまとめるわけですから、話はかなりカットされます。でも、ファンタジー&コスチュームものはヅカにアドバンテージあり。男役がメインという大原則ともぴったり合って、テンポのいい見どころいっぱいの作品になりました。『逆転』は、同名ゲームソフトが原作です。ゲームソフトから舞台をつくるという発想に驚きましたが、考えてみたらキャラ設定がはっきりしているのはヅカ向き。無理なくハマりました。どちらもこれから2度目の上演がありますから「宝塚っておもしろいの?」と考えている未体験者の皆さんにお薦めしたいです。

 モダンスイマーズの『トワイライツ』とグリングの『吸血鬼』は、偶然ですが、いつものトーンと違う作品でした。前者は蓬莱竜太さんの描く恋愛劇ということで、どんな話になるのか興味津々でした。それが意外なほど暗くて厳しい愛の形が描かれていて驚きました。決して幸せにはなれないけれど、出会ってしまった以上、離れられない関係がある。そんなふたりの物語でした。後者は、主人公である脚本家が、かつての恋人の死の理由をたどっていく話です。救いはありますが、老人介護など厳しいエピソードも挟まれます。KERAさんも松尾スズキさんも劇作家を主人公にした作品を書いていましたが、つくづく、書く仕事って大変なんだなって思いました。

『地球に落ちてきた男』は、初演と再演の印象のあまりの違いに驚きました。カスパー・ハウザーという実在の人をモチーフにしているのですが、初演は、言葉も話せない字も読めない、どこで誰に育てられたのかわからない可哀想な人の話だと思っていたのに、今回は始まった途端に「これは私だ!」と感じたのです。私が成長したのかもしれませんが、主役を演じたのが役者でありダンサーでもある舘形比呂一で、この人の力も偉大でした。きれいに動く肉体は雄弁だと痛感しました。

中井の気になる!! ◆ミュージカル「回転木馬」(天王洲銀河劇場 3月19日~4月19日) ◆宝塚星組「My dear New Orleans(マイ ディア ニューオリンズ)」(東京宝塚劇場 3月27日~4月26日) ◆SHOW STAGE NO.1「Triangle~ルームシェアのススメ~」(渋谷・PARCO劇場 3月27日~4月19日) ◆シリーズ・同時代【海外編】Vol.2「シュート・ザ・クロウ」(初台・新国立劇場 小劇場 4月10~26日) ◆「淫乱斎英泉」(東池袋・あうるすぽっと 4月2~12日) ◆表現・さわやか+B-amiru「ザ ワースト オブ 表現・さわやか」(新宿・シアターブラッツ 4月3~10日) ◆「夜は短し歩けよ乙女」(新大久保・東京グローブ座 4月3~15日)


2009年02月16日

 

駅伝を舞台に…!? いやいや素晴らしかった『風が強く吹いている』

 こんにちは、中井です。ようやく春ですね。花粉症に負けず、ティッシュ持参で劇場に行きましょう!

 先月、私のハートをがっちりつかんだのは『風が強く吹いている』でした。原作は三浦しをんさんの人気小説で、駅伝が題材です。話を聞いた時は「駅伝を舞台に?」と頭の中が「?」だらけ。テニミュも「どうやってテニスを舞台に?」と思いましたが、『風が』はそれ以上に疑心暗鬼で劇場に出かけました。ところがこれが、予想に反して素晴らしかったのです。二幕のうち一幕目は寮の中、ここで登場人物のキャラクターや、彼らの置かれている状況が語られます。そして二幕目はセットががらりと変わって駅伝のシーン。舞台上の役者さんは全員が正面を向き、それぞれが走り終えた人、走っている人、待っている人、中継地点の人などを演じます。そのときのせりふがグッと来るものが多くて……。鈴木哲也さんの脚本、素晴らしいと思いました。イケメン俳優でスポーツを題材にした舞台をはいろいろありますが、これはかなりの高得点でした。駅伝というスポーツが日本人のメンタリティーに訴えるもの、ランニングとフィールドコートが女子心に訴えるものを、見事にすくい取っていたと思います。

 パルコ・プロデュースの『リチャード三世』もおもしろかったですね。イギリス・グランジ風の衣裳が私のツボでしたし、映像も活用するいのうえひでのりさんの演出全体に「よくわかる、飽きないシェイクスピアを」という意図が感じられました。いのうえ演出の権化・古田新太と、いのうえ演出には新鮮な三田和代さん、銀粉蝶さんといった役者さんの顔合わせも見応えがありました。

 新鮮だったといえば、シルク・ドゥ・ソレイユの『コルテオ』も忘れるわけにはいきません。「またサーカス?」「またシルク?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これは本当にお勧めです。ある男性が死んだあとに見る夢、というストーリーで全体が進むのですが、子供のころの枕投げがいつの間にかすごいトランポリン技になったりと、物語と技のつなぎ方がとても上手い。しかも散りばめられるアイテムが天使や妖精やジプシー音楽などヨーロッパ・テイスト満載。TVCMでは超絶技の印象が強くしますが、そして実際に超絶技なのですが、全体を流れるトーンがロマンチックなんです。SS席1万3000円のチケット代は決して高くないと思います。

中井の気になる!! ◆宝塚花組『太王四神記』(東京宝塚劇場 ~3月22日) ◆シスカンパニー『夜の来訪者』(新宿・紀伊國屋ホール ~3月15日) ◆『ムサシ』(彩の国さいたま芸術劇場 3月4日~4月19日) ◆舘形比呂一『地球に落ちてきた男』(赤坂レッドシアター  3月5~15日) ◆『昔の女』(新国立劇場 小劇場 3月12~22日) ◆新感線『蜉蝣峠』(赤坂ACTシアター 3月13日~4月12日) ◆オーチャドホール クラウド・ゲイト・ダンスシアター『ホワイト』(渋谷・オーチャードホール 3月4~6日)


2009年01月19日

 

宝塚で「カラマーゾフの兄弟」!? 取り越し苦労の素晴らしい出来栄え

 こんにちは、中井です。2009年も始まったばかりというのに、もう続々といい舞台が動き出していますね。ほんの一部ですが、その感想を皆さんにお伝えしていきます。

 まず1本目は、宝塚雪組の『カラマーゾフの兄弟』。「宝塚でカラマーゾフ?」と驚いた方、いらっしゃいますよね? 私も演目だけ聞いた時は、正直、違和感がありました。ドフトエフスキーの原作を私は読んでいないのですが、暗くて重くて長い文芸作品だということは知っています。でも、どんな原作であれ、宝塚で上演するなら一定のルールの中で再構成されることになります。男性が主人公で、その男性が格好よく描かれること、歌と踊りを入れること、この公演では休憩を含めて2時間半にまとめることなどなど……。そこにうまくハマるのか、よく分からなかったからです。でも、そんな心配はいりませんでした。宝塚のセオリーの中でかなりアレンジされたのだろうな、と分かるのですが、脚本・演出の斎藤吉正さんは、人の罪をかぶる男の美学を採りいれ、テンポよく話をまとめてくれました。音楽が『ゲド戦記』も手がけられた寺嶋民哉さんなのですが、ゲーム音楽的なポップさが分かりやすさを助けてくれたと思います。ラスト、ロシア民謡などがテクノっぽくアレンジされてダンスが始まるのですが「これはこれであり!」と納得。なのに原作のイメージを何ひとつ損なうことのない出来栄えでした。

 青木豪さんが脚本を書いた『空の定義』も心が打たれました。俳優座プロデュースで、私がこれまで観ることのなかった新劇系劇団の役者さんが何人も出演されていたのですが、主人公をナイロン100℃の松永玲子さんが演じていたこともあって、親しみを感じました。内容は、学生運動をしていた人とその子供の確執と和解です。学生運動という硬いテーマを使いながらこんなふうに家族の話ができるんだ、と驚きました。青木さんは、痛くて沁みる家族の話をよく描かれるのですが、その感触はそのままに、でも『空の定義』にはいつもより大きな世界観を感じました。家族を捨てて革命を選んだのが女性という設定もおもしろかったですね。

 KERA・MAPの『あれから』もよかったです! 思い返すと、渡辺いっけいさん、よかった。高橋ひとみさん、よかった。萩原聖人さん、よかったと、次々と出演者の方が浮かんできて……。これって、いい作品だったという何よりの証ですよね。

中井の気になる!! ◆騎馬スペクタクル ジンガロ『バトゥータ』(清澄白川・木場公園内ジンガロ特設シアター 1月24日~3月26日) ◆オリガト・プラスティコ『しとやかな獣』(新宿・紀伊國屋ホール 1月29日~2月8日) ◆『ちっちゃなエイヨルフ』(東池袋・あうるすぽっと 2月4~15日) ◆『その夜明け、嘘』(青山円形劇場 2月7日~23日) ◆『アルターボーイズ』(新宿FACE  2月10~22日) ◆『マルグリット』(赤坂ACTシアター 2月10~18日) ◆宝塚花組『太王四神記』(東京宝塚劇場 2月13日~3月22日) ◆『夜の来訪者』(新宿・紀伊國屋ホール 2月14日~3月15日)


2008年12月15日

 

無意識に「70年代に戻りたい」モードに入っていたみたい

 こんにちは、中井です。2008年もたくさんの舞台を観て、たくさん笑ったり感動したり……。11月も豊作でした!

 まずは表現・さわやかの『美少年オンザラン』。逃げる美少年、というタイトルからして私のツボで、どんな美少年を見せてくれるのかとワクワク。開演前に買ったパンフやグッズで、出演者の皆さんが70年代アイドルになりきっているのを観て、さらに期待が倍増していたのですが、本編に美少年らしい人物は登場せず(笑)。それでもおもしろかったんですが、後半は意外にもグッと来ました。コントに徹するというより、大きなお話が根底にあって、それが収束していく時に胸に迫るものがあったんです。でも、終わった途端に感動したせりふを忘れているのは、さわやかの笑いの強さですよね?

 ウーマンリブの『七人は僕の恋人』も、女優陣が活躍する話だと思っていたら──実際に大活躍されるんですが──、観終わったあと頭の中をループしていたのは、池田成志さんが演じた“老いたアイドル、ズッキー”と、客入れ客出しの時に流れていた歌謡曲『原宿キッス』でした。これは私が無意識に「70年代に戻りたい」というモードになっているのでしょうか(笑)。伊勢志摩さんのパチンコキャラや、荒川良々さんと双子に扮した峯村リエさんも最高だったんですが。

『表裏源内蛙合戦』は、4時間10分という長い上演時間をまったく退屈させない作品でした。江戸のさまざまな物売りをひとつずつ丁寧に見せていくのは“大いなる無駄”と言えば言えるのですが、それを堂々とやっておもしろく見せるのが、さすが蜷川幸雄さんです。主演の上川隆也さんも、蜷川作品に初参加とは思えない堂々たる演じっぷりでした。上手さに加えて大らかさがあり、改めて、いい役者さんだと思いました。

 宝塚は星組が全国ツアーで上演した『外伝ベルサイユのばら-ベルナール編-』を観に静岡へ。これは原作者の池田理代子先生が宝塚のために脚本を書き下ろした三部作のラストを飾る作品です。主演のトップコンビ、安蘭けいさんと遠野あすかさんは、歌もお芝居も上手でスター性もあるふたり。でも6月の退団が決まっていて「このコンビを観られるのはあとわずか」というファン心理から、一層キラキラ度が増しました。レヴューの『ダンディズム』も含め、素晴らしい舞台を観ることができ、静岡まで行った甲斐は十分にあったのでした。

中井の気になる!! ◆「新春浅草歌舞伎」(浅草公会堂 1月2~27日) ◆宝塚月組「夢の浮橋」「アパショナード」(東京宝塚劇場 1月3日~2月8日) ◆野田地図「パイパー」(渋谷・シアターコクーン 1月4日~2月28日) ◆「志の輔らくご in PARCO 2009」(渋谷・PARCO劇場 1月5~27日) ◆早乙女太一 新春特別公演「わらべうた」(青山劇場 1月6~18日) ◆宝塚雪組「カラマーゾフの兄弟」(赤坂ACTシアター 1月6~14日) ◆「スーザンを探して」(日比谷・シアタークリエ 1月6日~3月5日) ◆アクサル「11人いる!」(新宿御苑前・シアターサンモール 1月6~12日) ◆「冬物語」(彩の国さいたま芸術劇場 大ホール 1月15日~2月1日) ◆「リチャード三世」(赤坂ACTシアター 1月19日~2月1日)


2008年11月17日

 

楽しみ半分、心配半分も「観てよかった!」思い出トランプ

 こんにちは、中井です。急に寒くなりましたね。私はうっかり風邪を引いてしまいましたが、皆さんは大丈夫ですか?

 今月も「観てよかった!」の収穫がたくさんありました。まずは『思い出トランプ』。以前から注目している作・演出家の田村孝裕さんが、向田邦子さんの小説を舞台化したもので、田中麗奈さんの初舞台としても話題になりました。普段の作品が「向田さんぽい」と言われている田村さんですが、敬愛する作家の作品の本歌取りとなるとプレッシャーも大きかったはず。実は私も楽しみ半分、心配半分でした。でも結果は大満足。4本の短編小説をひとつにまとめ、オリジナルの部分も書き加えた内容は、「相変わらず女性の心理を描くのが上手いなぁ」と、うなってしまうものでした。会場では原作本がかなり売れたと聞きましたが、「このエピソードはどの小説?」と確かめたくなる気持ち、よく分かります。

 それから宝塚花組の『銀ちゃんの恋』も、予想を上回る出来栄えでした。この作品は、つかこうへいさんの『蒲田行進曲』が原作。男同士ならではの無茶な上下関係、浪花節的な愛、我がままで破天荒な主人公…。『蒲田~』をご存知の方は、およそ宝塚らしくない世界観だと分かっていただけますよね。さらに12年前の初演がとても評判が良く、久々の再演はどうなるのか、想像がつかなかったのです。ところが、銀ちゃん役の大空祐飛さん、ヤス役の花形ひかるさん、小夏役の野々すみ花さんをはじめとする花組生が大健闘。特に、華やかな男役の花形さんが、ハマリ役と言っていいくらい、カッコ悪いヤスを演じきっていて感動しました。

 そして、足かけ4カ月続いた『テニミュ』の夏公演がいよいよファイナルを迎えたのにも感動! やっぱりこの作品は素晴らしいです。どの役にも見せどころが用意されているし、原作のキャラクターがしっかりしているんですね。今回は同じ役を複数の役者さんが演じる“バージョン違い”が何組もあったのですが、ひとつのキャラクターが誰々版という形でこんなにも楽しめるんだと発見させてもらいました。長期間やっていたこともあって、役者さんたちが上手くなっていくのがはっきり分かって、この“育つのを見守る”感覚からは、当分、足が洗えません(笑)。大千秋楽のカーテンコールでは原作者の許斐剛先生がステージに上がり、「再連載」を宣言されました! ミュージカル版に刺激を受けたのかな、と考えると、ただのブームではないことを確信しました。

中井の気になる!! ◆表現・さわやか「美少年オンザラン」(下北沢・駅前劇場 ~11月30日) ◆「愛と青春の宝塚」(新宿コマ劇場 12月2~22日) ◆新国立劇場「舞台は夢」(初台・新国立劇場 中劇場 12月3~23日) ◆音楽劇「箱の中の女」(渋谷・シアターコクーン 12月10~25日) ◆俳優座劇場プロデュース「空の定義」(六本木・俳優座劇場 12月11~22日) ◆KERA・MAP「あれから」(三軒茶屋・世田谷パブリックシアター 12月13~28日


2008年10月20日

 

KERAさんの芝居を見て自分が作家でもないのにヒリヒリ

 こんにちは、中井です。すっかり秋が深まりましたね。季節のせいではないでしょうが、いろんなことをじっくりと考えさせられる舞台にたくさん出合いました。

『ゆすり』は、平田満さんと井上加奈子さんご夫妻のユニット、アルカンパニーに、グリングの青木豪さんが書き下ろし、演出も手がけた作品です。出演は平田さんと井上さん、そして大谷亮介さんという大人の3人で、内容もとっても大人でした。小心者の善人にしか見えない平田さんが、実は大谷さんと井上さんをゆすりに来た怖い人…で終わる話かと思ったら、むしろそれはきっかけで、そこから露わになったのは兄と妹の近親相姦や、不安定な妹の精神状態。本当に怖いのは誰なのかを何度も考えさせられました。そして、こんなふうに怖くてエロい話を書いてしまう青木豪という作家について興味が深まりました。

 作家への興味という点では、半自伝とも言える『シャープさんフラットさん』を書いたKERAさんも、ますます目が離せなくなりました。 作家や演出家を主人公にした舞台は少なくありませんが、KERAさんの手にかかると苦悩の切実度が増して、自分が作家でもないのにヒリヒリするんです。笑いに取りつかれ、恋人とも劇団とも上手く付き合えなくなった作家を見ていると、何をおかしいと感じるかは、その人の本質的な部分をむき出しにすることで、その分、そこがズレてしまうと残酷な結果を生んでしまうのだと改めて教えられました。それにしても、ほぼ同じ脚本を2組で交互に上演する企画はおもしろかったです。役者さんが変われば、役の印象、話の印象が変わるのは当然だとは思っていましたが、まさかこんなに変わるのかと。そしてKERAさんのお芝居を観るたびに思うのですが、ぜひサントラをつくってほしいです!

 NODA・MAPの『The Diver』は、野田秀樹という才能豊かな劇作家が、キャサリン・ハンターという才能あふれる女優に出会った奇跡を堪能しました。まるで魂の双子のように、野田さんがイメージすることをせりふでも動きでもやりこなしてしまうのがキャサリンなのではないかと感じたのです。お互いに長いキャリアを重ねてきて、しかも外国人同士で、こんなふうに深い絆を結べるふたりが出会えるのはすごいことですよね。そして彼らがつくる生の舞台を、シアタートラムという小さな空間で味わえたのは、観客としての奇跡でもあると思いました。

中井の気になる!! ◆ミュージカル『テニスの王子様』東京凱旋公演(池袋・東京芸術劇場 中ホール 10月30日11月3日) ◆パルコプロデュース『幸せ最高ありがとうマジで』(渋谷・PARCO劇場 10月21日11月9日) ◆新国立劇場『山の巨人たち』(初台・新国立劇場 中劇場 10月23日11月9日) ◆『表裏源内蛙合戦』(渋谷・シアターコクーン 11月9日12月4日) ◆『昭和島ウォーカー』(新大久保・東京グローブ座 11月223日)


2008年09月15日

 

やっと本拠地の「庭劇団ペニノ」でタニノクロウを体験

 こんにちは、中井です。暑い夏、私は涼しい劇場でたくさんの思い出をつくりました。

 ひとつは庭劇団ペニノ。以前、プロデュース公演で『野鴨』を観たり、何人かのクチコミからタニノクロウさんに興味を持っていたのですが、やっと本拠地の劇団でタニノさんが作・演出する舞台を観ることができました。『星影のJr.』というタイトルにあるJr.とは、おそらく主演のタクミ君のこと。日仏ハーフの小学生を中心にした家族劇で、当日パンフレットのタニノさんの文章には「これはタクミ君のための公演」とあり、物語は学校の授業のように「1時間目」「2時間目」と区切られて進むのですが、ずいぶん思い切った授業をするなぁというのが正直な感想です。これはほめ言葉で、冷めた夫婦生活や、父親と愛人の肉欲の結びつきなど、大人から見れば肉感的で不道徳な出来事も、子供の目にはただの風景のように映るのかもしれない、と気づかされました。それがあとから意味と結びついて、私たちが持っている常識や先入観になるのかもしれません。タクミ君の夏休みの絵日記をのぞいているような感覚に、そんなことを思いました。タニノさんはきっと“絵”で舞台をつくる人なのでしょう、小さなスズナリでセットの転換を何度も繰り返して、絵づくりにこだわっているように見えました。犬になっても息子の近くにいようとする母親の情念は、ひたすら怖かったです!

 もうひとつ、初めて観た劇団がサスペンデッズ。作・演出は早船聡さんで、新国立劇場の「シリーズ・同時代」で『鳥瞰図』の脚本を書かれた方です。ご自身の劇団の新作『MOTION&CONTROL』では、『鳥瞰図』とはまったく違う、青春の匂いたっぷりの世界を見せてくれました。大学の映研と、それから10年くらいたった今と、ふたつの時間が交互に描かれ、その中で、ひとりの女性をめぐるふたりの男性の考え方、生き方の違いが浮かび上がります。この大学時代のエピソードが、いちいち自分の過去とシンクロしまくり。個人的な感情としてフィードバックして、胸がつまったり恥ずかしくなったり、大忙しでした。

『ガラスの仮面』は、あの壮大な原作をどう舞台にするのか興味津々でしたが、登場するエピソードがどれもストライクゾーン! しかも、天才演劇少女のバトルではなく“舞台は観客によって仕上げられる”という柱を立てたことで、観ている私たちも気持ち良く巻き込まれました。私が子供だったら、夏休みの絵日記に間違いなく、この舞台のことを描いたことでしょう。続編、待っています!

中井の気になる!!◆NYLON100℃『シャープさんフラットさん』(下北沢・本多劇場 9月16日~10月19日) ◆『TheDiver』(三軒茶屋・シアタートラム 9月26日~10月13日) ◆笑福亭鶴瓶落語会(紀伊國屋サザンシアター 10月1~5日) ◆ハイバイ『オムニ出ス』(原宿・リトルモア地下 10月19日~11月5日)


2008年08月18日

 

とても意味ある企画だった新国立劇場の「シリーズ・同時代」

 こんにちは、中井です。オリンピックが連日盛り上がりを見せていますが、私も連日劇場で盛り上がっています。

 新国立劇場の『シリーズ・同時代』は、とても意味のある企画だったと思います。未知数の部分も多い小劇場の若い作家と、すでに名の知られた演出家の組み合わせを、続けて3作見られたのは新鮮でした。このシリーズで初めて作品に触れた方もいて、その人の劇団の作品も観たくなったりと、刺激を受けました。そのシリーズの最後を飾ったのが『まほろば』。脚本はモダンスイマーズの蓬莱竜太さん、演出は栗山民也のコンビです。蓬莱さんは男性中心の話を書くことが多いのですが、栗山さんのアドバイスで今回初めて、女性だけしか出てこない物語を書かれたそうです。観る前の私は「蓬莱さんが女性の話?」と違和感があったのですが、心配は不要でした。やっぱりせりふは上手いし、女性の人生についていろいろと考えさせられました。少し前まで日本には「女は結婚して子供を産むのが当たり前」という考え方がありましたよね。今は価値観も多様化して、私自身そういう道を選ばなかったわけですが、キャリアウーマンの予想外の妊娠が昔から続くお祭りと絡むことで「女性→産む性」という大きな流れが自然に感じられました。

 劇団☆新感線の『五右衛門ロック』は、もうじき閉館する新宿コマ劇場で新感線が大暴れした、派手で楽しい、まさにお祭りのような公演でした。この劇団が豪華な客演さんを呼ぶことはもう珍しくありませんが、北大路欣也さんとはさすがに意外でしたし、北大路さんと松雪泰子さんのデュエットが聞けるなんて! いいものを見せていただきました。

 松尾スズキさんが作・演出した『女教師は二度抱かれた』も良かったです。市川染五郎さんの前で歌舞伎俳優の役を演じた阿部サダヲさん、きっと大変だとは思うんですが、観ていてとても納得できました。「歌舞伎をぶっ壊す!」と意気込む歌舞伎俳優さんがいるとしたらこういう人なんだろうな、というこちらのイメージが、本当に人間の形になって動き出した気がしました。過去の事件が連鎖反応を起こして、いろんな人を不幸にし、いろんな人を狂わせるという内容で、切なくもあり悲しくもありなのに、やっぱり笑ってしまうおかしさは、松尾さんならではなんでしょうね。浅野和之さんが何でもできる役者さんだということも、よく分かりました。

中井の気になる!!◆『ミュージカル テニスの王子様 THE IMPERIAL PRESENCE氷帝feat.比嘉』(9月26日まで全国各地) ◆『赤坂大歌舞伎』(赤坂ACTシアター 9月3~20日) ◆『人形の家』(渋谷・シアターコクーン 9月5~30日) ◆宝塚星組『スカーレット・ピンパーネル』(東京宝塚劇場 8月22日~10月5日) ◆宝塚月組『グレート・ギャツビー』(日生劇場 9月1~23日) ◆The shampoo hat『葡萄』(下北沢・ザ・スズナリ 9月10~23日) ◆ナイロン100℃『シャープさんフラットさん』(下北沢・本多劇場 9月16日~10月19日) ◆ワンダフルズ『世界の博覧会』(下北沢・駅前劇場 9月17~23日)


2008年07月21日

 

『SISTERS』は地方に追いかけてでも観るべき舞台

 こんにちは。中井です。観劇に夏休みなし。今月もたくさんの舞台を観てきました。

 衝撃的だったのは『SISTERS』。

 作・演出の長塚圭史さんは、男性なのになぜ娘の立場から見た親子の話、姉の立場から見た姉妹の生々しいせりふが書けるのでしょう? 同じパルコ劇場での『マイ・ロックンロールスター』で初めて長塚作品に触れ、一気にその世界に惹かれた私ですが、数年の間にこんな作品を書く人になったことに驚き、これからもっといろいろな戯曲を書いて私たちを驚かせてくれる人だということを確信しました。

 それにしても主演の松たか子さんは凄かった。松さんの長ぜりふの迫力に客席も緊張して…。女であり、女優であり、演じるという点で狂気の人でもある彼女だからこそ、実現した作品でしたね。ラスト近くに、ある仕掛けが施されるのですが、それによって、登場人物たちの足元が不安定になるのと同時に、観ているこちらの気持ちも不安定になって……。ドキドキしました。東京公演を観られなかった方は、地方に追いかけてでも観るべき舞台だと私は思います。

 緊張感では『羊と兵隊』も負けていませんでした。主演の中村獅童さんは、いつものイメージとはまったく違う抑えた役でしたが、おそらく素の獅童さんが持っているであろう繊細で柔らかな雰囲気が感じられ、私は今までで一番色っぽいと感じました。作・演出は岩松了さんで、例によって説明ぜりふはなく、唐突にダンスのシーンが出てきたりして、確かに分かりにくいのですが、最近何作が続けて岩松作品を観て、少しその世界への接し方が分かってきました。以前はいちいち「それ、どういう意味?」と好戦的になりがちだったのが、考えずに舞台の空気に身を任せることで、言葉でないもの、空気や雰囲気で何かを感じさせようとしているんだということが分かってきたのです。そうすると、表面には表れてこない静かで深い感情が伝わってくるんですよね。

 反対に躍動的だったのは『道元の冒険』。何役も早変わりし、膨大なせりふを喋る役者さんたち、お疲れさまでした! でも、道元役として周囲のパワーをひたすら受け止めていた阿部寛さんが実は1番大変だったのかも。井上ひさしさんの戯曲は、ちょっと難しいというイメージがあるのですが、こうしてなじみのある役者さんが出演され、蜷川幸雄さんが演出されることで身近になりますね。とてもいいコラボレーションだと思いました。

中井の気になる!!◆『ミュージカル テニスの王子様』(日本青年館 大ホール 7月29日~8月17日) ◆宝塚花組『愛と死のアラビア』『レッド・ホット・シー』(東京宝塚劇場 ~8月17日) ◆『幕末純情伝』(新橋演舞場 8月13~27日) ◆グリング『ピース』(下北沢・ザ・スズナリ 7月30日~8月11日) ◆『女教師は二度抱かれた』(渋谷・シアターコクーン 8月4~27日) ◆『ガラスの仮面』(彩の国さいたま芸術劇場 大ホール 8月8~24日)


2008年06月17日

 

「退団」で2人のデュエットが観られなくなるのは残念です

 こんにちは、中井です。今月は、小さな劇場で1カ月のロングランという公演を2本観ました。

 ひとつはモダン・スイマーズの『夜光ホテル』。下北沢のoff offシアターで、客演に萩原聖人さんを迎えた男性ばかり5人の作品でしたが、「男子の集団を書かせたらやっぱり蓬莱竜太は上手い!」と、改めて感心させられました。かつてドラマで活躍していた役者さんが舞台に出るようになるのは珍しくありませんが、この作品は、萩原さんが「この作家とやりたい」と思い、蓬莱さんも「この役者にこういう役を書きたい」と感じたことが仕上がりに出ていたと思いました。それによって劇団員の方も刺激を受け、一層の緊張感が生まれたのではないでしょうか。吉田秋生さんのマンガの主人公のようなヒーローが、萩原さんにピッタリでした。

 もう1本は、森下のベニサン・ピットで公演した阿佐ヶ谷スパイダースの『失われた時間を求めて』。不条理劇で、観終わって「なんじゃ、こりゃ!?」と思いましたが、「わからない!」と突っぱねたくなるのではなく、「なんだったのだろう?」とじっくり考えたくなる難しさでした。長塚さんは秋から1年間イギリスに行くそうですが、その前に劇団としてこういう作品を見せてくれたのは意味があったと思います。できればもう 1回観たかった。

 宝塚月組の『ミー・アンド・マイガール』は、ハッピーな気持ちになって劇場から帰れるミュージカルでした。作品自体はスタンダードで日本でもよく上演されていますが、宝塚で前回上演されたのは13年前、天海祐希さんのさよなら公演でした。今回、瀬名じゅんさんと彩乃かなみさんが主演で、彩乃さんがこの舞台で退団というタイミングでした。

 お二人ともイメージにぴったりで、一途にお互いを想う純粋な姿に心が温かくなりました。花組時代から好きだったお二人のデュエットダンスをもう観ることができなくなるのが本当に残念です。そういえばこの舞台には、17年前の宝塚初演時にも出演されていた未沙のえるさんが同じ役で出ていらっしゃいました。主演の役者さんが輝くためには、こうしたベテランの方の力が本当に重要。それが内部にあるのも宝塚の魅力でしょう。

 宝塚は『ベルサイユのばら──ジェローデル編』も良かったですよ。全国公演用の演目で、私は千葉の市川で観たのですが、どこの会場でやっても“宝塚の世界”なのは、訓練された生徒さんたちの力量のたまものです。

中井の気になる!!◆ダンダンブエノ『ハイ ミラクルズ』(青山円形劇場 6月20~29日) ◆『かもめ』(赤坂ACTシアター 6月20日~7月21日) ◆G2プロデュース『A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM』(池袋・東京芸術劇場 中ホール 6月22~29日) ◆シリーズ・同時代Vol.1『混じりあうこと消えること』(初台・新国立劇場 小劇場 ~22日) ◆シリーズ・同時代Vol.2『まほろば』(初台・新国立劇場 小劇場 6月27日~7月6日) ◆D-BOYS 『ラストゲーム』(青山劇場 6月20~27日)


2008年05月20日

 

若い演劇ファンにもぜひ観てほしいピーターさんの舞台

 こんにちは、中井です。GWもせっせと劇場通いをしていた私ですが、その収穫の中から選りすぐりで、今月も感想をお送りします。

 まずは『越路吹雪物語』。池畑慎之介(ピーター)さんが、実在した歌手・越路吹雪さんの半生を演じるミュージカルです。シャンソン歌手として絶大な人気を誇った越路さんに、見た目も歌もピーターさんがそっくりで大評判を呼んで再演を重ね、これがファイナルです。

 私も3度目で内容は分かっているのに、同じシーンでジーンとし、むしろ一層の感動を味わいました。それはピーターさん、高畑淳子さん、長谷川稀世さんといったキャストの素晴らしい演技力が、一層の深みを増していたからだと思います。

 母はこの舞台を観て「コーちゃん(越路さんの愛称)が生きてた!」と感激していましたが、現役時代の越路さんを知らない私は、いまや本物よりピーターさんのほうが親近感があるほど。そんな役に巡り合うのは役者にとって大きな幸運だと思いますが、物真似にならない演技力、歌唱力が問われるはずで、それを見事に表現しているのがさすが。同じ時代に生きているのですから、若い演劇ファンも、ピーターさんの舞台をぜひ観てほしいです。

 実在の人物といえば、宝塚宙組の『黎明の風──侍ジェントルマン 白洲次郎の挑戦』は、サブタイトルにある通り白洲次郎さんをフィーチャーした物語でした。

 白洲さんの断片的な知識は持っていても、何をした人なのかよく知らなかった私は、終戦直後の日本内閣のブレーンだったこと、マッカーサーと互角に渡り合ったことなどをこの舞台で詳しく知りました。歴史上のエピソードはまとめ過ぎなところもありましたし、足の長いヅカの娘役の人たちにモンペは似合いませんでしたが、こうしたテーマに挑戦した意気込みには拍手を送りたいと思います。

 宝塚は「王子様とお姫様の話を1年中やっている」と思われがちですが、こうした骨太の作品も手がけているんですよ。それに何といっても、吉田茂首相を女性が演じてそっくりだなんて、他のジャンルではありえないこと。宝塚の懐の広さ、引き出しの多さを改めて確認しました。

 同じく戦後、日本映画界に吹き荒れた労働紛争を採り上げた猫のホテル『けんか哀歌』にもシビレました。登場人物たちの“表現者の業”が、猫ホテの役者さんの個性と重なって、やっぱりこの劇団はいいメンバーが揃っているなと感動。楽しませていただきました。

中井の気になる!!◆「ドラキュラ伝説」(初台・新国立劇場 中劇場 6月12~22日) ◆「Calli [カリィ] ~炎の女カルメン~」(天王洲 銀河劇場 5月31日~6月8日) ◆「恐竜と隣人のポルカ」(渋谷・パルコ劇場 5月24日~6月15日) ◆シリーズ・同時代「鳥瞰図-ちょうかんず-」(初台・新国立劇場 小劇場 6月11~22日) ◆THE SHAMPOO HAT「立川ドライブ」(三軒茶屋・シアタートラム 5月29日~6月8日) ◆宝塚雪組「ベルサイユのばら──ジェローデル編」(~6月15日まで全国ツアー中)


2008年04月23日

 

「それは言わない約束でしょ?」タブーを犯すポツドール「顔よ」

 こんにちは、中井です。暖かくなって、劇場通いが一層、楽しい季節ですね。

 今月もたくさんのおもしろい舞台に出合えましたが、まずはポツドールの『顔よ』。顔の美醜を扱った作品でしたが、この問題はタブーも多いし、つくる側も観る側もしんどいテーマだと思います。タブーを犯すのはポツドールの得意技ですが、今回も「それは言わない約束でしょ?」の約束が次々と破られるんですね。

 言う人、言われる人、どちらの立場に立っても痛い。役者さんの緊張感あふれる演技で、その痛みが心にヒリヒリ刺さります。でもこのヒリヒリは、舞台でしか味わえない貴重な感覚です。

 サモ・アリナンズの『洞海湾』も、ヒリヒリする話でした。ただこちらは、裏のない笑いがたくさん絡むんです。暴力シーンは多いし、人はたくさん死ぬし、話はひどいと言えばひどい(笑)。でも、宇多田ヒカルのデビューのころの物真似とか、コンプレックスの当てぶりとか、笑いが体当たり系で、ちょっと古いんです。

 でもその古さやむき身な感じが、話をいい具合に救ってくれる。だから後味が全く悪くありませんでした。座長の小松和重さんをはじめ上手な役者さんも多くて「上手くて楽しくてひどい話ってあるんだな」と。サモアリはこの公演で活動休止とのこと、残念ですが、松尾スズキさんの作・演出で、素晴らしい公演が打てたと思います。

 そして『どん底』もおもしろかったです、とっても! 私は原作を知らないのですが(ナースチャという名前の娼婦を、ずっと「ナースちゃん」と呼ばれていると勘違いしていたくらいです)、この作品は本当に群像劇なんですね。どんな状況をどん底と感じるかはその人次第ですが、過去も価値観もさまざまな人が登場して、何がどん底か、何が救いかもまちまちです。

 最終的にほとんどの人は同じ場所にいるんだけれど、幸せになったように見えたり、その逆だったり、変わらないように見えたり。20人近い登場人物が、全員ちゃんと印象に残っています。それは上演台本と演出のKERAさんの力で、改めてKERAさんのすごさを感じました。

 同時期に宝塚を退団したふたり、朝海ひかるさんの『トライアンフ・オブ・ラブ』と、湖月わたるさんの『カラミティ・ジェーン』がこれまた同時期にあったのも興味深かったです。いずれも宝塚時代には見られなかった面をうまく引き出せて、今後がますます楽しみです。

中井の気になる!!◆モダンスイマーズ「夜光ホテル」(下北沢・オフシアター 5月3日~6月1日) ◆シスカンパニー「瞼の母」(三軒茶屋・世田谷パブリックシアター 5月10日~6月8日) ◆M&O playsプロデュース「まどろみ」(池袋・あうるすぽっと 5月15~25日) ◆宝塚月組「Me&My girl」(宝塚大劇場 ~5月5日)◆猫のホテル「けんか哀歌」(下北沢・本多劇場 5月1日~11日) ◆月影番外勝負「物語が、はじまる」(赤坂RED/THEATER 4月23日~5月4日) ◆阿佐ヶ谷スパイダース「失われた時間を求めて」(森下・ベニサンピット 5月8~27日)


2008年03月18日

 

親孝行兼ね博多座『二月花形歌舞伎』--若手公演の楽しみ方を再確認

 こんにちは、中井です。いよいよ春本番ですね。私はひと足お先に、福岡で春を感じました。母と博多座で『二月花形歌舞伎』を観てきたのです。母はこの数年、市川亀治郎さんの追っかけ(笑)で、親孝行も兼ねて行ってまいりました。

 そして行った甲斐がありました! この公演は、1月恒例の浅草歌舞伎が、同じ若手メンバーで初めて地方公演を実現させたもの。私は浅草歌舞伎も観たのですが、演目をすべて変えられるところは、さすが歌舞伎です。

 特に良かったのは『蜘蛛糸梓弦(くものいとあずさのゆみはり)』。

 亀治郎さんが六役早変わりしたのですが、ひと役ひと役が丁寧につくり込まれ、昔から伝わる作品を自分のものにしようという亀治郎さんの執念を感じました。それに、こういうケレン味あふれる演目を若い人が演じると、すっぽんに飛び込む動作ひとつにもスピード感があって、作品本来のスペクタクル性が存分に感じられ、引き付けられました。

『車引』もそう。松王丸の中村勘太郎さん、桜丸の亀治郎さんが花道から走ってくるシーンがあるのですが「血気盛んな青年が、急を聞いて駆けつけるなら、これぐらい勢いがあるだろうな」と納得できたのです。彼らはこの先も『車引』をやると思いますが、どれだけ成長したかを観るのも、歌舞伎の楽しみのひとつ。そのためにも、こうした若手公演はお勧めですよ。

 もうひとつ興奮したのが『空白に落ちた男』でした。水と油というパントマイムのユニットで活躍されていた小野寺修二さんというダンサーが、クラシックバレエで世界的に活躍した首藤康之さんを主演に迎えたダンス公演で、分類するならコンテンポラリーダンス。でも、ものによっては難解になりがちなコンテンポラリーダンスが、ストーリーも分かる、笑える、自分の日常とつながっていると感じる、楽しい内容だったのです。

 ダンスの水準も高く、世界ツアーに回れるのに、と思いました。ベニサン・ピットで1カ月のロングラン、という公演形態もいいですよね。

 公演形態といえば、夜8時からきっかり1時間半の、コント・オムニバスを上演した親族代表も素敵です! こういう公演がもっと増えてくれると大人はうれしいのですが。『発電所』は5人の作家さんが書いた5本のコントで、どれもちょっとずつ意地が悪く、本当におかしかった。知らない作家さんの今後の作品も、ぜひ観てみたいと思いました。

中井の気になる!!◆「トゥーランドット」(赤坂ACTシアター 3月27日~4月27日) ◆「49日後……」(渋谷・PARCO劇場 4月12日~5月6日) ◆「FROGS」(天王洲 銀河劇場 3月19~23日) ◆ヤン・リーピンの「シャングリラ」(渋谷・Bunkamuraオーチャードホール ~22日)◆宝塚宙組「黎明(れいめい)の風」-侍ジェントルマン 白洲次郎の挑戦-/「Passion 愛の旅」(東京宝塚劇場 4月4日~5月18日) ◆ポツドール「顔よ」(下北沢・本多劇場 4月4~13日) ◆「トライアンフ・オブ・ラヴ~愛の勝利」(天王洲 銀河劇場 4月4~14日)


2008年02月19日

 

寝たきり老人が突然元気に…いろいろなことを考えさせられた三田村組

 こんにちは、中井です。仕事でもプライベートでも北へ行くことの多かったこの冬ですが、東京では相変わらず、小劇場から大劇場まで出かけまくっています。

 今月、特に印象深かったのは三田村組の『天井』です。三田村組は、三田村周三さんというベテランの方が、気の合う俳優仲間に声をかけ、公演のたびに若い劇作家に脚本と演出を依頼する形を取っているそうで、『天井』はモダンスイマーズの蓬莱竜太さんの作・演出でした。

『天井』は、寝たきり老人が突然元気になる話です。元気になるのは本来はいいことなのですが、まわりの人は老人がずっと寝たきりだと思うから、果たせない約束もするし、他の人の前では見せない秘密や本音もさらけ出すし、老人が間もなく死ぬという想定のもとに人生の予定を立てています。だから老人が元気になっても、家族や周囲の人は単純に喜べない。一方で老人は、体力だけでなくエゴも復活して、昔以上にわがままに振る舞うようになる──。とても皮肉な話ですが、どっちの立場も身につまされますよね。蓬莱作品には珍しく、悪い人がたくさん出てきましたが、どの人の気持ちもそれなりに分かるんですよ。再び寝たきりになった老人は、結局、「見飽きた」と言っていた天井を見つめて亡くなります。それに気付いたのが、1番使えないと言われていた介護士だったのも効いていましたね。観た後でいろいろなことを考えさせられた作品でした。

 それと劇団☆新感線の『IZO』も良かった。いつもの極彩色てんこもりの「いのうえ歌舞伎」を期待していくと、肩透かしを食ったかもしれませんが、丁寧に時代劇をつくっていると感じました。青木豪さんの書いたせりふも美しくて、特にラスト15分で気持ちが持っていかれました。主演の森田剛君の“野良犬感”もとても良かったし、戸田恵理香さんはこれが初舞台とは思えない腹の座り方で、これからもどんどん舞台に出てほしいと思う、いい女優さんでした。その青木さんが演出し、イキウメの前川知大さんが脚本を書いた『ウラノス』。どちらも大好きなクリエイターで「このふたりが組んだらいったいどうなるの?」と楽しみだったのですが、今回は残念ながら、ものすごい化学反応は見られなかったように思います。私の期待が大きすぎたのかもしれませんが、次!! に期待です。

中井の気になる!!◆恋する妊婦(渋谷・シアターコクーン ~28日) ◆ファントム(表参道・青山劇場 ~22日) ◆親族代表THE LIVE「 (発電所)」(新宿・THEATER/TOPS ~24日) ◆「空白に落ちた男」(森下・ベニサンピット ~28日) ◆「春琴」(三軒茶屋・世田谷パブリックシアター ~3月5日) ◆宝塚雪組 ラブ・ロマンス『君を愛してる-Je t'aime-』/ショー・ファンタジー『ミロワール』-鏡のエンドレス・ドリームズ-(有楽町・東京宝塚劇場 ~3月16日) ◆イキウメ「眠りのともだち」(赤坂RED/THEATER 2月27日~3月9日)


2008年01月22日

 

コミックが原作の場合は役者の似具合が重要デス!!

 こんにちは、中井です。『テニミュ』で始まった私の2008年、観劇数のカウンターはいい感じで増加中です。

 と言いつつ、タイトルが『ZUKAZUKA』なのに、しばらくヅカ(宝塚)の話をしていなかったことを反省。今回は星組『エル・アルコンー鷹ー』の感想からお話ししたいと思います。

 これは、青池保子さんの人気コミックが原作。『テニミュ』もそうですが、アニメやマンガが原作の舞台って、役者さんがどれだけ役に似ているかが重要だと思うんです。ヅラやメイクのノウハウが豊富なヅカは、その点で安心。しかも今回の主役は、安蘭けいさんと遠野あすかさんで、歌も踊りも演技も安定した実力のトップコンビでしたから、話の芯をバッチリ伝えてくれていました。

 ただ、長い原作をほとんど見せる構成で、展開がかなり忙しく、やや詰め込み過ぎの感は否めず。黒髪ロン毛と金髪巻き髪の男性ふたりが永遠のライバル関係という、私の萌えポイントはしっかり刺激され、大満足だったのですが(笑)。

 毎年1月恒例の『浅草歌舞伎』も満足させていただきました。この何年かはメンバーが固定していることもあり、役者さんの成長ぶりがよく分かります。若くてきれいだから「可愛いお姫様」といった役がすんなりこちらの意識に入ってきますし。何より、どの方からも「歌舞伎が好きでたまらない」という気持ちが伝わってくるのがいいですね。同世代の役者さんたちがこうして切磋琢磨し合って、未来の歌舞伎はますますおもしろくなるのでしょう。

 若くてきれいと言えば、やはり『テニミュ』。今回は、主人公側の青春学園が沖縄の比嘉中学と対戦する話だったのですが、もし原作の対・比嘉戦を普通に読み流した人がいたとしても、舞台版を観たら、もう1度原作版を読み返したくなったと思うし、比嘉中ファンにさえなったのでは、と思います。それくらい脚本も役者さんも、三次元化を見事に成功させていました。だって青学はベンチに12人いるのに対して、比嘉は5人。それでも空間はちゃんと埋まっていましたし、メンバーそれぞれの試合も見応えがあったんですよ。

 最後にギンギラ太陽'Sの『翼をくださいっ!さらばYS-11』。いつも毒舌ズカズカの私ですが、たまにはこんなふうに、悪意のない素直に感動できる作品に触れるのもいいなと、心が洗われました。日本の航空事情の知識もいろいろ知ることができました。もうすでに、ほとんど忘れてしまったんですけどね…。


2007年12月18日

 

ディテールを積み重ねて自然に見せてくれたグリング

 こんにちは、中井です。このところ観劇活動が充実、当たりの作品も多くてうれしい限りです!
 
 まずはグリングの『Get Back!』。やっぱり作・演出の青木豪さんは上手いですね。長年一緒に仕事をしてきたマンガの原作者と作画担当者が別々の道を選ぶという話を、誰もが共感できる作品に仕上げていました。夫婦、恋人、同級生、会社の同期など、同じスタートラインに立っていたふたりが、いつの間にか能力の差が開いて、それをお互いにわかっているけど言えない。

 そういう経験ってありますよね。

 それを、ディテールを積み重ねて自然に見せてくれました。主演の片桐はいりさんはエキセントリックな役を演じることも多いと思うのですが、この作品では、強いけれど本当は優しい人がハマッていました。やはり客演の高橋理恵子さんも素晴らしかったですね。話の本筋とは関係ないけど、ポイントで顔を出す“フツーの人”を見事に演じていらっしゃいました。

『野鴨』も印象に残っています。イプセンの戯曲を、庭劇団ペニノのタニノクロウさんが演出されたんですが、以前、THLの紹介記事で読んでから「庭劇団?」と気になっていたんです。この作品は、小さな劇場全体が森のようにつくり込まれていて、客席数も少なく、すぐ横を役者さんが通って、全体的にとても贅沢でした。物語自体は「この人とは友達になりたくない」と思う人ばかりが出てきて、いかにもイプセン(笑)。今度はぜひ、ペニノ本体でタニノさんの世界をのぞいてみたいです。

 そしてナイロン100℃の『わが闇』もおもしろかった! 3時間20分という長さを感じませんでした。ナイロンはいつも「劇団っていいな」と思わせてくれますね。今回も劇団員の方がみんな「この人じゃないと出来ない」という役で、イヤな性格の役でさえ、見終わったあとにイヤな印象が残らないんです。あ、ナイロンはパンフレットも好きです。毎回、「今度はどんな内容? どこから読もう?」とワクワクしながら広げています。

 最後に『死ぬまでの短い時間』についても。岩松了さんの世界はまだ「うん、わかる!」とは言えませんが、「もう1回見て、もっと理解したい」と初めて思いました。私も成長しているんです(笑)。

中井の気になる!! ◆ミュージカル『テニスの王子様』The Progressive Match 比嘉 feat. 立海(2月11日まで全国各地) ◆宝塚月組『ホフマン物語』(兵庫・宝塚バウホール 1月2日~13日) ◆劇団鹿殺し「2008改訂版・百千万(ももちま)」(下北沢・駅前劇場 1月11日~21日) ◆NODA・MAP『キル』(渋谷・シアターコクーン ~1月31日) ◆新感線『IZO』(青山劇場 1月10日~2月3日)◆RUN&GUN Stage 『ブルーシーツ』(新宿・紀伊國屋ホール 1月9日~20日)


2007年11月23日

 

イケテツさんの優しさに触れた気がする「表現・さわやか」

 こんにちは、中井です。今月は舞台を見てたくさん笑いました。
 まずは真心一座 身も心も『流れ姉妹~ザ・グレートハンティング』。欠点があるとしたら、次はいつ見られるか分からないこと。それぐらいサイコーでした。千葉雅子さんと村岡希美さんの姉妹はいいですね。でもゲストレイパーの高田聖子さんに心底、惚れました。大衆演劇の一座の座長で男役なんですけど、出てきた途端、目と心が奪われました。普通に男性としてかっこよかった!“演劇という名の興行”と言いますか、大衆演劇ならではの俗っぽさも、うまく醸し出していたのではないでしょうか。作品と劇場のサイズのバランスも良かったですね。赤坂レッドシアターだったのですが、新しい劇場でおもしろいお芝居がかかると、東京の演劇は活気づいてるな、という気持ちになります。
 表現・さわやかの『ポエム』は、毒も裏もない、誰も傷つけない純粋な笑いを突き詰めていました。お芝居と言うより、どのシーンもコントとして成立させようとする姿勢に、私は好感を持ちます。出演者全員をおもしろく見せようとする作・演出のイケテツ(池田鉄洋)さんは優しい人ですね。それにしても、猫のホテルという劇団に所属して、そこも好きだけどもうひとつ場所を持ちたいと劇団をつくるのは、大変でしょうけど続けてほしいと思いました。身も心もで、千葉さんは猫ホテでは見せない“女の顔”を出して素敵ですが、それぞれが刺激しあえばお互いのために発展的だと思います。
 ONEOR8の『ゼブラ』は、劇団の代表作にするべく再演した、とパンフに書いてありましたが、それが納得できる作品でした。ワンオアは、役者でなく作品で見せるタイプの劇団で、いつも周囲の割りを食ってニッチもサッチも行かなくなった人が主人公。そこをリアリティーで追いすぎると見ていて疲れるのですが、今回は本筋と関係のない葬儀屋兄弟が、いい感じで空気を柔らかくしてくれました。勝手な希望ですけど、あの葬儀屋兄弟のエピソードで番外編をつくってほしい。
 そして最後は笑福亭鶴瓶さんの『らくご』。歌舞伎座で行われた特別興行でしたが、鶴瓶さんのお葬式という形で始まる構成には笑いました。もちろん落語にも。加えて改めて感じたのは、歌舞伎座という場所の独特な力でした。建て替え工事をするそうですが、中の雰囲気は極力残してほしいと思います。

中井の気になる!! ◆宝塚花組 春野寿美礼退団公演『アデュー・マルセイユ』(東京宝塚劇場 ~12月24日) ◆『恐れを知らぬ川上音次郎一座』(日比谷・シアタークリエ ~12月30日) ◆パルコプロデュース『テイクフライト』(東京国際フォーラム ホールC 11月24日~12月9日) ◆『座頭市』(新宿コマ劇場 12月3~16日) ◆グリング『Get Back!』(下北沢・ザ・スズナリ 11月28日~12月9日) ◆NODA・MAP『キル』(渋谷・シアターコクーン 12月7日~1月31日)


2007年10月18日

 

早乙女太一君を見に生まれて初めて大衆演劇に!!

 こんにちは、中井です。今月最大の収穫は、生まれて初めての大衆演劇でした。

『旅の香り』というテレビ番組で、今、大注目の俳優・早乙女太一君とロケに行くことになり、その前に太一君の舞台を拝見しようと、浅草大勝館という劇場へ出かけました。これは何もかもが新鮮な体験でした。

 まず演目が日替わりで、しかも当日まで何が掛かるか分からないことにびっくり! それだけレパートリーが多く、役者さんたちもそれに対応できるということなのですが、それってつまり、お客さんは演目ではなく役者さんを見に来るということですよね。そういう気持ちに応えるのか煽るのか、上演中も写真撮り放題、花道=客席の通路で、こらちが戸惑うくらいすぐ近くを役者さんが通るサービスぶり。終演後は太一君をはじめ役者さんがお客さんをお見送り。そこでは役者さんの写真を撮ったり、サインをしてもらったりできるんですよ。お芝居も楽しく、太一君が天才女形と言われている理由もよく分かりました。

 女形っていろんなものをプラスしていくものだと勝手にイメージしていましたが、太一君は、お化粧もしてるし着物もかつらも着けているのに、とてもシンプル。芯が座っているというか、女性を演じても男性を演じてもブレがないと感じました。来年3月に宮本亜門さん演出の『トゥーランドット』に出演されるのが待ち遠しくなりました。ちなみにロケ中も礼儀正しく、素顔もとってもきれいでしたよ。

 大衆演劇つながりになりますが、シェイクスピアを上演する旅の一座を描いたシアターナインスの『シェイクスピア・ソナタ』もよかったです。岩松了さんの舞台で、ほぼ初めて(笑)おもしろいと思いました。役者としての岩松さんも魅力的ですね。作・演出家が自分の作品に出演すると、舞台上にいてもどこか作家の目、演出家の目を感じることが多いのですが、岩松さんは自由で、見ていて気持ちよかったです。高橋克実さんと伊藤蘭さんが演じた夫婦も興味深かった。おふたりが上手だから成立した関係なのでしょうね。

 若手ではイキウメの『散歩する侵略者』が印象的でした。前作も大好きで、傑作という噂のこの作品の再演を楽しみにしていましたが、期待にたがわぬ出来でした。役者さんでは主人公を演じた安井順平さんが、得体の知れない人物を淡々と演じて素晴らしかった! 劇団員ではなく普段は芸人さんですが、大成功のキャスティングだったと思います。

中井の気になる!!◆PARCOプロデュース『キャバレー』(青山劇場 ~21日) ◆カムカムミニキーナ『軍団』(新宿・シアターアプル ~18日) ◆CUBEプロデュース『犯さん哉』(渋谷・パルコ劇場 ~28日) ◆真心一座 身も心も『流れ姉妹』(赤坂RED/THEATER ~21日) ◆蜷川幸雄演出『オセロー』(彩の国さいたま芸術劇場大ホール ~21日) ◆ペンギンプルペイルパイルズ『ゆらめき』(吉祥寺シアター ~28日)


2007年09月18日

 

世陸で大忙しだったけど…『テニミュ』はしっかり観る

 こんにちは、中井です。実は私、困っています。8月後半から9月の頭まで、『世界陸上』の仕事でずっと大阪に滞在していたので、先月はほとんどお芝居を見られなかったのです。残念ながら日本人アスリートの活躍は、思うような結果に結びつかないことが多かった今回の世陸ですが、大会自体はおかげさまで盛り上がり、また、日本での開催ということもあって、キャスターとしてはとてもやりがいのある仕事となりました。そんなわけで、うまく時間が合えば、大阪演劇事情をのぞいてみたいという淡い夢も消えました。

 と、言いながら、山積みの仕事の合間を縫って大阪で(も)観たのが『ミュージカルテニスの王子様アブソリュートキング立海フューチャリング六角』、はい、『テニミュ』です。先月もさんざん書かせていただきましたが、主人公が在籍する青学テニス部のメンバーがこの『feat.六角』というシリーズでほぼ全員卒業するので、なんとも寂しく、先にあった東京公演を6回も見たというのに、大阪公演も2回見てしまいました。

 最初は演技も歌も踊りもおぼつかなかったのに、というか、おぼつかなかったからこそ、舞台1回ごとにグングン成長する姿に、腐女子ゴコロがくすぐられるのです。

 考えてみると、『テニミュ』は甲子園に似ている気がします。こう言うと怒られてしまうかもしれませんが…。確かにいくつかの舞台を踏んでいる上手な俳優さんもいるのですが、決してプロの技ではないんです。

 でも1回戦ごとに成長があり、その裏には大変な努力があり、本番で伸び伸びできる子もいれば、良さが出せない子もいるけど、みんなが必死で、それがストレートに伝わってくる。そして今回も、脚本も手がける三ツ矢雄二さんの歌詞が素晴らしい! 「なんのこっちゃ チャチャッと潰す」とか、短いフレーズがいちいちすごいんです。

 それにしても、私が『テニミュ』を見始めた2年前と変わったと思うのは、会場でもらうチラシです。『テニミュ』の出演者同士、卒業生同士をキャスティングした公演のお知らせが最近一気に増えました。“テニミュ特需”と“BL(ボーイズ・ラブ)ブーム”に乗っかって、キャストを若い男優さんで固めた舞台がたくさんつくられるようになったんですね。彼らにしてみれば、チャンスが増えるから悪くない状況だけど、競争は激化するから単純に喜んでばかりもいられないはず。

 どんどん増えていく『テニミュ』経験者の中から何人が生き残れるのか。ひとりでも多くの子が大きく羽ばたくのを見たいものです。

中井の気になる!!◆『ドラクル』(渋谷・シアターコクーン ~26日) ◆『シェイクスピア・ソナタ』(渋谷・PARCO劇場 ~26日) ◆鉄割アルバトロスケット『たこまわせ』(下北沢・駅前劇場 9月20~24日) ◆「ミザリー」(新宿・シアターアプル 9月29日~10月10日) ◆THE SHAMPOO HAT『その夜の侍』(下北沢・ザ・スズナリ 9月29日~10月8日) ◆宝塚月組「スピリチュアル・シンフォニー『MAHOROBA』-遥か彼方YAMATO-」(東京宝塚劇場 10月5日~11月11日) ◆宝塚宙組『バレンシアの熱い花/宙ファンタジスタ』(東京宝塚劇場 ~30日)


2007年08月21日

 

ファンの心理をうまく突く「テニミュ」と「宝塚」

 こんにちは、中井です。猛暑日が続いた今年の夏、皆さんはいかが過ごされましたか?

 私は、この3年ほどハマッている『ミュージカル「テニスの王子様」』、通称『テニミュ』に通い、東京公演だけで6回観ました(笑)。『テニミュ』は1年半か2年でキャストが入れ替わる卒業システムで、今回の公演で3代目青学(せいがく=主人公が所属する学校)メンバーが、ひとりを除いて卒業します。演技も踊りも歌も、「上手くなってきたな」と思うころにメンバーを変えるこのシステムは、彼らの成長過程に想いを重ねるファン心理をうまく突いていて、おかげでこのリピート率です。ハイ、乗せられてます(笑)。

『テニミュ』のずっと前からハマッている宝塚、その卒業生が集まった『DANCIN’ CRAZY』も、ヅカファンの心理をうまくつかんだステージでした。近年のOGの中でも、特に踊りで評価の高い紫吹淳さん、湖月わたるさん、朝海ひかるさんらに加えて、大浦みずきさんという世代がやや上の踊りの名手が参加されたことに大きな意味がありました。というのは、現役だったらありえない顔合わせなんです。さらに、私は大浦さんの宝塚時代を知りませんが、非常に期待されながらケガでできなかった踊りがあって、幻となっていたその曲を今回踊ったということで、客席で泣いている方も多かったんですよ。

 女性の役も男優さんが演じる、蜷川幸雄さん演出のオールメール・シリーズは、成宮寛貴さんと小栗旬さん主演の『お気に召すまま』で、ひとつの完成形を見たのではないでしょうか。今回は再演でしたが、成宮さんはこれまで観たどの作品よりも上手くなっていて、本当に“男性に扮した女の子”に見えました。愛らしさだけでなく、恋する女の子ならではの勝気さまで出ていて良かったですね。対する小栗君は、じっとしているより動いているほうが魅力的。舞台中央の大きな木に登ると、その枝の揺れと、青年期特有のどこか危うい揺れ感が重なって、それだけでドキドキさせられました。同シリーズの『間違いの喜劇』の美術も森でしたが、森の中って“迷い込んで出会う”イメージがあります。

私はこれから森ではなく、世界陸上の仕事で大阪に行ってきます!

中井の気になる!!◆こまつ座+シスカンパニー『ロマンス』(三軒茶屋・世田谷パブリックシアター ~9月30日) ◆劇団☆新感線『犬顔家の人々』(池袋・サンシャイン劇場 ~9月9日) ◆『ミザリー』(新宿・シアターアプル 9月29日~10月10日) ◆『ドラクル』(渋谷・シアターコクーン 9月1~26日) ◆『シェイクスピア・ソナタ』(渋谷・PARCO劇場 8月30日~9月26日) ◆イキウメ『散歩する侵略者』(表参道・青山円形劇場 9月12~16日) ◆宝塚宙組9月公演『バレンシアの熱い花』(東京宝塚劇場 ~9月30日) ◆歌舞伎座『秀山祭九月大歌舞伎』(歌舞伎座 9月2~26日)


2007年07月17日

 

『少女とガソリン』ー濃厚な作品を小空間で体験できる幸せ

 こんにちは、中井です。今月は世界陸上の取材で海外出張があったため、あまり本数は見られませんでした。でも、数は少なくても内容はとっても充実していましたよ。

 まずは阿佐ヶ谷スパイダースの『少女とガソリン』。今回は土地や血が持つ力が描かれていましたが、長塚テイスト濃厚な展開に「この人たちが揃ったら、つまらないわけがない!」という役者陣が絡んで、期待にたがわぬおもしろさでした。これが初舞台の下宮里穂子ちゃんも良かった。「よくぞ見つけてきた」という逸材でしたね。土地や血の力が目覚めていく過程が、女優としてまだ無色の彼女とうまくシンクロしたと思います。

 こういう濃い作品を、スズナリという小さい空間で体験できるって幸せですよね。この作品は「暴走する男たちシリーズ」第3弾で、前2作の上映会を同じ場所で開催したり、劇場を外側から飾りつけたり、スパイダースのスズナリに対する想いを感じました。

 コクーン歌舞伎『三人吉三』は、中村勘太郎君と七之助君が成長著しかったです。6年前の『三人吉三』とは逆の配役で“実は双子だった恋人同士”を演じていたのですが、歌舞伎によくある「ありえないでしょう」という設定を「もしかしたら、あるかも」と思わせてくれる色気が加わっていました。まじめなシーンで桟敷席の中を歩く時も芝居がブレず、感心しました。ひとつだけ残念だったのが、客層が歌舞伎座とほとんど変わらない印象だったこと。せっかくコクーンという場所でやるんだし、作品全体もおもしろいのですから、もっと若い人が観に来られるといいですよね。安いチケットの日を設けるなど、何か工夫できないかな、と思いました。

 そしてオペラ、イタリアのパレルモ・マッシモ劇場の来日公演『カヴァレリア・ルスティカーナ』と『道化師』も素晴らしかったですよ。2作ともペリズモ・オペラというリアリズム追求型の作品で、内容が嫉妬によって生まれる悲劇なので、決して観たあと明るい気持ちにはなりませんが、悲劇の合間に流れる曲がめちゃくちゃ美しい! 真に美しいものは人を悲しくさせると私は思うのですが、それを改めて確信した作品でした。

中井の気になる!!◆NODA・MAP『THE BEE』ロンドンバージョン(三軒茶屋・シアタートラム ~29日) ◆ダンダンブエノ『砂利』(表参道。スパイラルホール 7月21日~31日) ◆ホリプロ『お気に召すまま』(渋谷・シアターコクーン ~29日) ◆こまつ座+シスカンパニー『ロマンス』(三軒茶屋・世田谷パブリックシアター 8月3日~9月30日) ◆地球ゴージャス『ささやき色のあの日たち』(渋谷・シアターコクーン 8月5日~26日)


2007年06月18日

 

「春風亭小朝独演会」で実感!! 落語は観る側の想像力も試されている

 こんにちは、中井です。

 さて、観たばかりで印象が強く残っているグリングから話を始めます。青木豪さんの作品はプロデュース公演の『獏のゆりかご』で経験していましたが、活動母体になっている劇団のグリングは初めて。お茶の間が舞台になった、その家のおばあさんのお通夜の話で、設定は小劇場の作品に多いパターンです。でも、登場人物の関係が分かってくるにつれて、主人公の奥さんの苛立ちとか、程度の差こそあれ親子間にある誤解とか、非常に共感できてくるんですよ。とても個人的な話なのに「そうだよね」「こういう人いるよね」と、うなずく回数が増えてくる。そして父親を憎んでいた長男が、自分に子供が生まれることを伝え、それを聞いた父親が息子の嫁に「よろしく」と頭を下げるシーン、いやぁ、グッと来ました。

 もうひとつグッと来たのが『春風亭小朝独演会』。小朝師匠が7年ぶりの歌舞伎座での独演会で、共演者の林家正蔵師匠と林家いっぺい君共々、歌舞伎にゆかりのある演目でした。小朝師匠は『中村仲蔵』と『文七元結』で、トリの『文七』が素晴らしかった。歌舞伎の人気演目を、たったひとりで立ちもせずに演じるわけですが、それができちゃうし、しかも遜色ないんですよ。お芝居だったら当然ある「この人の演技が」「あの人の着物が」という余計な情報がないせいか、とても集中できました。もちろんそれは、小朝師匠がこちらを惹き付けてくれるからなんですが。落語って、噺家さんの技量と同時に、観る側の想像力も試される怖い芸だと実感しました。

 それからナイロン100℃の『犬は鎖につなぐべからず』もおもしろかったです。岸田戯曲賞はよく耳にするけど、そこに名前が残っている岸田國士のお芝居はほとんど知らなかった私。2月に『禿禿祭』で『命を弄ぶ男ふたり』を観て、難しい話じゃなくて“センス”を書いている人なんだと思っていたのですが、その岸田さんの短編を8本コラージュするという試み自体が、まずおもしろいですよね。ひとつひとつ知っている人は「よくつなげたな」と思ったのでしょうが、ひとつも知らない私はすごく自然で。これを劇団の公演として打つなんて、KERAさんの冒険であり、自信の表れでもあるんだろうな。

中井の気になる!!◆阿佐ヶ谷スパイダース『少女とガソリン』(下北沢・ザ・スズナリ ~7月4日) ◆コクーン歌舞伎『三人吉三』(渋谷・シアターコクーン ~28日) ◆NODA・MAP番外公演『THE BEE』(三軒茶屋・シアタートラム 6月22日~7月29日) ◆東宝ミュージカル『レ・ミゼラブル』(有楽町・帝国劇場 ~8月27日) ◆『お気に召すまま』(渋谷・シアターコクーン 7月5~29日) ◆宝塚歌劇団・雪組『エリザベート』(東京宝塚劇場 7月6日~8月12日)


2007年05月22日

 

終演後に「美穂さん、泣き過ぎ!」のメールが…

 こんにちは、中井です。先月も舞台の収穫、たくさんありました。

 まずはモダンスイマーズの『回転する夜』。これを見て私はミシェル・ゴンドリーという監督の映画を思い出しました。共通点は“同じ時間を何度も巻き戻す”。映像ならではの手法だと思っていたのに、モダンに舞台でも出来るんだと教えられました。あるシチュエーションが、微妙に変化しながら繰り返され、こちらの頭が回転しそうになりましたが(笑)、一風変わった構造にプラスして、ラストで心から主人公に「良かったね」と言える内容で、またもや作・演出の蓬莱竜太さんにヤラレました。

主人公が音を立てて成長するポイント、その見せ方が心憎いんですよね。劇団☆新感線の高田聖子さんが客演されていて、素敵な女優さんであることを再確認。主人公に1番巻き込まれる役なのに、そのたびにちゃんと軸を合わせていて素晴らしかったです。


女優さんつながりでは、CMディレクターとして有名な山内ケンジさんが作・演出した城山羊の会の『若い夫の素敵な微笑み』に主演された深浦加奈子さんも、とっても良かったです。

若い男性と再婚してアゲアゲなオープニングと、その夫を実の娘に寝取られて嫉妬に苦しむ中盤の表情の差はさすが。深浦さんは舞台なのにアップに見えるし、どこかザラッとしたフィルムの質感が出せる、日本で希少な女優さんです。高田さんといい、深浦さんといい、ある年代以上の女性を魅力的に書ける作家さんがいるって、舞台のひとつの大きな魅力だと思います。


宝塚は星組の舞踊詩『さくら~妖しいまでに美しいおまえ』とミュージカル『シークレット・ハンター~この世で、俺に盗めぬものはない』。安蘭けいさんの男役トップ、遠野あすかさんの娘役トップのお披露目でしたが、春恒例の初舞台生50人の一斉お披露目も兼ねていて、大変華やかでした。

安蘭さんは歌も踊りも演技も見事で、醸し出す雰囲気がまさに宝塚伝統の男役の色気そのもの! お芝居もさることながら、フィナーレのラテンメドレーは安蘭さん中心に星組らしさにあふれていました。ファンの方々も待ちに待った安蘭さんのトップお披露目に、私も胸を打たれました。


終演後、知り合いの方から「美穂さん、泣き過ぎ!」とチェックのメールが。いやー、恥ずかしかったです(笑)。

中井の気になる!!◆『藪原検校』(渋谷・シアターコクーン ~31日) ◆ナイロン100℃『犬は鎖につなぐべからず』(表参道・青山円形劇場 ~6月3日) ◆ONEOR8B面公演『コルトガバメンツ』(有楽町・イマジンスタジオ 5月23日~27日) ◆ハイバイ『おねがい放課後』(こまばアゴラ劇場 5月24日~6月3日) ◆『魔法の万年筆』(渋谷・PARCO劇場 ~6月12日) ◆グリング『ヒトガタ』(新宿・THEATER/TOPS 6月5~18日)、宝塚月組『大阪侍』(日本青年館 6月9~15日)などなど


2007年04月17日

 

噂を裏切らない作品だった注目の「イキウメ」

 こんにちは、中井です。今月もたくさんの舞台を観ることができました。その中から初モノの感想をまとめて書きたいと思います。

 まず最初は、小劇場でかなりの注目度と聞いていた劇団イキウメです。「話の完成度が高い」という前評判だったので楽しみにしていましたが、『狂想のユニオン』はその噂を裏切らない作品でした。小劇場と言うと、日常の出来事を普通の会話のトーンで話すというイメージですが、イキウメは直球のSFなんですね。小劇場では家族物、小劇場以外ではシェイクスピア作品や大掛かりなミュージカルを見慣れていた私は、それだけでワクワクしました!

 設定は少し複雑でしたが、誰もが1度は抱く「この世界とどこかでつながった、もうひとつの奇妙な世界があったら……」という想像を、細部にまで神経をめぐらせて考えた物語でした。高さを感じさせるセットも良かったですね。役者さんは、本来は気持ち悪い印象を与えるのが狙いであろう市長役と油屋社長役のふたりに、なぜか萌えました。自分でも不思議です(笑)。

 そしてもうひとつ、「観たい」と思っていた願いがかなったのがラッパ屋。大人の劇団で、作品は家族がテーマのコメディーと、イキウメとは対照的でしたが『妻の家族』もとても楽しめました。二男四女の兄弟が実家に集まり、それぞれが抱えるトラブルが明らかになって……という話なのですが、そこに絡んでくる借金の金額が絶妙に現実的で上手いんですよね。家の危機を外様の婿たちが救おうとする、特に、家族になりたての婿がキーマンになって家族を再生しようとするストーリーはグッと来ました。大の大人の役者さんたちが次々と池に落ちてズブ濡れになる、体を張ったシーンは大笑いしましたけど。

 三田村組の『猿股の行方』は、ONEOR8の田村孝裕さんが作・演出しているのと、知っている役者さんが出演しているので観に行きました。心温まる家族の話で終わるのかと思いきや、妻を亡くした夫のちょっとした“男の部分”が出てきて「やられた!」と思いました。でもそれも、長年連れ添った夫婦の絆があるからこそで、田村さん、若いのにこういう話が上手くて感心しました。大先輩の三田村周三さんに引き立てられ、岡本麗さんらベテランの方と一緒だからこそ、この作品ができたのだとすると、素敵な武者修行の場ですよね。次の三田村組はモダンスイマーズの蓬莱竜太さん作・演出だそうで、そちらも楽しみです。

中井の気になる!!◆モダンスイマーズ『回転する夜』(新宿・TEATER/TOPS 4月18~30日)、猫のホテル『苦労人』(三軒茶屋・シアタートラム 4月18~29日)、朝海ひかる主演『プライマリー・カラーズ』(ル・テアトル銀座 5月1~6日)、森山未来主演『血の婚礼』(新大久保・東京グローブ座 5月3日~20日)、古田新太主演『薮原検校』(渋谷・シアターコクーン 5月8~31日)、稲垣吾郎主演『魔法の万年筆』(渋谷・PARCO劇場 5月12日~6月12日)ほか


2007年03月26日

 

今月は痛いところを突かれまくりの作品ばかり…

 こんにちは、中井です。この連載のタイトルは私が大の宝塚ファンというところから来ていますが、今月はその宝塚、月組の東京公演を1度観ただけでした。その代わりというわけではありませんが、ワタクシ的に新しいジャンルに足を延ばしたのが、コンテンポラリーダンスのヤン・ファーブル『わたしは血』と、フラメンコのアントニオ・ガデス舞踊団『血の婚礼』&『フラメンコ組曲』。これがどちらもおもしろくて収穫でした。

『わたしは血』は、気味悪さ、残酷さが全体に漂いつつも、あちこちにユーモアが感じられて楽しめました。フラメンコは以前、本場スペインのダブラオで延々と、情念たっぷりに続くショーを観てお腹いっぱいになっていましたが、ひとつの作品として構成されているものは、やはり印象が違いますね。特に『フラメンコ組曲』は、ソリストの踊りはもちろん、団員たちのフォーメーションも見事! アンコールでは歌い手やギタリストたちも踊りに加わる盛り上がりで、その迫力にすっかり酔いました。

 そして、噂に聞いていたポツドールを遂に観劇。乱交パーティのような特殊な舞台を想像していたのですが、ストーリーがちゃんとあって、それも「閉塞的な地方ならこういうこともありそう、こういう人たちもいそう」と思えるものだったのが意外。ドキュメンタリー映画を観るような生々しさとやるせなさ、やりきれなさを感じました。ただ、俳優さんが出てこない、拍手もないエンディングは初めてでびっくり(笑)。

 このポツドールの『激情』と共通点を感じたのがグローブ座の『殺人者』です。どちらも狭い半径の中で生活する人たちの話で、出てくるのが“性格が悪い”ではなく“素行が悪い”人たちなんですよね。内容はまったく違うのに、全体的な感触が似ていたのが興味深く、どちらもおもしろかったです。

 それとはまったく逆の世界観、支配者と民衆という大きな構図を描いた『コリオレイナス』を名古屋で観たのですが、さすがシェイクスピア、そういうテーマが昔の話で終わらず「今もある話だな」と考えさせられました。イギリス公演も予定されているからでしょう、衣装もセットもアジアンテイスト(何しろ兵士が持っているのが日本刀!)でしたが、取って付けた感じもなく、私は好きでした。宝塚のレヴューで大階段を見慣れている私は、お芝居でこれを使いこなす難しさも知っているつもりですが、この作品は成功していたと思います。大好きな吉田鋼太郎さんが今回も素敵でした。どっちつかずな性格の人物は、上手な役者さんがやるに限りますね。

 激情や殺人者やコリオレイナスとか観ていて、登場人物を嫌悪したりあきれたり浅はかだと感じて嫌な気持ちになるのって、自分自身が考えて行動することを最近してないような気がすることに気付かされるからかもしれないなぁ。

中井の気になる!!◆『TOMMY』(日生劇場 ~3月31日)◆『カスパー』(新宿・space107 3月22~31日) ◆『コンフィダント・絆』(渋谷・PARCO劇場 4月7日~5月6日) ◆『AOI/KOMACHI』(三軒茶屋・世田谷パブリックシアター 4月11~15日) ◆猫のホテル『苦労人』(三軒茶屋・シアタートラム 4月18~29日) ◆モダンスイマーズ『回転する夜』(新宿・THEATER/TOPS 4月18~30日) ◆東京セレソンDX『あいあい傘』(新宿御苑前・シアターサンモール 4月4~22日)


2007年01月16日

 

今年1年を予感させる!? 美少年とヅカの年末年始

 1月も半ばになってしまいましたが、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 昨年末から年が明けて、またも芝居漬けの日々を過ごしました。

 12月24日はこのコラムでも再三ご紹介してきました宝塚雪組の朝海ひかるさんのさよなら公演に行ってまいりました。お芝居、ショーともに自分の魅力を引き出してくれるオリジナル作品で卒業できるのは宝塚の生徒として理想の形だと思うので、寂しいですが、すがすがしい気分です。そして翌25日はミュージカル『テニスの王子様』の日本青年館に行ってきました。ちなみに夫の実家が関西なものですから年が明けて帰省したときに、3、4日と新大阪でも観てしまいました。6日には宝塚大劇場で月組の『パリの空よりも高く/ファンシーダンス』と星組の『Hallelujah(ハレルヤ) GO! GO!』を観劇。帰省してるんだかなんだか…。

 東京に戻りまして7日には新宿コマ劇場で「エリザベート・ガラコンサート」。今年3月28日から梅田芸術劇場で『エリザベート』のウィーンオリジナルバージョンの上演があるので楽しみです。

 まさに美少年とヅカの年末年始でした。

 話は戻りますが、大晦日は新感線のカウンドダウン公演に行ってきました。本編が終わった後、年越し蕎麦と年越しそうめんが振る舞われました。高田聖子さんが八代亜紀さんの『舟歌』を歌いながらせりあがってきたり、阿部サダヲさんが“ひとりグループ魂”状態で歌ったり、市川染五郎さんなんて獅子舞まで披露してくれたり、楽しい時間を過ごしてきました。

 本編の『朧の森に棲む鬼』のほうは、新感線3回目の出演となる市川染五郎さんがもの凄い悪人を溢れんばかりの色気を持って演じられていました。新しい染五郎さんの魅力を引き出した中島かずきさんの筆、いのうえひでのりさんの演出も、これからの新感線のあり方を感じさせました。

 でも「1ステージ1萌え」をテーマにいわせていただきますと、今回の萌えツボは、染五郎さん演じるライを信じて信じてついていくのに裏切られる弟分の阿部さんの姿とそのせつなさに萌えました。

 今回の作品は滅びの美学がうまく描かれていたように思います。配役のバランスも良かった。古田新太さん、高田さん、秋山菜津子さんはじめそうそうたるメンバーが揃っているんだけど主役の染五郎さんをはじめ食い合うことなく並び立っていました。

 この原稿を書いた後にも宝塚宙組、星組特別公演、志の輔落語、劇団鹿殺し、『哀しい予感』『ROCK MUSICAL BLEACH』『エア・ギア』見にいってきます。これだけ見たいものが1月からあるなんて幸せ。そして今週は高橋克実さんと八島智人さんの『禿禿祭』たっぷり堪能してまいります。

 今年もいい舞台に出会える予感がいっぱいです。

中井の気になる!!◆『スウィーニー・トッド』(日比谷・日生劇場 ~1月29日) ◆『テニスの王子様 Absolute King 立海feat.六角~First Service』(池袋・サンシャイン劇場 1月18~21日) ◆『ひばり』(渋谷・シアターコクーン 2月7~28日) ◆『フールフォアラブ』(渋谷・パルコ劇場 2月7~25日) ◆『地獄八景:浮世百景』(三軒茶屋・世田谷パブリックシアター 2月9~18日)


2006年12月18日

 

今年は忘れられないクリスマスイヴになりそう

 中井です。今月も見たいもの満載の舞台づけの日々でした。

 楽しみにしていたTPTの『黒蜥蜴』見てきました。麻実れいさん初体験のHEADLINEの編集さんも、麻実さんの佇まいにやられてしまったそうです。私は麻実さんはもちろんですが、時間がたつにつれ明智小五郎役の千葉哲也さんにも引き込まれておりました。今度、千葉さんの出演される舞台、チェックしてみようと思います。

 まずは野田地図(NODA MAP)の『ロープ』。主演女優は宮沢りえさん。この舞台においては、この役はりえさん以外には考えられないというぐらいハマっておりました。渋谷のシアターコクーンで来年1月31日までやってます。来月ももう一度見にいくのですが、どう変わっているのか楽しみです。

 今月はよそのお芝居で見ていて気になっていた役者さんの所属劇団の公演を見ることが多かったかな。

 前回の野田地図の『罪と罰』に客演していた小松和重さんが座長を務めるサモアリナンズの『昔の侍』。通称“サモアリ”と呼ばれるこの劇団。名前からして緩そうなんですが…。久しぶりの本公演とのことで楽しみにしていました。“脱力の気持ちよさ”とでも申しましょうか。いい意味でのダラダラ感…こういうのもありなのだな~と妙に納得。

 KERAさん率いるナイロン100℃の『ナイスエイジ』はセットが大掛かりに作ってあって、映画っぽい演出。役者もスタッフもかなり緻密な動きを要求されていたようですが、そう見せないところが素晴らしいと思います。24日まで三軒茶屋の世田谷パブリックシアターで公演中ですのであえて多くは語りませんが、家族という絆のあいまいさと深さについて考えさせられました。役者さんはいろいろなお芝居でお見かけする方が多かったのですが、その中でも、お母さん役の峯村リエさんはやっぱりいいな~。そこはかとなく漂う色気がたまらん!! 大倉孝二さん、松永玲子さんをはじめ、この劇団には本当にいい役者さんがたくさんいるなと思います。ほかでも活躍の場のある人が、それでも劇団にいるのは作・演出、スタッフなどに魅力があるからなのかと思います。改めて「ホームグラウンド」を見るのはいいなと思いました。

 そして今月は“テニミュ”ことミュージカル『テニスの王子様』がなによりオススメです。ふだんたくさんの舞台を見ていて、ドラマチックな展開には慣れているはずの私ですら、使用されている、まさしく奇想天外な台詞や歌詞にいつも驚かされます。コミックよりももっとコミックらしい世界観がそこにはあり、目が離せないのです。こうしてハマっている理由を探すべく、これからもずっと通ってしまうんだろうな~。年内は日本青年館で25日まで。それから全国を回って、1月18~21日まで池袋のサンシャイン劇場でやります。

 そして連載1回目でつい熱弁を振るってしまった、宝塚歌劇雪組の『堕天使の涙/タランテラ』。朝海ひかるさんの退団公演です。この週末までです。私にとっては忘れられないクリスマスイヴになりそうです。

中井の気になる!!◆鹿殺し『僕を愛ちて。』(池袋・シアターグリーンBOX in BOX THEATER 1月11~22日) ◆『禿禿祭(はげちびさい)』(三軒茶屋・世田谷パブリックシアター 1月16~21日) ◆『スウィーニー・トッド』(日比谷・日生劇場 1月5~29日)


2006年11月20日

 

宝塚男役スターの退団――この切なさがたまらないのです

 TOKYO HEADLINEの読者のみなさま、今週から毎月第3週に舞台に関する連載コラムをやらせていただくことになりました中井美穂です。どうぞよろしくお願いします。
「なぜ中井美穂が演劇コラムを!?」という方が多いのでは、と思います。『ZUKA ZUKA行くわよ』というタイトルでひょっとしてと思う方もいるかも知れませんが、私、実は宝塚大好きなんです。94年になりますか、それまで正直なところ全然興味がなく、宝塚好きの友人にそう言ったところ「天海祐希さんを見てから言ってくれ」と言われまして、いざ見に行ったら一発で魅了されました。そんなわけで宝塚にハマった私は今では東京MXテレビで毎週月曜日22時から「TAKARAZUKA~Cafe break~」という番組もやらせてもらったりしています。良ければそちらも見てください。

 小劇場系の舞台をよく見始めたのは3年くらい前からでしょうか。ある雑誌で舞台関係の対談ページをやったときに知り合ったライターさんに誘われたのがきっかけでした。最近では酒と芝居の日々です。ウソです。お酒はそんなに飲みません。そんな流れでヘッドラインの編集さんとご一緒することがあって、この連載を始めることになりました。来月から私が見てきた面白かった舞台、これから見に行こうと思っている気になる舞台、その他舞台にまつわるいろんなお話をご紹介できればと思っています。

 といいつつ今月は宝塚。8日には大阪まで日帰りで雪組の『堕天使の涙』『タランテラ!』を見てきました。この舞台は男役トップの朝海ひかるさんの退団公演となります。虚構の世界をいかに美しく、本当に存在しているかのごとく見せられるかにかかっているのが宝塚。今回の朝海さんはその点、まさに堕天使にしか見えません。男役でありながら中性的な存在感を醸し出していた朝海さん、こういうタイプのトップはもう出てこないんじゃないかと思います。惜しいです。11月17日から12月24日まで東京宝塚劇場でもやりますのでぜひ!! そして9日には月組の『オクラホマ!』を日生劇場で、10日には東京宝塚劇場で湖月わたるさんの退団公演となる星組の『愛するには短すぎる』――怒涛の宝塚3連発です。来年1月には宙組の貴城けいさんも退団と、東京宝塚劇場はサヨナラ公演3連発。男役スターが宝塚をやめるというのは、「ひとつの人生が終わる」ということに等しく、その切なさがたまらないわけです。

 小劇場系では『ハイバイ』という劇団の公演を見てきました。ここはシュールでナンセンスでありながら戯曲としては破綻がなく、ひとつの世界としてきちんと成立。「訳は分かる、けどなんか変」という感覚が、そうそうほかでは見られない感じがします。次も楽しみな劇団です。

 このコラムが今まで舞台に興味がなかった人にとって劇場への入り口になってくれればいいなと思ってます。

 ではまた来月お会いしましょう。

中井の気になる!!◆ONEOR8『電光石火』(新宿・THEATER/TOPS 10月24~31日) ◆はえぎわ『スカタン、或いは』(下北沢・ザ・スズナリ 10月25~29日) ◆笑福亭鶴瓶落語会(表参道・青山円形劇場 11月11~12日)


Profile

中井美穂 (なかい・みほ)
95年、フジテレビ退社後フリーアナウンサーに。現在『旅の香り』(テレビ朝日系・日曜18:56~)、『タカラヅカ cafe break』(MXテレビ・月曜22:00~)に出演。2007年1月スタート『世界陸上~We Love アスリート~』(TBS・金曜25:25~)でのMC、また8月25日~9月2日に開催される『世界陸上大阪大会』でもメインキャスター務める。『STORY』(光文社)連載コラムも好評!