vol.32
2006年も“背水の陣”椅子に座って



 あけましておめでとう! 今俺は、ニューアルバムのレコーディング に向けてスタジオにこもっている。20周年後の充電期間も終わっていよいよ本格的に活動再開。今年も何か実験的なことにも挑みつつ、吉川のエンターテインメントを追い続けるよ。男も40ともなれば妙に落ち着いちゃって悟る人も多いが、それってある意味、うまく逃げられる方法を踏まえることのような気もして、どうも自分には不向きな気がしてね。確かに戦うならば退路の確保、つまりは保険を持つ事は必須項目だろうが、俺は今年も相変わらず大いに恥をかき、無骨なトライを重ねていきたい。人が見たらバカバカしく思えるような『糊白』的な部分にこそ実は面白み、旨みがあるんじゃないかって思っていたりするのだな。

 例えて言うなれば“椅子”だ。人間みなひとりひとりが椅子に座ってる。イビツな椅子もあれば、固い椅子もあって、一般的には年とともに居心地のいい椅子にどっぷりと座りたがるものだが、俺はそういう椅子が嫌いだ。虚勢を張ってるようでカッコ悪いって思うのは天邪鬼な俺だけか? どうしてもそういうのが楽しいって思えない性質なんで、王になり覇を称えても馬に乗って挑み続けていたチンギス・ハーンみたいに、俺が座るとすれば、川のヘリに置いてある“背水の陣”椅子かな(笑)。ふらふらしてて、ちょっとでも偉そうにそっくり返れば川にドボン。座るなら、せめてそんな危険な椅子があるといいなと思う。車だって豪華な運転手付きの車なんて、世の中に対する威嚇に見えて無粋に感じるね(笑)。ロールス・ロイスに乗るなら、ターボかなんかつけてすごい飛ばしてみたり、自分で運転手の帽子かぶって手袋して自分で扉も開けて自分で降りちゃうとか(笑)。

 もちろん年を取ることは真摯に受け止めるよ。老いることには誰だって恐怖があり、反発心がある。季節で言えば「青春」という言葉が表す通り、若さは春、夏が盛りで秋には枯れて冬は寂しい……。それは確かにそうなんだけど、秋は「実りの秋」でもあるわけだ。体力は衰えようが、知恵は新たに身につくし、総体的な能力はむしろ上がるというもの。そこをどうとらえるかってところが大事なんだろうな、と。

 年を取ることを受け入れつつ、それでもバカなことはやめずに挑み続けるためには、自分を飽きさせないことが肝心だね、モチベーションの維持ね。例えば、昨年末に出した恋愛小説だってそうだよ。ファンの皆さん(特に男性諸君)の中には、“恋愛小説なんてなにやってんだよ、コイツ”って思った人も少なくはないと思うが、あれは俺の気持ちのあり方が移行したわけではなく、むしろ、今までと同じように戦っていくために、似合わないながらも、愛とか優しさについてまともに向き合って考えることが、少しでも自分の底を深くするために必要なことだと思ったんだよ。でもまあ、単純に「吉川は相変わらずバカなことやってんなぁ」って見えてればいいのさ。「いつまで経っても落ち着かないねぇ、いつまでやってんのかねぇ」なんて、いつまでも言われ続けることが大切だと考えている。

  
 <<BACK