ヨーロッパの旅では他にもいろんなハプニングがあったよ。プラハで泊まった“難民キャンプ”みたいな宿泊所では、ドイツから来てた女の子の5人組がいたんだけど、俺が水みたいなシャワーにひとりで入ってたら、その子たちが裸でどわーっと入ってきた。男の時間だって聞いたから入ったのに、もともとドイツ人って、サウナとか男女一緒だったりするんだって。俺がおたおたしてると、全裸同士なのに普通の顔で「あなたどこから来たの?」なんて聞いてくるわけ(笑)。それをハービーちゃん(カメラマンのハービー山口さん)に話したら「呼んでくださいよ!」って。でも、もうひとり裸で入ってたらおかしいでしょ(笑)。
しかし思うに、旅っていうのは「目的地に行って何かするもの」という風潮があるけど、行って帰ってくるまでが旅であって、飛行機が普通に使われて便利になった分、旅の醍醐味は失われてきたよね。俺は昔から、出かける時は最初の目的地以外は未定な状態で出かけてた。乗る電車を間違えて逆方向に行っちゃったこともあるけど、それくらいの余裕は欲しいなと思うよ。
ロンドンに行った時、ミニクーパーを借りて1週間くらい回ったこともあったよ。その時もリバプールでカツアゲにあい、ストーンヘンジでは警察沙汰! あのビートルズ発祥の地のリバプールでカツアゲっていうのも可笑しいけど、なかなかガラの悪い街なんだよ。ストーンヘンジでは、夜中に知り合いと一緒に遺跡に入り込んで酒飲んでたら、警察が来ちゃった。どうやら入っちゃいけない場所だっらしく、「なにやってんだっ! 立ち入り禁止だ!」って。でもねぇ、そこで風の音を聞いてると、すごく気持ちいいの。音が交わるというか、風が岩を抜ける音が、まるで音階のように聞こえる。それがホントに気持ちよくて…。警察の人には、観光で来たこと、知らなかったことを知り合いが説明してくれて、「何時間か酒を抜いて帰れよ」ってことで無罪放免。まあ、パリに行ったらエッフェル塔を見ておくことも大切かなと思うけど、やっぱり路地裏的な場所にどうしてもひかれるね。もちろん、地元の人に聞いたりして、危険なところには行かないくらいの良識は必要だけど、予測から外れた経験の方が、感動もあるし思い出にも残る。そういうことって、普段の生活には何の役にも立たないように見えて、いつか必ず役に立つと俺は思ってるんだ。
自分の会社を作ってからのここ7年くらいは旅らしい旅に行けてない。でも、出られる状況にないから出てないだけで、人生としてはずっと旅してるような人生が好き。ひとつの土地に根を生やして、風を避ける城壁を作って、深く座れる椅子を持つ……なんてより、昔風に言えば、義侠心に溢れた友情にも篤い馬が1頭欲しい、みたいなね。「俺とおまえで一緒にどこまでも行こうぜ!」みたいな。そういうことに憧れるね。まあ、男はみんなそうか。
今、行きたいとしたら中国。それも古代の中国を見る旅がしたいから、それ始めたらなかなか帰ってこれなくなる。現状として今は難しいから、それもひとつの夢ってことで。